世紀の変わり目に投入された製図用シャープペンシル、パイロット"S"シリーズを今回取り上げます。

樹脂グリップのS3、ゴムグリップのS5、真鍮グリップのS10の三種から始まり、木軸のS20や口金を円錐形に変えた筆記用が追加されたヒット作、S20と筆記用以外は.3mmから.9mmまでの五種の芯径が揃っています。

Sシリーズは軸中央を境目に、軸前半が太く後半は細い形状をしています。
これを手にして、その絶妙な形状に感嘆、それまでストレートな円筒軸が正解と思っていたところそれは近似値でこの軸形状が正解だったと思わされました。
前軸がストレートならさらに良かったでしょう。
軸色は数色ありますがiso規格等に沿った線幅識別色ではないため、茶色(0.5)と橙色(1.0)はありません。
Sシリーズのクリップは従来と違い、軸を片側から巻き込む形式です。

また全長が短いため筆記時邪魔になりにくく、軸に沿って回すと取り外すことも容易です。このクリップは
コイノア5216等8mm径軸に転用可。
クリップを外したら、軸中央の丸い突起が転がり防止になります。
S5以上のノックボタンには芯径表示と芯硬度表示つき。

ただ、芯硬度表示は緩みやすく、改良が待たれるところです。
製図用シャーペンは芯繰出量が長いと定規に芯が直接触れて線がズレたり芯が折れたりするため、芯繰出量が少なくなければなりません。
Sシリーズは.3mm芯径の場合で繰出量が0.4から0.5mmもあり、これはちょっとした欠点です。
定規が浮いている製図機械やT定規なら繰出量が長くても問題になりにくいのですが、インクエッジが薄い定規では気をつけましょう。
繰出量を少なくするには、口金と軸の接合面を0.1〜0.2mm削って、チャック移動距離を短くする改造法があります。

後年発売されたS20は、カバ材に樹脂を含浸させたコムプライトが軸に用いられています。
芯径は.3mmと.5mmの二種。.7mmと.9mmにすればさらに好評だったに違いないのに残念です。
軸をS10と交換してS20/.9mmを組もうにも各グリップは互換性がないという不必要に細やかな設計のため実現ならず。残念でならない。