「サガ、強がるのは止せ。二・三時間でも睡眠を取らなければ、本当に過労死するぞ。」
「過労死しかねないのはお前だ、アイオロス。今回の任務はかなりハードな内容だと聞いていたぞ。怪我こそないようだが、相当な疲労が溜まっているのではないのか。」


「だったら、二人共に休むが良い。」
「「っ?!」」


――バターンッ!!


変わらず不毛な譲り合いを続けて、ちっとも休もうとしない二人の会話の合間に、派手な音を立てて執務室の扉が開いた。
その音と振動に、グッスリと眠っていたアシュも寝惚け眼(マナコ)のままモソモソと顔を上げる。


「シオン様?! まだ暫くは五老峰で老師と共に過ごすと聞いておりましたが、お帰りになられたのですか?!」
「非常事態だと連絡を受けてな。若い者達が必死になって働いているというのに、一人だけのんびりしているのも悪いであろう。急ぎ戻ってきたのだが、どうやらそれで正解だったようではないか。」
「は、はぁ……。」


着慣れた法衣ではなく、戻ってきた時の普段着のまま執務室を横切って歩くシオンは、そのような姿でもやはり教皇。
疲れ果てたアイオロスとサガ、そして、半分眠りの世界にいるアシュの瞳には、シオンの威厳ある立ち姿が輝いて見えている。


「感じないか? 丁度、アイオリアとアルデバランも任務から戻ってきたようだ。時期に他の者達も戻ってくるであろう。後は私とアヤツ等に任せて、お前達はゆっくりと休め。良いな。」
「はっ。ありがとうございます、シオン様。」
「お心遣い、痛み入ります。」
「良い良い。倒れる前に戻って、早く休め。」


シオンが戻ってきてくれたお陰で、やっと肩の荷が降りたのだろう。
アイオロスもサガも二人同時にホッと息を吐くと、彼の気が変わらないうちにと、そそくさと執務室からの退散を決め込む。
アイオロスは部屋の隅にオブジェ形態で置きっ放しになっていた射手座の聖衣をパンドラ箱に収めて背負い、疲れでグッタリとしたアシュを腕に抱くと、サガの後を追って、足早に執務室を後にした。
腕の中のアシュは、起きる気力もないのか、アイオロスの胸に小さな頭を預け、再びスースーと寝息を立て始めていた。





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