シュラは泉の真ん中にいた。
つまりは服を脱ぎ捨てて、泉の水の中へ浸かっていたのだ。
一月なのに、この寒い中を平然と!


「シュラッ! 何してるのよっ?!」
「……彩香か? どうした?」
「どうした? じゃないわ! こっちこそ聞きたいわよ。この真冬の寒い中、何を考えているの?!」


張り上げた私の声を聞いて、泉の真ん中にいたシュラがゆっくりと振り返った。
逞しい筋肉に覆われた肉体の臍の辺りまで水に浸かり、チラリとこちらを見る仕草の、その色っぽさといったら。
その視線を受けた瞬間に、倒れてしまいそうな気分になる。
いつも見慣れている彼の身体なのに、こうも陽の高い時間、しかも野外だからだろうか。
色気三割り増しどころじゃない。
本人も気付いていない無自覚の色気が凄まじいんですけど。


「何となく、泳ぎたくなった。」
「だからって、こんな所で? プールでも行けば良いじゃないの。風邪引くわよ?」
「……大丈夫だ。」
「その、根拠のない自信はどこから来るワケ? 見てる私の方が寒くなるわ。」


呆れ返って眺めている中、シュラは肩まで水に浸かり、スィーと泳ぎ出す。
流石に頭まで潜ったりはしないが、それでも水温はかなり低いだろうし、冷たくないのかしら?
シュラは顔色一つ変えずに泳いでいる。
もしかして、この泉の水って温かいの? なんて思い、手を浸してみたら、吃驚するくらいに冷たくて悲鳴を上げそうになった。
こんな中で泳いでるなんて、シュラ、おかしいよ!


「彩香もどうだ? 一緒に泳がないか?」
「今、見てるだけで寒くなるって言ったの、聞こえてなかった? 絶対に、い・や・よ!」


相変わらず、話が噛み合わないわ。
シュラって真面目な顔して頷くから、人の話をちゃんと聞いているように見えるけど、実際は全くと言って良い程、聞いてないのよね。
まぁ、それで不都合がある訳じゃないから良いんだけど。
たまに話が噛み合わなくて、軽く怒っているデスマスクさんと、それを全く聞いてないシュラの姿を見るのも楽しいし。


「ねぇ、シュラー! 私、市街に行きたかったんだけど。早く出てきてくれないかな? もう満足したでしょ?」
「……。」
「シュラー! はーやーくー!」


私の呼び掛けに、泳ぐのを止めて立ち上がるシュラ。
泉の中に隠れていた裸身が再び露わになって、私はホンの少し赤面する。
こんなところ、他の女の子に見られたら大変だわ。
この破壊力満点の色気と見事な体躯で、免疫のない子なら卒倒しかねない。
まぁ、こんなところまでフラッ来るような女の子は、幾ら聖域と言えど、いないだろうけど……。





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