「誰にでも脚開いてんじゃねぇぞアンタ」
「どうしてー?」

向かい合う形で、両足を開いて跨ぐように膝の上に座って猿飛佐助は笑う。
自分のものではなくて、主人を裏切るつもりも変えるつもりもなくて、けれど何故か足しげく自分にだけ顔を見せる忍。
そこでどうしても何も。
男名だが実は女だと知ったのはいつだったかもう忘れた。

「じゃあ降りるよ」

そう言って浮いた腰を、掴んで引き止める。力を抜いて再び腰を落として、首を傾げて覗き込む目は悪戯めいた光を宿していた。

「どうしろっての?」

ちろりと覗いた舌に誘われて口を啄む。奥に逃げた舌を搦めとると暫時応えていたが腕の力で逃げて態とらしい深呼吸を繰り返す。
追い縋ると顔を逸らして逃げた、その首筋に痕があった。腹が立って上から噛み付ける。

「痛いよっ」
「見せつけてんじゃねぇよ」

言えば噛み跡を押さえて、仰け反ってけらけらと笑う。

「だって仕事だもん」

忍で女だ。情報を得る為なら色を売る位するだろう。国一つとれるくらいの、で躱してきたくせに他の男には簡単に許すのか。

「あれ?怒った?」
「怒ってねぇよ」
「……怒ってるじゃん」

怒る権利は端から無いのだ。自分の所有では無いから。
うん、と小さく唸って、真田の忍は腕を組んだ。

「じゃぁ一つ、極秘情報を売ってあげようか」
「……極秘?」
「これは多分、あまり知られてないと思うよ」

だから機嫌直して、と言いながら周囲を見回す。本当に極秘ならそれを口にする訳がない。真意など計るだけ無駄なのか。
あのね、と耳打ちする様に声を潜めた戦忍びに身を乗り出す振りをした。

「俺まだ男知らないんだ」

吹き込まれた言葉はあまりにも馬鹿げていて信憑性が欠片もない。のだけれど。
自分は今どんな顔をしているだろうか。
女は膝の上でふふふと笑う。
試すような眼。

「信じる?」


純潔という名の皮肉を携えたおんなのこ



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戦国 政×佐♀
水戸の御老公のくのいちか。色仕掛けや入浴シーンはあるけど本番は無し、みたいな。

皮肉がなくなった場合は →
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2014/10/26 comment ( 0 )







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