「で、それと? 他にも、まだあンだろ?」
「同じホテルの部屋を押さえてあるわ。でも、それは貴方が必要としないなら、キャンセルしても良いの。」
「必要に決まってンだろ。」


そう言って、ドカリと座り込むと、手元に引き寄せたガラスの器を持ち上げて、ヨーグルトとシリアルをガツガツと口に運ぶ彼。
最後の一口まで休みなく口中へと流し込み、そして、ペロリと唇を舐め取る仕草。
ゆっくりとコチラへ向けてくる視線。
わざとらしい、なのに、頬が熱く染まってしまう。
ただ赤いだけの舌の先端が、あんなにもセクシーに見えるのは、一体、どうしてなのだろう。


「明日は休みだからな。ノンビリさせてもらうさ。あぁ、勿論、夜は体力の続く限り、だがな。」
「それって誰の体力?」
「俺の、って言いてぇトコロだが、それじゃオマエが死んじまう。アリアの体力って事にしといてやるよ。」


それが本気の言葉とは、とても思えないのだけれど。
そうと言えば、間違いなく不機嫌になると分かっているから、敢えて何も言わずにコーヒーを差し出した。
ふわり、立ち上った香りに、独特の甘いフェイスがニヤリと崩れる。
また、良からぬ事でも考えているのね。


「何ですか、その笑みは?」
「そりゃ、今夜、どンな楽しい事があるかって考えてりゃ、自然と顔も崩れるだろが。」
「……楽しい事?」


正直、聞きたくはないのに、ついつい聞き返してしまう自分に腹が立った。
こういう表情を見せる時、彼が何を考えているかなんて、想像に難くないのに。
どうせエッチな事をアレコレと思い浮かべているのでしょう?
予想に違わず、彼の口から流れ出る言葉に、溜息が漏れる。


「まずはシャワーを浴びながら、だよな。立ったまま、たっぷりと可愛がってやるよ。その後はベッドでジックリと……。いや、ソファーでってのも悪くねぇか。身動きも儘ならねぇ窮屈さは、返って燃え上がるだろ。で、それからベッドだ。グッタリしたオマエを見下ろして、最後の瞬間までジワジワと攻め立てるのは、最高だろうぜ。」
「……ホント、バカ。」
「あ? 照れてンのか?」
「照れてない、呆れているんです。」


あと半日後には、実際にそうなっているのだろうと分かっているから、余計に恥ずかしいのだ。
有言実行とばかりに、情熱的なイタリア人の恋人を演じてみせるのだろう、この人は。
今夜、あのホテルの一室で。


「本当に、そんな誕生日で良いの? もっと他に何か……。」
「イイんだよ、それで。ホテルでの優雅な朝を、アリアを腕に抱いてノンビリまったり過ごす。最高の贅沢じゃねぇか。ココに居りゃ、誕生日だろうと何だろうと、やれ執務だ、任務だと、お構いなしに駆り出されるンだからな。」
「その貴重な時間を、私が潰しても?」
「貴重な時間だからこそ、オマエ以外に潰されちゃ困るンだよ、アリア。」


こくり、彼がコーヒーを飲み下し、喉がゆっくりと隆起する。
その些細で日常的でありながら、とても男性的な動きに見惚れて、私はホウッと一つ、甘い息を吐いた。



貴方のためなら、無駄なものなど何一つない



(そう言えば、いつものケーキ屋さんにね。凄く美味しそうなマンゴームースのケーキと、凄く美味しそうなマスカルポーネのティラミスがあったのだけど、どちらを買えば良い?)
(ンじゃ、両方。)
(ええっ?! そんなに食べられないでしょ?!)
(ケーキなんざいらねぇって。オマエのエッロい身体の方が、数倍、甘くて美味いンだからな。)
(……バカ。)



‐end‐





デス様、お誕生日おめでとうございました!
今年の蟹誕祝いは、何となく朝の日常1コマな感じで妄想が進みまして、書いているうちに着地点が見い出せなくなり、結果、グダグダのまま終わるという微妙なドリ夢になってしまいました^^;
スミマセン、蟹月間中に何とかリベンジしたいです、ますく。

2014.06.24



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