快楽に溺れる金曜日2*



 優しさの度合いで言えば、冴木くんも村瀬くんと変わらない。村瀬くんと違って冴木くんは意地悪だし、強引に迫ってくる時もあるけれど、最終的にはちゃんと、私の意思を尊重してくれる。
 2人とこんな関係になってから1年間、何度もこうして身体を重ねてきたけれど、いつだって彼らは優しく抱いてくれて、私の身体を労ってくれる。私達の関係に名前をつけるなら、セフレという呼び名が正しいんだろうけど、ただのセフレと呼ぶには私達の仲は浅いものではなくなっていた。

 不誠実な行為なのは、お互い承知の上。
 だけど、全く泥沼な仲じゃない。
 私も彼らも同意の上で、この背徳な関係をただ楽しんでいる。



「……あ、やばい、イキそう」

 頭上から弱々しい声が落ちる。上目遣いで見上げれば、村瀬くんの息遣いが徐々に乱れ、口数も少なくなっていることに気づいた。
 もう近いんだと察して、口を動かすスピードを早める。裏筋を舌でなぞりながら、片手も器用に使って責める。唾液をたっぷり含ませながら頭を振れば、ジュボッと卑猥な音が鳴り響いた。
 村瀬くんの表情も、もう余裕がなさそう。

「っ……は、水野さん、出そう……」
「んっ……ふ……、口に、出して」
「……いいの? ごめんね」
「うんっ……あッ、ん…ッ!?」

 盛り上がってる最中、突然襲った刺激に目を見開く。私の両足の間に顔を埋めていた冴木くんが、いきなり私の片足を掴み、ぐっと上に持ち上げた。ぷっくり膨れ上がった花芽に舌を伸ばし、コリコリと執拗に弄り始める。

「っん! んッ、ぅん──……ッ!」

 舌先で捏ね回されてイキかける。絶頂に抗いたい意思も虚しく、身体は高みへと上っていく。ただでさえ感度がおかしくなっているのに、今ソコを舐められたら……ッ、

 あ……、
 だめっ、イッちゃう。

「ん……っ、んぅ、んッー……!」

 ちゅうっ、と花芽を吸われた瞬間、頭の中が真っ白に染まった。
 ビクン、ビクンッと両脚が痙攣する。あまりの気持ちよさに、村瀬くんのモノを咥えたままあっけなく達してしまった。
 それでも冴木くんは愛撫をやめてくれなくて、休む暇もなく敏感な蕾を弄られて身体が跳ねる。まるで、『こっちの事も忘れないで』と言わんばかりに強い刺激を与えられ、ついに口を離して甘い嬌声を上げてしまう。負けじと村瀬くんに意識を向き直しても、押し寄せる快感の波が邪魔をして集中力が途切れてしまう。
 こういう時の冴木くんは本当にイジワルで、やめてと言っても素直にやめてくれる人じゃない。だから私も、快楽に抗いながら村瀬くんに尽くすことに専念した。

 ……改めて考えると、異様な光景だな、と思う。
 恋人でもない男のものを懸命にしゃぶる女と、その女の中心に顔を埋めている、別の男の姿。しかも自分達が働いている会社の一室で、だ。

「っぁ、出る……っ」

 控えめに告げられた直後、先端から勢いよく飛び出した白濁を舌の上で受け止めた。
 口いっぱいに広がる熱い液。欲望を吐き出した村瀬くんのモノは、ぴくぴくと震えながら絶頂の余韻を味わっている。白いものが付着している先端に吸い付けば、村瀬くんが思いきり腰を引いた。

「ちょっ、待って待ってくすぐったいっ」
「ふふっ」

 急に慌てる村瀬くんがかわいい。
 何度も行為を繰り返してきたからわかる、村瀬くんは敏感体質だ。
 どこを触ってもくすぐったそうに身を捩るから、かわいくてつい意地悪しちゃう。そんな私の思惑に気づいていないのか、村瀬くんは素直に「ありがとう」と口にした。
 ポケットからすぐにティッシュを取り出して、私の口元を拭ったりして世話焼き係に徹してる。

「……前から思ってたけど、村瀬ってちょっとM入ってるよね」
「そういうお前はSだよな……ソレ何だよ」
「「え?」」

 冴木くんと私の声が被る。後ろを振り向いた先にある冴木くんのモノに、私の目は釘付けになってしまった。既に完全復活を果たしていたソレは、すっかり臨戦体勢に入っている。

「後ろから見る水野さんのフェラがえろすぎた。……おっきくなっちゃった」

 濡れそぼった蜜口に、冴木くんのモノが触れた。愛液を先端に塗り込ませるように擦られ、浅い場所を行き来するような動きに焦れったさが募る。

「あっ、あ……入っちゃう……っ」
「挿れてほしい? 水野さん」
「んっ……」

 素直に頷いた時、村瀬くんが身を屈めて私に顔を寄せてきた。内緒話をするかのように手を添えて、耳元でヒソヒソと言葉を告げる。

「水野さん水野さん、『勝手に挿れんな、この女たらし』ってアイツに言ってやれ」
「村瀬聞こえてるから」
「うわ地獄耳……」
「水野さんは俺に酷いこと言わないよ」
「挿れんな女たらし」
「言った。水野さんまで俺を裏切った。傷ついた。もう村瀬も水野さんも知らない」

 言うないなや、ぐちゅんっ! と男根が奥を突く。衝撃に声も出せず固まる私に、冴木くんはゆっくり腰を引いて、中途半端に抜いていく。
 すっかり彼のものに馴染んでしまった膣内は、彼自身を求めて更に蜜を生産していく。やだ、抜かないで、もっと突いて。私の子宮が、物足りなさに切なく締まる。

「俺は村瀬みたいに優しくないよ」
「ぁ、っ……」
「挿れてほしい?」

 焦らすように何度も擦られる。意地悪、そう言いたくて恨みがましい視線を向けても、優しく微笑み返されただけで進展しない。よほど私に言わせたいらしい。

「……さ、えきくん」
「うん?」

 呼び掛けたとき、ふと、手に温もりが触れる。村瀬くんが私の両手を握りしめたり、手のひらで私の手の甲を、宥めるようにぽんぽんする。
 冴木に任せても大丈夫だよ、そう言われてる気になって嬉しくなる。彼らしい伝え方に安心感が広がった。

 ちょっぴり意地悪な冴木くんに対して、どこまでも優しい人柄の村瀬くん。
 精神安定剤みたいな人だな、って思う。

「……いれて……ください。冴木くんがほしい……」
「…… 了解」

 妖艶に微笑んで、冴木くんが再び腰を進めていく。
 村瀬くんの手の温もりに触れて、甘い快楽を与えてくれる冴木くんに翻弄されて。何度も押し寄せてくる快楽の波に、私は身を委ねた。

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