※※ 注意 ※※

・公式情報を確認していません。
 ⇒BSR3、及び4は未プレイ
 ⇒CD、アニメ、漫画等は視聴していない
・筆頭と忍びの出会いを勝手に妄想しています。
・成実さんを捏造しています。(2話目以降)
・才蔵を捏造しています。(4話目)

上記を踏まえて、それでもいいよという心の広い方のみ続きから、どうぞ。
苦情は受け付けておりません。

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2014/11/15 ( 0 )





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A I love sixpence,
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「政宗様!!」
「shh」

医者と入れ替わりに足音荒く室に来た小十郎に、口許に指を立てて言う。

「大声は怪我に障るぜ?」

床につく男を見て、小十郎が口を噤んだ。

「……何処から連れて来たのですか」
「um…何処と云うか……偶然?」

犬猫とは違いますぞ、と低く唸る様な声で言う。怪我人に配慮して怒りを抑えているようだ。

「I see」

肩を叩いて落ち着くよう言い聞かせる。
そのまま動かずにいると察したのか諦めたのか、小十郎は一人退室して行った。
他人の怪我で小言をthroughできた。luckyだが此処を離れる訳にもいかなくなった。
仕方無く、床に就く男の側に座ってその顔を眺める。
どこかで見た気がする顔だが、こんな派手な頭を忘れるものかと思うと気の所為か。……地毛?

「いてぇ」

髪の毛を掴んで引っ張ると床の中から短く呻いた。

「起きてるなら礼の一つも言えよ」

俯せに寝ていた男は腕の力だけで起き上がり、心底うんざりした顔で淡々と言った。

「これはどうもありがとうございます何のお返しもできませんで」
「…って、出て行くのかよ!」

浴衣一枚掛けただけの恰好で廊下に出ようと障子に手を掛ける。

「怪我は!」
「お陰さまで楽になりましてどーもぁたっ」

言いながら敷居に躓いて、転んだまま蹲って動かなくなった。

「ほら見ろ」

転んだ男に手を差し出すと音を立てて払い除けられた。

「動けるなら帰るべきだろ」

平静な口振りで言う癖に眼光は鋭い。
目が合うと諂うように笑った。

「……動けるならな」
「な…、ぃ…っ!」

四肢をついた背を踏み付ける。手当てしたばかりの傷を探るように踏みながら、廊下へ向けて声を張り上げた。

「成実!」

指を鳴らして暫く待つ。
そのうち足音がして騒がしい声が近付いてきた。
どんだけ耳いいの、と驚いた足下の声は無視した。こっちが知りたい。

「呼んだか政宗!?」

嬉しそうに顔を出した成実に足下で這いつくばるものを指差す。

「これ見張ってろ」
「おっけー!」
「桶?痛…っ」

成実は、呟いた男の声を無視して髪を鷲掴むとその背に腕を回し力任せに引き上げて、脇に抱え上げた。

「っ!!」

乱暴に抱え上げられた衝撃で傷に響いたか開いたかしたのだろう。泣きそうだったが声を出したくないのか必死に口を押さえていた。

「───っっ!!!」
「……成実…」

何を言えばいいのかと迷っている間に、成実は男を抱えたまま足音荒く部屋に入っていって文字通り床に投げ捨てた。
怪我人を、それと知ってその行為だ。故意でも悪意でもないのが成実の凄い所だ。
後の面倒を成実に任せて部屋を後にした時、銭でも落としたのか軽い金属音が聞こえた。


何かが脳裏を掠めた気がした。


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I love sixpence,
jolly little sixpence,
I love sixpence
better than my life;

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2014/11/15 ( 0 )





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B Hush-a-bye, baby,
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「なるみちゃん?」

