20.


*  邪に書こうと思っていたちょいエチィ話
*  残念ながら寧々×神崎ですけど…
*  男のクセに神崎は受けだって信じてる
*  念のため15歳以下禁止くらいで
*  特に追記以降は閲覧注意願います



 神崎が寧々と付き合い始めてから数ヶ月。主に2人っきりで会うということも少なく、会えば前の様にパシリよろしく買い物の荷物持ちだったり、バイクで来いと言われればアッシーをさせられたりと、ハッキリ言っていい迷惑であるとも何度も思ったが、全面的に否定できる程に嫌ではなかった。たまにゲーセンには付き合うくらいにはなったし、互いに家に行くぐらいはごく普通だ。だがそこにはたいてい城山か夏目が。もしくは千秋や由加、今まで一回だけだったが邦枝がいたこともあった。つまりは2人だけで遊ぶような機会は望んで作らなければ訪れないのが常なわけだ。それはどうしてかというと神崎にしろ寧々にしろ、結局人を呼び寄せるタイプなのだろうという現れに他ならなかった。そして自分以外の誰かに囲まれて座っていることについて居心地のよさを覚える体質なのだから問題はない。だが、
「で?2人どこまでいったの」
 などと夏目が聞くものだからノリにノッて由加もにやにやしながら聞いてくる。さすがにこの質問には寧々も口ごもる。どこまで、というよりはどこにもなんにもどうにもなっていないのだ。「Aです……」ともごもご答えた時に夏目も由加も城山すらも固まった。あんたらいったい今までなにしてたんですかと言わんばかりの目を向けている。
「寧々ちゃん…さすがの神崎君も溜まりに溜まってますよ?」
 そんなことをわざわざ言わなくてもいいでしょうと思っていたら、神崎の部屋の押し入れからエロ本を出してきては寧々に見始めるというなんとも強行に出始めたので慌てて夏目を畳んだ布団の上に蹴り倒した。のだったがもはや時すでに遅し、で神崎の隠し持っていたエロ雑誌は由加・城山・寧々の三人にあられもなく見つめられることとなった。夏目の胸倉を掴んで凄んだがまったく意味がないという。虚しい程に完敗である。三人で口々に勝手な感想を言っている。そんなに激しい雑誌でもないが、見られるのは恥ずかしいことこの上ない。女も混じっているだけに。だがまったくなんということはない様子でページをめくっている。気にしているこっちの方がバカみたいじゃねえか。強がりに「けっ」と吐き捨てた。誰も聞いてなかったけど。

 その日の帰り道。コンビニ行くから、と言って家の傍まで女連中を送る神崎組の面々。
「まあ俺たちがいちゃムードも何にもないけど。ホテル、行ってきたら?」
 石矢魔という片田舎にもあるゴキブリのごときラブホテルは近場にあった。そこに行くのは誰かに見咎められそうだったのでちょっと嫌だなぁと思ったが、ガンバレと小さく言いながら夏目から渡された割引券を見てはどうしようかと考え込んだ。握り込まれた券を見て寧々は複雑に笑う。
「斡旋してくれてんだし、いこっか」
 そんなことを言いだした寧々の姿に目を丸くする一行。そもそもお前らがそうさせたんじゃねえか、とツッコミを入れたかったが神崎はその強引さに何をすることもなく寧々の後に続くだけだった。またナサケナイ伝説が増えてしまったような気がするが、とりあえずまだ流されたままのこの状況を理解できていないので気にしないこととする。
 本当は思っていたのだ。わざとらしい。だが周りが囃し立てるため、近くのラブホに向かうことにした。さらにわざとらしく寧々が腕を組んで来たせいで余計に断れなかったのだ。ていうか断りたいわけじゃねえし。さんきゅう夏目。心の中で神崎は夏目を神と崇めた。ちなみに一瞬だけですが。



*****


 ドアを一枚隔てて彼女がシャワーを浴びている。神崎は軽くシャワーを浴びた後だった。ラブホテル特有の薄暗い明りがドキドキ感をさらに誘う。そもそもこんな場所に来たのはひどく久しかったので緊張した。詳細を言えば神崎は2度目だった。1度目は彼女ときました、と言いたかったけれど実は違う。男友達らと夜中まで騒いであぶれて来てしまったという情けない過去が1度、あるだけだった。そんなことを暴露してしまえばきっとシャワーを浴びている寧々は笑うだろうから絶対に口にしてやるつもりもなかったが。



