シュラは私の手の届かない泉の真ん中から、ジッとこちらを眺めていた。
が、不意に視線を逸らすと、再び泳ぎ始めた。
私の呼び掛けは軽く無視だ。


「ちょっと、シュラ! いつまで泳いでるのよー!」
「もう少し……。」
「市街行きたいのに!」
「……諦めろ、彩香。」


私の言葉をサラッと流して、今度は背泳ぎを始める。
気持ち良さそうに目を細めて、泉から上がる気配なんて、これっぽっちもない。
まるで駄々っ子じゃないの。
私の手がそこまで届かない事を知っているから、言う事、聞く気なんて全くないんだわ。


「本当にホント、風邪引くわよ! こんなに冷たいんだから!」
「……大丈夫だ。」
「大丈夫な訳ない! 風邪引いたら、誰が看病すると思っているのよ!」
「そんなに心配ならば、俺をココから引き摺り出せば良いだろう?」


酷いわ、シュラ!
私が、この冷たい泉の中に入れないと分かってる上で、そんな挑発的な視線を向けるなんて!
もう、いっその事、入ってしまおうかしら?
浸かってみれば意外と冷たくないのかもしれないわ。
シュラだって、見た感じ鳥肌一つ立ってないし、実は真ん中の方は温かいのかも……。


――ザバーンッ!


なんて馬鹿な考えを巡らせていたら、いつの間にか岸に近付いていたシュラが、盛大な水音を立てて私の目の前に上がってきた。
ハッとして見上げれば、堂々と晒したシュラの裸身が視界いっぱいに映る。
逞しく隆起した筋肉を伝って流れ落ちる水滴に日光がキラキラと反射し、無駄のない身体を強調するように輝いていた。


ダメ、見慣れていても目が眩むわ。
刺激が強過ぎるわよ、こんなの!


「しゅ、シュラッ! も、恥ずかしいから早く服着てよ!」
「やはり身体が冷えた。」
「は? だから言わんこっちゃない……。って、ちょっとちょっと! 何してるの、シュラッ?!」


流石の私も、纏うもの一つないシュラの身体を直視してはいられなくて、頬を染めて俯いた。
が、何故か彼が服を身に着ける気配は感じられず、その代わり、私の両肩をグイッと押す感触が。


「悪いが、彩香。今直ぐ暖めてくれ。」
「や! ちょっと、野外だから、ココ! 待って、せめて磨羯宮まで……。」
「寒い、待てん。」
「や、ホント! ダメだってば……、やっ! あ!」


暴走を始めたシュラにとっては、ココが何処かなんて、もはや関係ない様子。
頑丈な身体に押さえ込まれ、巧みな手に服を剥ぎ取られ、外気に触れた肌が寒さにブルッと震えた、その刹那。
直ぐに与えられ始めた巧みな刺激によって、別の震えが私の心と身体を襲った。



運命の糸を手繰れば、自分勝手な愛に流され



「は……、ん。シュラぁ……。」
「……何だ、彩香?」
「誰か……、来たら、困る、か、らぁ……。あ、あっ!」
「安心しろ、俺の小宇宙で防御壁を作ってある。黄金聖闘士以外のヤツには破れん。」
「や、何よ、それっ! あっ! あぁっ!」


どこまでも自己中な彼に流され抵抗出来ないのも、運命の赤い糸だから?
いつもこうなる事を何となく分かっていて、それでも彼へと繋がる糸を手繰り、追い駆けてしまう自分。
後はただ、戻った後に風邪を引いていない事を祈る、ただそればかりだ。



‐end‐





以前、仲良しサイト「蕾のままで」の管理人・亜玖李さまが描いて下さったイラスト、全裸の山羊さまが泉で水浴びする『泉の山羊絵』。
それを見て興奮した脳内が、勝手に妄想で暴走した挙句、こげな天然ハレンチ山羊さまが生まれ出たとか、何とか…(滝汗)

今回の山羊さんは、典型的B型な自己中マイペース山羊さんに仕上げてみました。
イメージ壊れたと思われた方がいらっしゃいましたら申し訳ないです。

何はともあれ、シュラ!
お誕生日おめでとう!
一生、愛してるよ!!

2009.01.12



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