少年と少年の共生論


土砂降りの中、一つの傘を奪い合いながら並んで歩く中学生二人を見つけて、側に車を停めた。声を掛ける前に、一人が気付いて飛び込むように後部座席に乗り込む。

「ちょっ、傘っ」

腕を掴まれて引き摺り込まれた少年は慌てて傘を畳んで、車内に収まった。

「送らせる」
「……いいの?」

袖で顔を拭う政宗様に、少年は鞄からタオルを出して頭から被せた。髪を拭く仕種が母親のようだ。

「構わねぇ。から、付き合えよ」
「まだ言ってんの? やだよ」

政宗様も大人しくされるがままでいる所から付き合いは良いようだ。

「英語見せてやらねぇぞ」
「そっちこそ試験前に国語のノート取ってくのやめてよ」

後部座席では中学生らしい会話が繰り広げられる。御実家で学校の話などされないだけに一層新鮮に感じられた。

「何が問題なんだよ」
「あのね、男同士だよ。問題でしょう?」

……何の話をしているのか。一抹の不安が生まれたが。

「細かい事を気にすんなよ」

政宗様に腕を掴まれ、少年の動きが止まる。溜め息は限られた空間内で大きく響いた。

「かなり大事でしょうが」

些事とは決して言えないが。嘴を挟むのは無粋と云うより大人げないだろう。
掴まれた腕を振りほどき、少年は随分濡れただろうタオルを自身の頭に被せた。

「だいたいさぁ……俺としては伊達ちゃんより小十郎さんのがいいしー」

何故こっちに矛先を向ける!? 以前に何故名前を知っている!?
思って、小さく噴き出してしまった。

「小十郎」
「は、」

後ろから座席を蹴られて背中が一度だけ跳ね上がり、ミラー越しに睨まれる。

「断れ」
「言われるまでもありません」

愉快な事を言ったつもりは無いが、こども組は目を瞠ってから、小さく笑い出した。
他にどう返せと。

「これで問題無いだろ」
「俺の意見は無視ですか」

踏ん反り返る政宗様の背中にすかさず腕を入れ、少年がシートが濡れると顔を顰めた。いやに姿勢のいい子供だと思った。

「問題が無いなら、冗談にしておいてよ」
「……そうか」

級友に政宗様がふられた様に見えるのだが、政宗様は渋るどころか笑っている。少年が逆に渋い顔をしていて。
さっぱりわからないが。
恋愛より友情、と云う少年期特有の事情だろうか。

……それで。
車は何処に向かわせればいいのか。


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中学生 政→佐
本気の恋愛なんてまだよくわかんない中学生。互いにノートがないと赤点。小十郎だぜは政宗様の父の秘書とか教育係のような?

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2014/10/19 comment ( 0 )







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