手がちぎれそうな位


滑る肉の感触に、ちり、と指に引き攣る様な刺激が走った。皮膚に歯を押し当てられ、ゆっくりと目を伏せながら、指が引き抜かれていく。ち、と傷口に唇が押し当てられて、あっさりと引き離された。

「なんてふざけてる場合じゃないっての」

乾いた笑いをしてそう言ってから、佐助は包帯を探そうと政宗の腕を放して身を翻した。
その腕を掴まれて、思わず佐助は振り返る。文句を言おうと開いた口を塞がれて、咄嗟に空いた片手で相手の肩を押し返した。

「ちょ、手当て」
「後でいい」
「よくねぇ、てか料理途中」

佐助は掴まれた腕を引き離そうとするが、逆に指が食い込むほど強く握られてしまう。

「っ、手ぇ放せ痛い」
「アンタが悪い」
「なに言、ん、ぅ」

政宗は、痛みに顔をしかめる佐助の文句を飲み込むように無理矢理その口を塞いだ。佐助は顔を逸らして逃れて、政宗の顔を手で覆って拒否するがその手さえ掴まれて逃げ場がなくなってしまう。
握る力が強すぎて本当に手が痛いんだが。悪乗りするんじゃなかったと後悔しながら、今機嫌を損ねたら料理を投げ出すかもしれないが気が済むまで相手はしてられないだろうとも佐助は思う。

「片倉殿?中に入らないので……」

板戸を挟んだ外から幸村の声がして、腕を掴む力が弱まった。その隙に腕から逃れ、佐助は手の甲で口許を拭う。
表にいるはずなのになかなか入ってこない事を不思議には思うけれど、招き入れる雰囲気でもなく、屋内にいる二人は動けずにいた。沈黙して外の気配を窺っていると、何か言い合っているような声が聞こえる。

「片倉殿!某手が!手が痛い!」
「いいから来い!」
「何処にでござるか」
「…………か、……厠だ!」
「何故に某まで!?」
「いいから黙ってついて来い!」
「痛い痛い痛い!」

そのまま声と足音が遠ざかり厨は静まり返った。
政宗は溜め息をついて、戸の前に置き去られていた野菜を抱えて俎の前に戻る。
もう一度大きく溜め息を吐いた政宗を見て、佐助は思わず失笑してしまった。

「片倉さんにお礼言わなくちゃ」

きっと戻ってきた幸村の腕は痣になっているだろうと、佐助は包帯と一緒に湿布薬も探すことにした。


-------------------
焦げてんじゃないですか?



2014/10/19 ( 0 )







戻る



「#ファンタジー」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -