きみの指に溶けるシャーベット「ごめんなさい」
顔の前で両手を合わせて佐助が謝っていた。
「ごめん。ほんとごめん」
佐助が、ちら、と上目で盗み見ると、祈る様に手を合わせられていた男はふいと顔を背けた。
「小太郎〜」
佐助に似た色の髪が相槌するように動いていた。こちらからは見えないその顔を、佐助は身を乗り出して覗き込む。
「だから買ってきてやるっつってんだろ」
どうやら栽培したstrawberryを黙って食われた事に怒り心頭らしい風魔に言ってやったが、何故か佐助が言い返してきやがった。
「違うよ自分で育てたってのが大事なんだよわかってないなぁ!」
「一人でコソコソ貪り食ってた奴に言われたくねぇなァ!?」
「アンタ何もしてないくせに!」
「てめぇオレがいたからこそ一時間で済んだんだぞ!」
佐助一人なら未だに正座で放置play中だ。呑気にコンビニアイスなど食える身分ではない。
「そっ……うだけどいや!伊達ちゃんがいなかったら半分残ってたはずだし!」
「半分も一人で食うつもりだったんじゃねぇか!」
「二分の一も三分の一も同じようなものだと言い張るね!」
「言い張ってる時点で間違いだ!つかオレ頭数から抜けてねぇ!?」
「だから何もしてないだろあんたは!」
「じゃあ金払えよ!こいつはわかるけどなんでてめぇにまで奢らねぇといけねぇんだ!」
佐助は気付いてないが、意地になっていたはずの風魔が呼ばれたと思って振り返った。
「ケチぃ」
「てめぇにだけは本気で言われたくねぇ!!」
「っああああ!食べた!?」
「一口でうるせんだよ」
「一口って半分も食ってるじゃないか!」
「半分も三分の一も同じなんだろ、なぁ?」
指に垂れたと顔を顰めながら愚痴る佐助を無視して風魔に声をかけると、なんか小動物みたいにしゃくしゃく食べ続けていたが聞こえているのかいないのか。
「小太〜ごめんってば〜」
気付いた佐助が慌てて風魔に向かって拝み倒す。風魔は黙々と食い続け、掴んでいた佐助の指は滴るアイスに濡れていた。
「指まで舐めんな」
「っ、喉を突くな」
「………」
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風魔はお爺ちゃんに食べさせたかったのです。