萬屋へようこそ! ◯月×日、晴れ。 豹兄がはじめて友達を連れてきた。 「どんな人なのかしらね。素敵な方というのは間違いないようだけれど」 いつも以上に慎重に三つ編みを作りながら、お姉はうっとりと呟く。 「嬉しそうだね」 「だって豹雅がはじめてお友達を家につれてくるんですもの。姉としては嬉しいに決まってるじゃない」 あくまで「弟を想う姉として」をアピールしてるけど、ちゃんとわかってんだ。 豹兄の友達が、豹兄や伊吹も惚れ惚れする程のいい男だって聞いて、はしゃいんでるんだって。 それが悪いとは言わないけどさ、 「あんま期待しない方がいいよ」 「あら、私は何も期待なんてしていないわよ?」 「うふふ」なんてわざとらしく笑って。 お姉のことは大好きだけど、面食いなとこはどーもね。 同じ女として時々情けなくなる。 「何事もなく無事に一日終わってくれればいいけど」 「何を気にしているの?」 「別に」 昨日の夜、初兄から聞いた話。 お姉に言っても、真面目に取り合わないだろうから、言わない。 「ただいまー」 玄関から伊吹のバカみたいにでかい声がする。 「来たみたい」 「あら、大変」 お姉はお客様を迎えるため、慌てて部屋を出ていった。 あたしは大きく深呼吸して、腹に力を込めた。 |