態とやさしく舐めてあげる


刃物を振り回す政宗を横目に見ながら、佐助は竃の前で膝を抱えるように座っていた。

「……楽しい?」
「of course!」

切り刻まれた野菜は色も形もとりどりで一見しただけで手間が掛かっていると判る。

「胃に這入ってしまえば全部おんなじなのに」
「やかましい」

献立として並べられればそれは目を楽しませるだろうと思いはするものの、見た目で腹が膨れるわけではない。

「口に這入ったら粉々なのに」

味だって美味い不味いが判ればいいし、もっと言えば害があるか無いかさえ判ればいい。
だん、と俎板に包丁を叩き付けて政宗が佐助を睨む。

「アンタの口はしゃぶるだけにあるのかっ」
「んーそぉだねって何を!? いや違うっ違うでしょ、しゃべるでしょ!? べ!」

適当に頷いた佐助が慌てて首を振ると政宗は鼻で笑った。

「焦る事が?」
「くぉ……腹立つ……っ」

先刻から上機嫌なのにも何故だか腹が立つ。何か言って不愉快な思いにしてやりたいが、その手で光る刃物を見るとやる気が失せる。溜め息を吐いて気分を切替え、佐助は独り言の様に呟いた。

「料理が趣味って、変なの」
「アンタだって作るだろ」
「それは毒見が面倒だし……けど別に極めなくても」
「どうせなら美味い方がいいじゃねぇか」
「そんなものかなぁ」

不味くなければいいだろうに。質より量な雇主はそういえば、握り飯くらい自分で作れと言って自分で砂糖で握って以来、大抵は味に文句を言わないなと思った。
あの時は色んな意味で涙が出た。

「……不器用さんが俺の為だけに頑張った、とかで充分だけど……」
「ah、アンタそーゆーplay好きそうだからな」
「ぷれい?まぁね、好きなのよ。料理上手も好きだけどー、出来る子だと逆に気になるよね、重箱の隅をつつくような?」
「それくらい目を瞑ってやれよ御母様」
「誰がおかん……」

あんたに言われたくない、と言おうとして政宗の背を見て、ふと佐助は思う。

「そうか出来る旦那様を貰うって手もあるな」
「オレとかな」

笑いながら大根を剥く政宗の背を見ながら佐助はまさか、と笑う。

「お婿に来てくれるの?」
「っ!」

小十郎さんの方がいいに決まってんじゃーん!と返すと思っていた政宗は思い切り手を滑らせた。

「ッ痛ぇ!」
「ばっ……何してっ」

佐助は慌てて駆け寄って、危ないから包丁を俎板に置かせて、血で汚れないように俎板と野菜を軽く遠ざけた後に、政宗の手を取って土間の方に向き直らせた。
全てが目に入ってはいたが、政宗は自分が動揺した事に動揺していて優先順位に文句を言うのも忘れていた。

「……手が滑った」
「どうして」
「アンタが馬鹿な事言うからだ」
「へぁ?」

血の割に傷は酷くない事を確認してから、佐助は患部の血を吸って包帯を探す。
気付いて、政宗は馬鹿にしたような困った様な微妙な顔をした。

「やっぱりその為にあるんじゃねぇか?」
「ん?…………ああ、そうかも?」

笑って、佐助はわざと口内の指に舌を這わせた。


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戦国 政×佐
料理が趣味な筆頭を。どうせ指じゃ済まなくなるんじゃないですか?

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2014/10/19 comment ( 0 )







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