若干頼りなさそうな教師とホールの係りの人に、具合の悪い女の子を任せて、あたしたちはロビーに出た。

 もう2部が始まってる。

 途中から入っていくのは気まずい。

「ここに突っ立っててもしょうがないから、座ってようよ」

 ギャルの後に続いて隅っこの四角いソファーに座った。

「ところでさ、あんた、あの女の子と友達なわけ?」

 気になってたこと聞いてみた。

「違うけど」

「なんで具合悪そうってわかったの?」

「そりゃ前に座ってるんだから、なんか様子が変だなあくらいはわかるでしょ」

 肩をすくめるギャル。それはそうかも。

「同じ学校の奴らに任せりゃよかったのに」

「たぶんあの子、友達いないんだと思う。ずっと一人でおとなしく座ってたし」

「でも、具合悪いから先生呼んで、くらいは言えるでしょ、口があるんだから」

「言えない子だっているんだよ。あの子だって、アタシが声かけたら泣き出しちゃったし」

 それって、あんたの見た目が怖かったからじゃないの。とか思ったけど、冗談言うような時じゃないか。

「すごく、不安だったんだろうね。もっと早く声かけてあげればよかったな」

 ため息ついて、申し訳なさそうな顔。

「あんたがそんな顔することないでしょ。いいことしたんだから」

「まあね。そういえば、さっきは急いでたとはいえ、割り込みみたいになって悪かったね」

「別にいいよ、そんなこと」

 落ち着いて考えりゃ、なんか変だなって気付けたんだろうけど、苛ついてたからすぐにはわからなかった。

「アタシ、ダンスやってるんだわ」

 ギャルが言った。なによ、急に。

「そう」

「たまに発表会じゃないけど、ステージに立つこともあってね。自分も楽しむけど、見てくれてる人にも楽しんでもらえるよう、やるからには全力でやる、そう決めてるんだ」

「いい心がけじゃん」

 で、それがどうしたの? て話だけど。

「だから、始まる前から退屈そうにしてる奴見ると、腹立つんだ。今演奏してるあの楽団の人たちも、今日のためにすごい練習して頑張ったんだろうとか、お客さんに楽しんでもらおうって気合いいれてたんだろうなって思ったら余計に」

 真っ直ぐ見つめられて、ちょっと怯んだ。

 絶対、なんかきっついこと言われる。気がする。

「感じ方は人それぞれだから仕方ないってわかってるんだけど、思ってること、けっこうはっきり言っちゃう性格だから……さっきはキツいこと言ってごめん」

 なにを言われるかと思ったら。

「てか、そこ謝るとこ?」

「え、違う?」

「違うでしょ、あんた悪いことしてないじゃん。悪いのあたしの方だよ。てゆーかあんたすごいよ。あたし、なかなか自分の非を認められないタイプなんだけど、今の話聞いて、ああ、あれはあたしが悪かったなって、一瞬反省したよ」

 ギャルは呆気にとられたような顔して、

「一瞬て……」

「いいじゃん一瞬だって。あんた見た目派手でキツそうなわりに、いい子なんだね」

 実際キツいとこもあるけどさ。人は見た目じゃないってこういうことか。

「初対面の人間にそんなこと言えるあんたもなかなかにキツいと思うよ」とギャル。

「でも、あたしは見た目キツくないから」

「見た目キツい連呼すんな。ムカつく。いやでも、マジでいい勝負だって。大きいから迫力あるし。間違って痴漢とかしたら殴られそうだよ」

「それは殴るよ。つーか身長のことはコンプレックスなんだから言うんじゃねーよ」

「あ、ごめん。気にした?」

「気にした。でもいいよ。こっちも見た目キツいとか言ったし」

「アタシは謝ってもらってないんですけど」

「あーごめんねー?」

「心こもってなくない?」

「こめてないからね」

「何コイツ。ほんとにムカつく」

 くだらない馬鹿みたいなやりとりをぎゃいぎゃいしていたら、運悪く見回りしてたどっかの先生に見つかっちゃった。

 「どこの学校の生徒かしらないけど早く席に戻りなさい」だって。ほっとけよ。

「そーいや、あんた名前なんての? あたしは萬屋 樹里」

 さんざん言いたいこと言い合った後に、今さら自己紹介てどうなのて思うけど、聞き忘れてたんだからしょーがないでしょ。

「白幡 悠莉」

「悠莉ちゃんね」

 ギャル、もとい悠莉ちゃんはふき出した。

「いや、あんたに『ちゃん』付けされても、なんか妙な感じするから呼び捨てでいいよ」

「じゃあ、悠莉?」

「ユウでいいよ」

「あたしは樹里でいいから」

「うん、そのつもり。あんた『樹里ちゃん』なんて可愛らしい感じ似合わないもんね」

「喧嘩売ってんの?」

「売ってないって」

 とか言って、顔がニヤついてんだけど。

 なに笑ってんだよ。



 とまあ、こうして、あたしとユウは友達になった。

 学校終わった後に待ち合わせして、買い物したり、お茶したり。

 お互いさばさばした性格だから変に気つかわなくていいし、一緒にいてラクだし、楽しい。

 そう言ったら、

「たまには気使ってよ」

「あんたは、あたしに気使うことあるの?」

「今のとこない」

「お互い様じゃん」

 こんな感じ。

 今度ユウの中学からの友達と、うちのお姉も呼んで、みんなで会おうって計画たててる。

 名付けて高二女子親睦会。

 きっとユウはあたしとお姉の真逆っぷりにびっくりするだろね。

 もしかしたら、ユウの友達とやらもあの子とは真逆のタイプかもしれないけど。あたしとユウが似てるからさ。

 機会があったら、うちの兄貴たちとバカな弟も紹介したい。

 なんかユウの元カレがうちの豹兄と友達らしいし、ユウの友達カップルと、ユウの彼氏(違うから!って否定してるけど、実際どうなんだか)も呼んで、みんなで遊ぶのもいいかもなんて。

 ほんと、第一印象最悪だったのが不思議なくらい、今のあたしらはいい友達。

 芸術鑑賞会は退屈でしんどかったし、終了後の感想文もめんどくさくてやってらんねーて感じだったけど、これがなかったらユウとは出会えなかったわけだし、結果的には行ってよかったかな。

 来年は間違いなくサボるけどね。



<fin>

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宝小さま(*´`*)
お忙しい中本当にありがとうございました♪

頂いたお知らせメールを確認したとたん、ビックリと歓喜で跳びあがりましたVv

美砂のことも、樹里ちゃんとユウちゃんのお話の件も、覚えていてくださったことが嬉しくて
さらには、こんなに素敵なお話を書いてくださったことも、感謝の気持ちでいっぱいです♪(*´;ω;`*)

本当にありがとうございましたVv

樹里ちゃん♪
これからも、うちのユウちゃんと仲良くしてやってくださいねVv

改めまして、宝小さまVv
この度は本当にありがとうございましたVv

ずっとずっと大切にさせていただきますね(*´∀`人)







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