発端は。
唐突に真田の旦那が奥州に行きたいと駄々を捏ねて。偶然、旦那と独眼竜との喧嘩が口から拳に変わろうかという時に前田家の風来坊が現れて。

船で海から来たんだ!

なんて、愉しそうに言うから。
海をじっくりと見た事がない旦那と、外に出て遊びたい独眼竜と、乗って来た船見せてやるよ!なんて、てんしょん上がってる風来坊とで海までお出かけ。お前の船かってーの。別にいいんだけど。
問題は三人に同行するのが俺さま一人だけだったという事で。竜の旦那が単身で外出を許されるわけがないから、竜の右目が畑に夢中になってる隙に黙って出馬。馬の時点でばれたけど。しかも追手振り切ったけど。全速力の馬に足で附いて行くのがどれだけ大変か。並の馬ならまだしも駿馬ばっか集めやがって。そこは俺さま、腐っても忍びですから。余裕だけどね。togetherしようぜとか言われても相乗りなんて真っ平御免だ。(解釈が間違ってるか?)
着いたら着いたで、馬で通りを突っ切ろうとするは、止めたらじゃあ馬を預ける宿を探してくれよだの腹が減ったから旨い飯を食わせろだのdoubledateだ!だのかまびすしい。
馬を預けてる間に食事処を見繕った真田の旦那が、佐助俺はずんとか云う餅が食いたいのだと財布代わりに俺さまの手を引いて歩いたら、独眼竜が抜き身で繋いだ手を斬り離そうとしやがって、当事者が怒る前に何故か風来坊のお猿さんが独眼竜に怒って威嚇、したのに爪で引っ掻かれたのは俺。(俺さまなにかしましたか!)
佐助に何をする前田慶次、と驚く旦那。大丈夫か、と夢吉っさんをぽいと捨てる独眼竜。俺の相棒に何すんだ、と詰め寄る風来坊。monkeyが相棒だとは案外下品だなアンタ、あんたが刀なんか抜くから夢吉が吃驚したんだろうが、先刻は某に刀を向けられたか政宗殿、ねぇ落ち着こうよと云う真っ当であろう俺さまの言葉は火に油で、黙ってろと怒鳴られ、全員が得物に手を伸ばした。止める間も無く往来で大立ち回り。(ちょっとした阿鼻叫喚?)
せめて馬だけでも預けておいてよかったと思う所か、刀も一緒に預けておくんだったと嘆く所か判らないけど。剣戟と掛け声の合間に風を斬る様な音と吹き飛ぶ戸板。散らばる露店。空を飛ぶ子供。……子供!?
独眼竜か風来坊に撥ねられたのか、青空の中を見事に弧を描いていく。子供が全身で着地する前になんとか落下地点で受け取って。佐助、と呼ばれた気がしたが、振り向いた視界一杯に立ち上がった馬の腹が。いつの間にこんな位置にと考えながら避けきれないと距離を計る。子供を投げ出す訳にはいかないから片手で武器を取ろうとしたが。これあの三人の馬のどれかだったりしたら帰りはどうなるんだ?今さら烏を呼んで間に合う訳がない。
最ッ悪だが骨の一本や二本は諦めようと身を屈めた、瞬間。あらぬ方向に身体が引っ張られた。悲鳴を上げなかったのは意地だ。子供を庇うように抱えたまま、背中が何かにぶつかった。の割には痛くないな?

「佐助?」

声に、堅く瞑っていた目から力を抜く。

「……ちょ、う。べ」

目の前で爽やかな笑顔の男の名を呼ぼうとして、何言ってんだと笑われた。

「テメェら、餓鬼じゃねぇんだ落ち着け!!」

一喝すると、怒鳴られ慣れているからか三人が三人とも条件反射みたいにぴたりと止まった。(そうか怒鳴ればよかったのか)
視線が高いのは肩というか腕で担がれているからだ。どうやら一本釣りにでもされたらしい。
子供は怪我も無く自分の腕のなかできょとんとしている。それの大人版が、俺だ。

(どうして此の人は斯う)(ああもう)

「もとちかさぁぁぁん」
「なんだどうしたっ?」

どうもこうもない。
鬼の首もとらずにすがりついた。


やさしさが光臨なさった


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戦国 政→佐/慶→幸前提のアニキ
優しいのはアニキしかいない
でもアニキの初期設定は女好き又は親就で

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2014/10/26 comment ( 0 )







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