記憶いっこ100万円「うろには秘密が隠されてるんだよ」
ウロは何かと嘯けば穴だと答えた。
声の合間に鋏の音がする。指が微かに触れては離れるを繰り返す。
「王様のろばの耳だって、穴に隠したんだから」
それは床屋が穴に向かって喚いただけじゃねぇのか。
喉の奥の笑いを、後ろから両手で頭を押さえて上向かされて遮られる。
「蓋をしたら中は誰にも見えなくなるでしょう」
前髪を摘んで見下ろすからその手を払うと、ふ、と納得したような息を吐いて鋏を置く。
「ほんとうに何もなくても、ないかもしれない、になるわけよ」
くしゃくしゃと掻き回された後、撫で付けられて、耳元を指が這う。
「何が隠されてるんだろうね?」
眼帯の紐に指が掛かる。
知っているくせに。
「幾ら払う?」
「髪切らせといて巻き上げる気かよ」
手鏡を突き付けながら、ぼったくりだ、と唇を尖らせた。
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現代 政×佐
髪の毛を切りに行きたいけど他人に眼の話をしたくないし訊かれたくもない政宗様に、んじゃ切ってあげようか?なだけの話
アニキの髪の話に続くなら →