鉛筆は木材を用いた使い捨て品のため森林資源を浪費していると思われがちです。
むしろ森林面積維持に貢献しているということは
トンボ木物語で触れましたが、さらに無駄なく木材を用いる鉛筆が2010年に登場しました。
木材をいったん粉末にしてから鉛筆の形に成形するという、かまぼこのような方法で製造されています。ドイツ製。
従来製法では、板で黒鉛芯をはさむため、木材にフシや割れがあると板に加工できず周辺部ごと捨てなければなりませんでしたが、粉末化してしまうウォペックスでは廃棄物を極限まで、或いは無くしてしまえるのです。
この製法のおかげか百円と低価格。
一本100円税別
φ7.5×174mm 六角軸、封蝋なし
芯硬度:2H,HB,2B
表銘:MADE IN GERMANY [STAEDTLERロゴ] WOPEX [芯硬度]
裏銘:[バーコード] Art. Nr. 180-[芯硬度] [PEFCロゴ]
なまっちろいのがWOPEX.
芯先を削った状態で出荷される「先付け鉛筆」です。
粉末を高密度に凝縮したため重く、従来品の約2倍10g。
芯も密度が高く筆記距離が約2倍になったとステッドラーは宣伝してますね。
表面の手触りはゴムグリップのような感触。
左からWOPEX、ルモグラフ、エルゴソフト、トラディション
手前にあるのはWOPEXの削りかす。
書き味はするするなめらかで定着性が良く筆跡が擦れないけれども、2Bでも十分に硬いうえ色が薄く、硬度ごとの差も殆どない。
1000℃以上で焼き上げる鉛筆の黒鉛芯(焼成芯)は陶器の一種と言われるのに対し、本品の芯は製法から見て焼成芯ではないのかもしれません。
筆跡が消しゴムで消えにくい、と評判悪いのですが、使い始めを除けばそうでもなく、また軟らかい消しゴムよりステッドラー純正消しゴムや
ミランTROXのような堅め消しゴムで消しやすい。
鉛筆、消しゴム、紙とのあいだにも相性がありますね。
ファーバーカステル#9000も使い始めは硬く薄く、多湿な日本における先付け鉛筆の特性に思います。
たぶんドイツでは評判よろしいんじゃないでしょうか。
この新しい鉛筆には改良の余地を感じながらも、開発の方向性には期待します。
本品はPEFC (Programme for the Endorsement of Forest Certification森林管理認証プログラム)認証品。適切に管理された森林から伐採された木材を使用し、乱伐された材料ではないことが認められています。
森林認証団体ではFSC (Forest Stewardship Council森林管理協議会)もあり、両団体は対立しているらしいけれどもその経緯についてはよくわかりません。
どちらも乱伐防止と森林の産業利用を折衝するNGOです。
木材粉末成形部分はすべすべなのに表層がべたつくのがいやで、削り落としてみたら悪くない感触でした。滑り止めを刻めば、べたつかず滑らずカドが肌に食い込まない軸が作れそうです。
この軸木の素材を染色すれば色鉛筆用材にも、マイカルタ代用にもなると思いますし、もしかすると万年筆用材として好適かもしれず、使途の広がりを期待できます。
鉛筆用としては鉛筆削りの刃を鈍らせやすい難点があります。