1966年に発売され今なお製造されているラミー2000は、全体にヘアライン仕上げを施したミニマルモダンな外見ながら、ピストン吸入式を採用し14kペン先を装備するクラシカルな万年筆です。
キャップ8g+本体12g,先端から54%-60%の位置に重心があります。
ピストン吸入式とは、胴軸自体をインクタンクとし、軸内部に仕込まれたピストンでインク瓶からインクを吸い上げる方式。
構造が複雑になるもののインク以外消耗しないためランニングコストが低く、インクカートリッジの製造中止を恐れることもありません。
←左がピストンを前進させた状態。
例えラミー社が倒産しても、この万年筆は本体が壊れるまで他社製インクで書き続けられるでしょう。
私有品のF(細字)は'80年代製造、M(中字)とB(太字)は'90年代製造品。
プラチナ装飾されたペン先は滑らかだが軟らかくはない、と言われますが三本のうちMだけは軟らかく、製造ロットによる違いかもしれません。
Fの切り割り(ペン先中央の切り込み)を前方から見ると少し斜めにズレており、全般的に品質が安定していると言われるラミー2000にもこんなロットがあったことがわかります。
Fはペン先をちょっと研いだけれども、切り割りの間は手付かずで未だ完璧ならず。
ふつうは販売店通して返品、修理依頼するものですけどね。
MとBは問題なく、安定した品質を証明しています。
当記事の草稿執筆中、Mのインクがちょうどなくなったので洗ってみました。
ペン先は分解して水に浸け、分解できない胴軸は吸水と排水を繰り返してタンク内を洗います。
通常は分解しませんが、
このMは七年間インクを入れっ放しで……まるで蝉。水溶性インクで良かった。
ペン先のプラチナ装飾は剥がれてしまいました。
Bは剥がれないのですがFとMは地金が見えてしまっています。
左はF、右がM
Fのほうは耐水性インクで長く使っているため、輪状の汚れが浮かんできました。
キャップは嵌合(かんごう)式、クリップは可動式で1.5mm厚までの生地に差せます。
その裏側に製造国刻印があります。
紡錘形軸は好悪が別れるところですが、使い捨てインクカートリッジを使わない設計思想と合わせ、欠点らしい欠点もなくバランスがとれた良品です。
細字がちゃんと細ければよいのにね。