対角線上に据える



月の下、夜霧の中に彼等は立つ。


男に不可能は無い筈だった。
人間の願いを三つ叶える代わりに命を奪う。
生業ではあったが変容のない時間に辟易してもいた。だから同じだけ無変化に倦んでいた知人と賭けをした。知人が云う相手の命を奪えるか否か。
相手は教会に住む悪魔払い師だったが、徹底した利己主義でもあった。悪魔より悪魔らしい冷血漢に面白くなっていた。暫く付き纏って脆さ故の排他精神だと理解し始めた頃、非情の塊のような彼は遂に願いを口にした。
二度と姿を見せるなと。
一つ目だと言われればどうしても叶えてしまう。その願いは叶えたくないと思いはしたが言えはしなかった。
男の能力に不可能は無い。どれだけ足掻こうと、叶えてしまった願いを覆す事は適わない。
男に倦む時間は無くなった。


誰かに、もう一度会いたいなど。思った事もなかったのに。




彼に不可能は無い。
赤の他人の懺悔を聞き死人に祈り悪魔を払う。
興味は無いがそれが生業で日常だった。死神だろうと悪魔だろうと何が現れようと心乱される事は無い。日輪の下は全てが平等に不公平だ。
悪魔を名乗る男は命を奪いに来た癖に、興味が湧いたからと教会に住み着いた。人間よりお人好しの愚かな男だった。暫く付き纏って願いを催促しなくなった頃、男は不愉快な眼をするようになった。
二度と姿を見せるなと。
与えられた権利を主張すれば跡形も無く姿を消した。隻眼の悪魔は拒否を無言で訴えはしたが結局何もしなかった。
彼に不可能は無い筈だった。彼の計算し尽くされた権謀術数は、己の器を過たず把握しているから成り立つ。
彼は倦む事を初めて知った。


居ても居なくても気になるなんて、なんて鬱陶しい存在だ。



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悪魔チカと牧師ナリ。
元親と筆頭、元就と佐助が知人関係。


2014/10/31 ( 0 )







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