躓いて膝をついた政宗に、前を歩いていた佐助は何も言わずに腕を掴んで立たせた。
政宗は礼も言わないし、佐助は肩を貸さない。掴んだ腕を放しはしなかったが手を引く様な親しさは無く、ただ同じ方向へ黙ったまま歩く。
地には骸が散在し、空には鴉が行き交う。立って歩く人間はその場には二人の他におらず、誰の目にも二人の姿は写っていない。
「逐電するか」
引き摺る様に歩を進める政宗の呟きに佐助は吐き捨てる。
「一人でしろ」
返すが腕を放したりはしない。
二人の向かう先は同じだった。人を待たせているという目的も同じだった。ただ相手が違うのだけれど大した差異はもう無い。
きっと二人は同じものになっている。
鴉に視界を遮られ転がる屍体を避けながら辿り着いた場所には二人が睦まじく重なっていた。
「なにそれ」
むっとした顔で呟いた佐助の腕から逃れ、政宗は膝をついて幸村の躯を小十郎の上から降ろした。避けられた幸村を抱えるように佐助も同じように膝をつく。
「忍」
「なに」
呼ばれて、佐助は胸を貫く刃に気付いた。正面から政宗が刀を引き抜く。
「なんで」
声を出すと溢れた血が喉を塞いだ。吐き出す様に咳き込んだ佐助を嗤い、政宗は刀を落とす。
「序でだ、彼岸まで同伴しろ」
「あんたなんかと」
「嬉しいだろ」
言って、政宗は小十郎の上に臥した。
佐助は手の甲で口を拭い、幸村を見る。主を下に敷く訳にはいくまいと、移動しようとするが足は立たない。目を開けたままの政宗を睨んで、ふと佐助は己の躰を確かめる。
「やっべ。どうしよ」
傷を押さえて穴を塞ごうとしたが、徒に手が染まるだけだった。
「お揃いだ」
地に横になり、穏やかに見える主の顔を眺める。
しかも同伴か。ああ、どう言い訳するかな。
見えない再会に佐助はわらって息を吐いた。
世の中最期はわらえるようにできてる-------------
戦国(死ネタ) 政×佐
×片倉→←旦那×
×かすが→←佐助◎
×大将→←軍神○←筆頭◎
×負(死) ○勝 ◎生 という事情の全滅する話
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