確かに、私は曖昧な態度を取り続けていると自分でも思う。
直接、告白された訳ではないけれど、アイオリア様の気持ちを知っているのは確かだし。
きっと、今の私は傍から見て、知ってて気を持たせているように見えるのだろう。
期待を持たせるだけ持たせておいて、実際、いざその時に断られたとしたら、その分、ショックは大きいだろうから、キッパリとした態度を取るなら、早い方が良い。
シュラ様は、そういう意味で仰っているのだと思う。


でも、それなら、私だって……。


私だって、シュラ様の態度に一喜一憂し、分に合わない期待を持ってしまう事もしばしばだ。
シュラ様は、私の事をどうこう言えないのではないの?
そんな風にも思ったけど、直ぐに気が付く。
アイオリア様は私の気持ちを知らないけれど、私はシュラ様の気持ちを知っている。
シュラ様は心に想う人がいると、私はちゃんと知っているから、覚悟は出来ている。
既に諦めは付いていると言うか、時々、心を揺さ振られる事も多々だけど、将来に期待などしていない。


そうだわ。
私は自分の意思をハッキリさせていないから、このままいけば、結果としてアイオリア様の気持ちを弄ぶ事になりかねない。
だからこそのシュラ様の言葉。


でも、だからと言って、どうすれば良いの?
私には好きな人がいるので諦めてください、とでも言えと?
まだ告白もされていないのに、こちらからそのような事、どう考えても言えない。
大体、想いが届かないと知っていて「シュラ様が好きなんです。」と宣言したって、惨めなだけじゃないの?


結局、シュラ様の投げ掛けた言葉によって頭の中がグルグルしたまま、その当人を目の前にして朝食を摂った。
シュラ様はチラチラと私の顔を眺めているような気配はあったが、終始、俯いていた私に声を掛ける事もなかった。
だが、プライベートルームの入口まで彼を送り出した時、流石に浮かない表情の私が気になったのだろう。
素早く身を屈めたかと思うと、頬に柔らかで熱い感触が落ちてくる。
驚きで顔を上げた私に、いつものフッと軽い笑みを浮かたシュラ様の姿が映った。


「油断しているとキスをするぞ。もう忘れたのか?」
「っ?!」
「行って来る。」
「あ……、は、はい。いってらっしゃいませ。」


いつもとは違う、今朝は目元に色気が漂っていない。
それよりも、何処かおかしそうに悪戯っぽく瞳が弧を描いている。
と言っても、他の人から見れば相変わらずの無表情なのだろうけれど。
それでも、暗く沈んでいる私の気分を変えようとしての行動なのだとしたら、やはりシュラ様は優しい人だ。
まぁ、その原因である言葉を投げ掛けたのも、この人自身であるのだけれども……。





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