廊下から顔を覗かせた男の髪は鮮やかな朱。
探していた人物を見つけて、楽しげに駆け寄る。

「なるみちゃーん」
「しげざねだ!!」

絶望したように叫ぶ成実の横に座り、男はけらけらと笑う。

「見張りが見張ってなくてどうするの」
「もう嫌だ!あれ取ってこれ取ってやっぱいらなーい。って!政宗!」

体よく追い払われているのだと気付け成実。

「なるみちゃんがいないと俺さま肩身狭くって」
「成実だっつーの!!」
「うるせぇ。改名しろ」

背後で大音声に喚く馬鹿に言うと、視界の端に朱が混ざり込んで来た。

「…目の下の隈すごいよ…?」

仰々しい顔で言われなくても解っている。寝てないからだ。
覗き込んでくる顔は、左右を比べるように視線を動かして、くすりと笑う。

「いつも眼帯してるけど。蒸れたりしないの。擦れたりとか」
「しねぇ」
「伊達に独眼竜って言ってねぇんだよ!な!政宗!」
「お前どっか行け」

成実がうるさい。
うるさいのはいつもの事だがechoがかって聞こえて聞き取り難い。耳を押さえていたらいつの間にか朱髪が目の前に迫っていた。

「なんだ。近い」
「噂で聞いた事あんだけど……目ん玉無いって本当?」
「……うるせぇな…」
「やめろよ!怒られるぞ!」

成実が言い、朱髪が成実を見る。
怒鳴るのも疲れるから、筆に墨を染み込ませた。

「怒られるって…」
「昔よくイタズラして泣かして怒られたもん、な!政宗何すんだよぅ!」
「やかましいわ!」

僕は馬鹿ですって顔に書いてやるよ!人の恥晒してんじゃねぇ!
しかし睡魔の所為か上手く筆が走らない。力が入らない所為かも知れない、馬乗りに押さえ付けた成実が自力で逃げた。何か文句を言いながら部屋から走って出て行く。
全く何しに来たんだあの馬鹿は。

「!」
「いったー…何してんの…」

成実の背中を見送って、仕事に戻ろうと踵を返したら躓いた。足許に朱髪が蹲っていたのにも気付かなかった。

「邪魔なんだよ!」
「ひど!」

足で蹴って追い払って、広げたままだった書状の前に座って、何を書いていたのか思い出そうと数瞬迷う。

「…休んだ方が効率がいいんじゃない?」
「……。何もない所で寝られるか」
「坊っちゃんめ!」

悔しい顔をして、台を移動させる。何の真似だと言う前に、肩を引かれて男の脚の上に倒された。
これでどうだ、と得意気な顔が見下ろしてくる。
男相手に膝枕って。

「固い…」
「贅沢言うな」

警戒のかけらもない忍び笑いに、直に伝わる他人の体温。

「子守歌も付けようか?」
「餓鬼か」

無意識なのか頭を撫でるように動く手が。
異様に恥ずかしい。

何より恥ずかしいのは、そのまま本当に寝入ってしまった事だろう。


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Hush-a-bye, baby, on the tree top,
When the wind blows the cradle will rock;
when the bough breaks the cradle will fall,
Down will come baby, cradle, and all.

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2014/11/15 ( 0 )





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C Fa, la, la, la, lal, de;
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日中に休んだからか目が冴えていた。
なんとなく夜の庭に目をやると朱い色が浮かんでいた。朱い髪の男が堂々と一人で歩いている。
歴とした忍びなのだが客人のような扱いな上に成実と戯れてばかりで、味方では無い事実を失念したようだ。
男はあてがった部屋に面した庭に立ち、腕を伸ばす。

「…どうしたの」

腕の中に飛び込んできた黒い影に驚きもせず呆れたような声で言った。いつかの烏だと勘で思った。
朱髪に声を掛けようとする寸前、空から男の声が降って来た。

「佐助」
「…才蔵ォ?」

思わず身を潜ませて目をやれば屋根の上に人影があった。驚いたような声を出して朱髪は見上げる。

「どうして」
「探した」
「ッ、旦那は」

焦ったような声で言う朱髪に、屋根の影は動かない。
余りの静かさに乱波はどうしたのだろうと思ったが、予想はついた。

「心配してる。怪我を?」
「そ、んな」

事じゃなくて、と呟いたあと、朱髪は暫く沈黙してから屋根を見上げた。

「まだ駄目だ」
「佐助?」
「手ぶらで帰るなんて冗談じゃないよ」

影は、わかったと溜め息のように返答した。
陰で一人、佐助と口の中で自問する。やはり知っている様な気がする。

「才蔵」

朱髪に呼ばれて屋根の影は振り向いた様に揺らいだ。

「……任せた」
「承知」

屋根の影が消えてから、烏も夜の空に消えていった。
それらを見送ってから、佐助と呼ばれた男は部屋へ戻ろうと身を翻し、こちらに気付いてわざとらしく目を見開いた。

「あれ?いたの?」
「帰ればいいだろ」

あれだけ自由に動き回っていたのだから、城内の見取り図なり状勢なり諜報し放題だったくせに。

「…だって…」

伏し目がちに目尻を染めて口ごもる。ふわりと朱髪が揺れた。

「ご飯が美味しいんだもん…」
「意地汚ぇな!」
「冗談だよ」

いや美味しいけどね、と笑いながら頭を掻く佐助は裸足だった。
素足でも外に出られると、考えていなかった事に気付いた。

「帰っても疵物で役に立たないなんて格好悪いし」
「…あれだけ帰りたがったくせに?」
「そうだよ?」

ひらりと表情を変えながら、悠々と部屋に戻ろうとする佐助の手を思わず掴んで引き止めた。

「…なに?」

何か苛々する。今までと今とで空気が違う。纏う、気配が。浮かれて。
迎えが来て、心配されて。主人に。

「惜しまれて上機嫌か」

一拍置いて、月明りですら分かる程赤くなった。

「、まさか」

手を振りほどいて逃げた。
背を向けて、逃げる。赤い髪の。旦那、の忍び、の。佐助。

「……あいつか」


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Ther were two birds sat on a stone,
Fa, la, la, la, lal, de;
One flew away, and then there was one,
Fa, la, la, la, lal, de;

