なれのはて「戻ったぞ佐助!」
飛び起きて、床に散らかした服を慌てて着る。近付く足音に動悸が激しくなる。
「佐助ー?」
「おかえり旦那」
ギリギリで部屋から出る。今、旦那に部屋を見られるわけにはいかない。
「今まで寝ていたのか?」
「旦那は直帰?」
部活の合宿から帰ってくる旦那は必ず生傷だらけだ。そして空腹だ。
「汗流してきてよ。その間に何か作るから」
鞄を床に置き捨てて旦那は風呂に直行する。汗と土に塗れた服詰めの鞄はとりあえず部屋の隅に除けて置く。
何か作ると言っても昨日の残り物とご飯と卵くらいしかない。
「……おにぎりでいいかな」
昨日の残り物に火を掛けながら、玉子焼きを作って。冷やご飯は不味いのにおにぎりは冷えても食べられるのはどうしてかなぁ、とか考えながら握っていると風呂から上がった旦那が気付かなくてもいいことに気がついた。
「客がいるのか?」
「……どうして?」
「箸が多い」
元親殿か?と呟いて濡れた頭のまま部屋まで呼びに行った。…………知った事じゃないや。
「政宗殿!? 何故佐助の部屋に!?」
「なんだ泊まっちゃ悪いのか」
昨日と対極の不機嫌な声。
旦那にバレたら終わり。そう決めてこの事態だ。どうするかなんて知らない。
関わらないでいようと耳を欹てていたら、何事か叫んでいた旦那の声が突然、俺さまの部屋から飛び出して自分の部屋の方へ飛び込んで行ってしまった。
握り飯を並べて置いて、人数分の膳を揃えてから覗きに行ってみると、昨日からの客人は昨夜と同じ格好のまま布団の中にいた。
「……何て言ったの?」
「暑いから」
いくら旦那でも納得しないだろ。全裸で俺さまの布団にいるのに。暑いなら床にでも寝てろって話じゃないの。てーか下くらい穿け。
「佐助にbedの下に隠してんのバラすぞって」
「……ああ、お菓子」
バレてないつもりなのがすごい。じゃあ今頃はベッド下の物を更に奥に突っ込んでいるか、腹に納めているかのどちらかだな。
ずるずると布団の中に潜っていく客人を揺すって引き止める。
「伊達ちゃん二度寝しないで」
突然布団から生えてきた腕に首の後ろを押さえられて引き寄せられる。
「昨日あれだけ教えただろうが」
「……わかったから。ほら、起きなって、……政宗」
言うと得意の英語で朝の挨拶をしてキスされた。
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高校生 政×佐
旦那と忍は同居(not同棲)。繋いだ指の間から地を這う汚い雲を見た の翌日(展開が早いとかは無考慮で) 今回のお題通して名前を呼んでるのはこれだけ。なので、なれのはて。
昨日の晩御飯何食べた? →