「すまない、彩香。」
「どうして私に謝るの?」


謝るのなら、あの子に、だ。
変に希望を持たせて期待させてしまった事を、きっぱりとした態度を取らなかった事を、詫びる相手は私じゃなく、あの子なのに。
私に謝ったって、意味はないのに。


「俺は彩香を不安にさせた。だから、お前に謝らなきゃいけない。」
「っ?!」


突然、その腕に強く引かれて、ギュッと抱き締められた。
押し当てられた胸板から、トクントクンとシュラの心音が聞こえる。
彼をダイレクトに感じる音。
その力強いリズムにホッと安心する音。


そうだ、私は不安だったんだ。
自分でも気が付いていなかったけれど。
真剣にシュラを見つめるあの子の眼差しに、シュラの心が動いてしまうかもしれないと、不安で不安で堪らなくなっていたんだ。


だから――。


だからこそ、堪え切れなかった。
あの子に優しく微笑んで見せたシュラの、その行為に。
シュラの心を信じ切って、彼は私から離れないだなんて、当たり前のように過信していた自分がバカみたいに思えた。
だから、惨めに思えた。
だから、悲しく感じた。


「今夜は市街のホテルで食事を予約してたんだが……。キャンセルしよう。」
「ゴメン、ね、シュラ。私……。」
「良いさ。今夜は少しでも長く彩香を抱いていたい。不安なんてもの、二度と感じなくなるくらい、彩香と激しく愛し合いたい。」
「シュラ……。」


耳の奥に響くシュラの鼓動が、ホンの僅かに早くなる。
衣服越しの身体も、熱く燃え上がっているように感じるのは、私の錯覚?
でも、抱き締める腕の力は折れそうな程に強くなり、私は息をするのも辛くて。
こんなにも私を想ってくれているシュラを、僅かでも疑って不安になってしまった、そんな自分が恥ずかしく思えた。


「うん、お願い……。シュラの思うように、好きなだけ愛して。何度でも、朝までだって……。」
「本当に良いのか、彩香?」


コクンと小さく頷けば、熱いキスが雨のように額に降ってくる。
そして、その唇が私の唇に辿り着いた頃、軽く啄ばむようなキスは、ジックリと押し付ける深いものに変わっていた。


「愛してるから。彩香だけを、愛してるから。」
「ん……。私、も……。」


ココが外だというのも忘れて、深く絡み合う口付けに没頭する。
どのくらいの時間が経ったのか、やっと二つの唇が離れた頃には、シュラも私も身体の内側で熱く燃え上がる情熱を抑え切れなくなっていて。
力強く抱き上げた彼に自分の全てを預けてしまえば、既に心だけ先走って向かってしまった磨羯宮のベッドルームへと、彼の足も軽やかに走り出した。



気の済むまで愛して、気が狂っても構わないから



ただひたすらにシュラを感じたかった。
どんなに激しい愛でも、シュラを全部、受け止めたかった。
この愛は揺るがないものだと、全身で伝えて欲しかった。


シュラが与えてくれる熱が、私にとって絶対に揺るがない温度になるまで、彼に溺れてしまいたかった。



‐end‐





山羊誕記念夢にも係わらず、苦い話でゴメンなさい;
最近、甘いものばかり書いていたせいか、反動で切なくて痛いものが書きたくて堪らなくなりました。
だからと言って、最愛のシュラのお誕生日にぶつけるなって話ですよね、スミマセン(滝汗)

激しく祝ってない感満載の夢でしたが、これでもシュラ最愛なんです!
本当なんです!

何はともあれ、Happy Birthday! Shura!
ずっとずっと大好きです!!

2010.01.12



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