夜の此岸、橋の袂に彼等は立つ。
男は流れる水を渡れない。
霧になり空を飛べても河を渡る事は出来ない。
夜毎橋を降りては人間の魂を集めて橋に帰る彼を眺めていた。死者の命を糧にするでもなく何処かへ持ち去って行く。 鮮やかな髪は見た事の無い色をしていてあれは太陽が沈む時の色だと知人が言った。
どんな血の味がするのだろうと考えては血の通わないただの個体だと知る。きっと彼が此方側に赴く事はない。
自分が人間だったなら迎えに来てくれたのだろうか。
彼は橋を渡りきる事がない。
彼が渡る橋は入口であり出口である。
毎夜対岸の闇の中にいる男を視界に認めては街に向かった。人間の生血を糧にする男は流れる水の先に立つ。疵など残らない筈だのに右目を覆う眼帯は存在を主張していて剥き出しの目が光る。
どんな魂の色なんだろうと考えては塵を残すだけのただの個体だと知る。男が此方側を訪う事は絶対に無い。
自分が人間だったなら。餌にされて終りなのだろうか。
彼等は交わす言葉を知らない。
夜毎の逢瀬の意味も解らない。
息をするただの個体ふたつ
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妖怪(西洋)モノ 政→←佐 伊達吸血鬼と死神佐助
呼吸してんの?と橋は逆側から出れば渡れるよ?は聞きません。
神父元就と悪魔元親に続くなら→