ストロベリーの庭にて「何をしてる」
中庭の一画で蹲るorangeの頭に声を掛けると、あからさまに肩を波立たせた。
「なんだ、伊達ちゃんかぁ」
錆付いた様に固く首を回して此方を向いた佐助は、大仰に息を吐く。
「何してんだ」
「苺狩り」
再度問うと今度は滑らかに答える。蹲る先には花壇があって、濃緑の中に赤い物が紛れているのが見えた。
「いいのかよ勝手に」
「だって園芸部だもん俺」
初耳だ。
「……んなclubあったのか……」
「何言ってんの。伊達ちゃんもだよ」
「huh!?」
近くに行って問うと足下に目をやったらしい佐助に、上履きで、と窘められた。
「部として活動するのにね、いや同好会なんだけど、部員が三人以上と顧問の先生が要るわけよ」
喋りながらも着々と花壇から赤い色が減っていく。
「んで、俺さまと小太郎と伊達ちゃん。あと片倉センセ」
「何勝手に人の名前使ってんだ」
「いいじゃない。気付かなかったでしょ」
持ってるcaseと口とに、手が交互に行き交う。どうやったら食いながらそんな滑らかに話せるんだ。
「食べる?」
横に屈んで忙しなく動く口を観察していたら誤解された。断る前に目の前に赤い実が突き付けられる。
「そんな睨まなくてもさ」
「いや違……」
「おいしいねー」
受け取りはしたもののまだ食ってねぇし。つか聞いてねぇし。
caseに積まれた実を漁って食うが、口を動かすのがそんなに忙しいのか暫く気付かれなかった。
「何をしてる」
突然の背後からの声に、隣の顔が蒼白になる。振り向けば予想通りの人物が仁王立ちしていた。
「……小十郎」
「かっ……たくら、せんせぃ……」
般若の様なaureを背負いつつ間合いを詰める小十郎に、佐助はcaseを盾に差し出す。
「せっ先生の代わりに収穫しようかと!」
ハイ!とばかりに呈するが、中身は今し方オレが平らげた。
「って、無い!?」
「まだ摘んでないのがあるだろ?」
「ないよ!」
「なんでだよ!?」
「食っちゃったもん!だから分けて採ってたのに!」
「そんなの知るかよ!?」
「他に言う事があるだろうが」
口論している間に、小十郎が佐助の背後に回って後頭部を火花が散りそうな程に強かに殴った。
頭を押えて苦痛に声も無く呻く佐助の襟首を捕まえて小十郎が言う。
「逃げるなら今ですよ」
そんな涙目の佐助を置いて逃げられるものか。後が怖い。
正座で説教だろうから、一時間で済めばいいなと祈りながら連行される佐助の後に着いた。
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高校生 政→佐
食費を少しでも浮かせたいだけの話。何もない。
一番可哀相な風魔が気になるなら →