白鳥さん




 女は、美しいからこそ価値がある。
 価値があるから美しい。

 でもね。
 美しい女には、毒があるのよ。



・・・



 メイクを終えて、巻いた髪を整える。ヘアアイロンを手元に置いてドレッサーから立ち上がれば、結った髪がスルリと肩から滑り落ちた。
 三面鏡に映るわたしの姿は、どの角度から見ても上品で艶やかな美人そのもの。
 ……ん? 自分で言うなって?
 でも実際そうなんだから、言わざるを得ないじゃない。

 ほら、この均整のとれた端正な顔立ち。
 瞳は綺麗な二重で、目元は軽くラメを散りばめつつ派手すぎない、華やかなメイク。
 髪は男心を擽る、甘いコロンが香るロングヘア。仕事の邪魔にならないように左右片方に纏めているけれど、これだけじゃ地味。毛先をくるんと大きく巻いて、エレガントな印象を与えるようにしてるの。
 そして、つややかで綺麗な肌質。
 細身の体型からは想像できない豊満なバスト。
 すらりとした、綺麗なクビレからの曲線美。
 この抜群のスタイルと美貌、そして誰もが振り向き思わず息を飲んでしまう、美人とも可愛いとも言える顔立ちは非の打ち所がない。

 それがわたし───白鳥亜衣《しらとりあい》。

「はあ……っ

 とろん、と瞳が一気に蕩ける。
 ドレッサーのデスクに両手をついて、鏡の中にいるわたしを見つめた。
 この完璧すぎるルックスから目を離せない。
 ほう、と酔いしれた吐息が漏れた。

「今日のわたしも美しいわ……」

 自分で自分の姿に惚れ惚れする。



 そう。美しさは罪よ。
 そして麗しいわたしは、存在自体が罪深き秘宝。前世は絶世の美女クレオパトラに違いないわ。
 視線を首下に落とせば、紺の制服が目に映る。シルエットが綺麗で、スタイリッシュなデザインは高級感があり、青の花柄スカーフが華やかな印象を受ける。まるでわたしの為に仕立てたんじゃないかと思うほどに魅力的。この制服は、大手企業で有名なA社のレディースウェアなの。
 正直、この制服がこれ程似合う女性社員なんてわたしくらいじゃないかしら。更にGカップを誇るダイナマイト級バストがこの制服を、そしてわたしのスレンダーボディをより強く際立たせている。お陰で男性社員の目は全員、わたしとこの胸に釘付けよ。



 でも、誰も知らないの。
 この制服の中の秘密を。

『清楚でクールな美人』でまかり通っているわたしが───とんでもなく、えっちな下着を身につけていることに。
mae|表紙tugi

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