頭の上ってのは人間意外と盲点だ。
例えば、人の目を気にした時、周囲を警戒はするけれどもそれは自分の視界の中だけだ。人が通らない、建物の影の、声もあまり響かない所。けれどそういう所に限って上からはよく見えたりする。
きっと上からだから見えてしまうのだろうと、思う。本人の意識していない本音とか。
校舎の陰で可愛い女子に告白されて困った顔しかしない佐助を、その校舎の三階の窓から見下ろす政宗の頭を斜め後ろから見下ろす俺。
全てを見下ろす俺には限りなく見えている。
佐助はきっと、大切な家族を疎かにしたくない、それだけの理由でその他を疎かにする事を選んでいる。喩え泣かれたってその気持ちは揺らがない。

「政宗はさ」

息を詰めて階下を眺めていた政宗は、たった今オレの存在に気づいたかのように振り返り、なんだよと声にならない声で文句を言った。

「どこが好きなんだい?」

はく、と言葉にならない空気を言い放ち、顔を歪めて固まってから、諦めた様な笑い方をした。誰の事とは言わなかったけれど、今の自分を顧みれば明白だ。

「逆だ」

わからない、と俺が言う前に政宗は、階下の去っていく女子の背中を見送っていた佐助を見やる。溜め息のような力の抜けた声で答えた。

「オレなら、ああはならない」
「……すごい自信だけどさぁ……」
「幸村がいるからな」

だから、先が無いのじゃないかと言う前に、下からこら、と声がした。

「慶次の出っ歯!」
「どこがだよ!?」
「伊達ちゃんまで。行儀悪いんじゃないの」

佐助が下からねめつけるように見上げていた。何故か政宗は窓から身を乗り出して笑った。

「sorry、佐助」
「げっ?どうしたの気持ち悪い」
「頭下げたついでにもう一つ折れてやるよ」
「は?何言ってん」
「付き合おうぜ」

はく、と意味すら成さない空気を吐き出し、佐助は一歩後退り、顔を歪めて固まった。

「お前のもんになってやるよ」
「だめだ」
「駄目ってなんだよ」

言いながら笑う政宗を、佐助は睨んでから、顔を逸らした。

「違う。嫌だってことさ」

俯いて暫く黙っていたと思ったら、困ったような笑い方をして空を見上げた。

「ほら伊達ちゃんが変なこと言うから雨まで降ってきた」

言われてつられて曇り空を見上げていると、佐助はくるりと背中を向けた。

「あ、佐助っどこ行く……」

思わず去っていく背中に声をかけると佐助が首だけ回して振り返る。

「帰るんだよ」

溜息を吐いて、肩に掛けていた鞄に手を突っ込む佐助に政宗が何か気付いた様に声をかけた。

「佐助傘貸せよ」
「馬鹿か」

俺が濡れるだろ、言いながら見上げたけれど既に政宗は教室を出てしまっている。睨まれて、もういないよと、聞こえてはいないだろう大きさの声で返したが。佐助はあんまり興味が無いみたいだった。さっさと歩いて行ってしまう。

ただ、何度か肩と頭が揺れていたから、深呼吸してるんだろうなと思った。


少年は恋を患い息の苦しさを知る


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おんなのこって誰だい。


2014/10/19 ( 0 )







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