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2014/11/15 ( 0 )





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D Pussy cat, pussy cat,
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小十郎に訊ねれば初めから知っていて今更と呆れられた。仕方無い、あの男との勝負が始まってしまえば他は目に入らなくなるのが常だ。思い出した今ですら、そういえば居たな、ぐらいの印象だ。

「政宗!」
「Ah?」

呼ばれて室内に振り返るが誰もいなかった。
人の気配がした気がしたが、何だったのかを確かめる前に庭から顔を出した成実が一人勝手に喚く。

「あいつがいなくなった!」
「あいつ?」
「あの怪我してた奴!」
「見張ってろっつったよな?」
「! いや、だからその」

あたふたと言い訳する成実を放置して、佐助の部屋に行く。襖を開いた瞬間、目の前にのけぞった佐助が立っていた。

「わ。びっくりした…」
「あってめぇーっ」

後からついてきた成実が佐助に詰め寄る。

「何処行ってたんだよ!」
「え?厠?」
「なっ…んだ、そうなのか?」
「納得すんな」

あっさり騙される成実に佐助は笑いながらも肯定するように頷く。目が合うと肩を払う様に叩きながら愛想よく笑った。

「お仕事放っぽり出していいのかな?」

さっきの部屋での気配はこいつかと、思ったら無性にこの扁平顔を歪ませたくなって唇に噛み付いた。

「え。痛っ、ンんっ?」

佐助は腕の力で無理矢理剥がれると、小さく噴き出した。佐助の視線を辿れば、成実が手で眼を覆いながら指の隙間から覗いていた。

「成実、house」
「うぁっッい!」

成実は大声で返事をし、気を付けをしてから、ばたばたと走って逃げていく。成実には最後まで構わず、佐助を部屋に押し戻して組み敷いた。

「ん、っーと、一応病み上がり、なんだけど…」

一瞬顔を顰めたが恐らく押し倒した背中の傷が痛んだだけだろう。押さえ付けた腕は抗いもしない。

「嫌がらないのかよ」
「女の子に比べたら嫌だけど」

別に初めてでもないし、と唇を尖らせる。

「誰かと違って、泣いたって庇ってくれる人もいないしねぇ」

そんな事を言って、不満があるならそんな場所に自ら戻ろうとするものか。
なんだかつまらない上にムカついて気が殺がれた。押さえていた手を放し身を起こす。

「あいつの何がそんなにいいんだ」
「あんたが言うの?」

思わず出た言葉に失態を感じる前に言い返された。
誰とは言及していないと目で訴えると佐助はあからさまに顔を顰める。諦めた様に笑って、しまったなと呟いた。

「内緒にしてね」
「ぁあ?」
「独眼竜のおうちにお泊まりしてきたなんて言ったら、減給されちゃうし?」

本気かどうかは怪しいが、知られたくはないらしい。麾下に傷をつけたと教えてやったらあの男はどうするだろう。そしてこの男は。

「どうすっかなァ…」
「ちょっとー。馘にされたらどうしてくれる」
「オレが飼ってやるよ」
「冗談だろ?」

へらへら笑う佐助に言われて、目が覚めた様な感覚がした。本気で言った訳じゃないが冗談ではなかった。
顔を近付けられて迂闊にも身構えてしまう。その隙に横をすり抜けて、部屋から出て行こうとした佐助の腕を掴もうとしたが触れる前に反射の様に手を引いた。

今捕まえれば帰したくないと縋ったようになる。逃げきられると判っていてそんな醜態を晒せるか。手に入れるなら必ず、残らず全て奪ってやりたい。今は逃がしてでも。

「…次はねェぜ」
「…分かってるじゃん」

次の機会など無いと、笑って佐助は歩いて部屋から出て行った。確かめたりはしないが、もう廊下に姿は無いだろう。
自分でもアイツの何にそんなに拘っているのか解らないまま、もういない部屋の中で二度目の邂逅をどう誑かしてやろうかとそんな事ばかり考えていた。


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Pussy cat, pussy cat,
Wilt thou be mine?
Thou shalt not wash dishes
Nor yet feed the swine,

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2014/11/15 ( 0 )




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