「何ですか、デスマスク様? 教えてください。」


キラキラと期待に煌くグリーンアイズ。
その瞳を見て、俺の中に急に悪戯心が湧き上がる
ニヤリと唇に浮かぶ笑みを隠しもせずに、邪魔な髪の毛を掻き上げ、アイリーンの耳元にそっと囁いた。
それはそれは色っぽく、この上もなくセクシーに。


「俺の下で見せる、オマエの艶かしい喘ぎ顔。」
「っ?! やっ!!」


真っ赤なんてモンじゃねぇ。
沸騰したみたいな顔して焦るアイリーン。
想像以上の反応を見せてくれた事に、俺は込み上げる笑いが止まらなかった。


「クククッ。オマエ、マジにおもしれぇな。」
「デスマスク様っ! からかわないでくださいっ!」
「痛ぇ! 止めろ、オマエ!」


流石のコイツも怒ったのか、可愛く顔を顰めて俺の耳朶を引っ張ってきやがった。
しかも、結構な力が入っているせいで、地味に痛い。


「離せ、オラ!」
「嫌ですー! 悪いのはデス――、ん、んむっ!」


俺が腕を引っ張ってもなお、力を入れて耳朶を引っ張るアイリーン。
こうなりゃ仕方ねぇ。
手を離そうとしねぇ彼女を大人しくさせるため、俺は顎を掴んで無理矢理に口付けた。


舌が絡めば直ぐに、アイリーンの手から力が抜けて、耳から離れる。
その代わりのように、伸ばされた両腕が、柔らかに俺の首に回された。
暫く、そのまま深く絡むキスをたっぷりと楽しむ。
十分過ぎる程にその唇の感触を味わうと、俺はやっとアイリーンをキスから解放してやった。
目を閉じ、うっとりとキスの余韻に浸る表情。
そっと額に一つキスを落として、今度は俺が同じ質問を聞き返していた。


「オマエ、俺の何処が好きなんだ? 前からずっとって言ってたろ?」
「それ、は……。」


さっきから、ずっと気になっていた。
アイリーンが言った、『以前から』という言葉が。
だが、俺にはコイツに好意を持たれるような心当たりもない。
ならば、一体、きっかけは何だ?


ジッと見下ろす視界の中、煌く光を宿した緑の瞳が俺を捉えた。
首に絡んでいた手が離れ、その手が再び俺の髪を優しく撫で始める。


「初めてデスマスク様に会ったのは、もう十三年も前になります。」
「十三年前? つーと丁度、オマエがシュラんトコの従者になった頃か?」
「はい。最初は遠くから拝見しただけでしたが。デスマスク様は自信満々で、ちょっと怖いイメージでした。」


まぁ、そうかもな。
俺の事が『怖い』といって近付かない女官も、未だに何人かいる事だし。


「でも、いつだったか、私がお茶を運んだ時に、躓いて転んで、それで、デスマスク様のお洋服にお茶が掛かってしまった事があって……。」


そういや、そンな事があったような気もしないでもないが。
だが、ハッキリとは思い出せねぇ。


「怒られると思って竦んでいたら、デスマスク様は意外にお優しくて、『気にすンな。失敗は誰にでもある。』と仰ってくださいました。」


俺が、そンな事を言ったってか?
まぁ、やっちまった事をウダウダ言っても仕方ねぇってのが俺の持論だ。
ポロッと言っちまったのかも知れねぇな。


「自分で汚れた服を脱ぎ捨てたかと思うと、勝手にシュラ様の服を身に着けて、『ニヤ』っと私に笑顔を向けられたんです。」
「ほぉ。それで俺の事が好きになったってか?」


だが、俺の言葉に対しては、フルフルと首を振る。
なら、何だってンだ?


「その時に抱いたのは、軽い恋心というか、少女の憧れのようなものだったかと。」
「だが、その『ちょっと』が『本気』に変わったンだろ?」


俺の髪を梳いていた手を止めて、ジッと俺の目を見つめる。
それから、アイリーンはギュッと俺の身体に抱き付き、胸に顔を埋めた。





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