 ホテルに向かう道すがら、別にあんな所で見栄を張る必要はないだろうと何度か寧々に向かって告げた。寧々が男の身体にまだ不信を抱いていることは知っていたから。無理をすることはないと言うつもりで声を掛けたのだった。だが寧々は少し恥ずかしそうに笑って返した。
「あれからだいぶ時間、経ったんだし。…うまくいくかも、しんないでしょ」
 その顔を見て思わず神崎は息を飲んでしまったのだ。心臓もどくん、と強く跳ねたが当たり前に決まってる。もしかしたら好きな彼女と一発、イタすことができるのかななんて思えば男は現金に喜んでしまうに決まってる。それは男の性というものだ。



 バスローブ姿でシャワーに濡れた髪もそのままに上がって来た寧々を一瞥し、平静を装って買い置きの柿ピーを齧る。付けっ放しの民放の方に意識をやろうとするのだが、どうしてもうまくいかない。寧々は何食わぬ表情で冷蔵庫を開けている。缶ビール一本持ってきて「飲む?」と尋ねられて、ヨーグルッチは道の途中で飲み終わったのだと気付く。とにかく飲むの早いのは自分のせいですから仕方ないッスね、ハイ。などと脳内ツッコミをひとつ。ビール缶を受け取って一口飲んでから返す。どう考えてもビールよりヨーグルッチの方が美味いとは思うが。だが文句は言わないで2人で一本、ちびちびとビール缶を空にしてどちらからともなくキスをした。
 最初は触れるように。離れながら感じた。そういえば最近キスもしてなかったんじゃねえのか。恋人?今までの時間ってダチの延長だろ、などと今更思っても遅い。それに今この瞬間、彼女は神崎のものに間違いない。もう一度キスを。今度は今までよりも少し深く。寧々の唇を軽く舐めてから少しだけ口を離した。寧々が。
「邪魔」
 ピアスチェーンを掴んでじゃらりと鳴らす。イイトコで邪魔なのはお前だろうが、といつも付けているチェーンの存在などまったく気にもしていなかった神崎が複雑な顔を向けた。トレードマークなんだけどよぉとごちょごちょ呟きながら致し方なく言われるままにピアスホールから針を抜いた。神崎個人としてはいつも身に付けているので付けていない方がヘンな軽さのようなものを感じてしまうのだが。これは付けている者でないときっと分からない物足りなさなのだろう。
「…初めて見た」
「あ?」
「ピアス外したとこ」
 お前が外せって言ったんじゃねえか。と返そうと思ったが唇が塞がれたので言えなくなった。あとは溶けるようにくちびるっていう粘膜の海に溺れていった。舌を動かせば水の音が近い鼓膜に直接響いて来て、今まであった余裕なんてものが剥がされてゆく。何度か激しく口を貪るみたいにしてから離れたら、透明な唾液の糸がつぅと2人を分かちたくないみたいに伝う。普通の脳みそならきっとできないだろうけど、ただ垂らしてしまうのも勿体ないような気になって、その糸を啜った。目が合った互いの頬はこれまでと、これから起こる出来事に興奮を膨らませて紅潮していた。
 神崎はベッドの上で寧々を見下ろしながらバスローブに手を掛ける。脇で結ばれた紐を解いてしまえば今まで隠されていた肢体が露わになる。普段は日に晒さないせいで白い肌が仄暗い部屋の中でよく映えた。それでもなお寧々を守る砦はそこにあった。
「っお、紫とかじゃねえの」
「違います。薄いオレンジみたいな色です。あーこんなことになるんならもうちょっとマトモな下着つけてくりゃ良かったわよ」
「じゃあ別にシャワー浴びてから着なきゃよかったじゃねえかよ」
「なんかソレも嫌なのよねぇ」
 今する会話かよ。とツッコんだら寧々も笑った。こんな状況なのにお互い色気が足りないものだからどうにもちぐはぐだ。もちろんテレ隠しであることも分かっているのだが。神崎は再び寧々の身体に向かった。首筋に舌を這わせ、時折強く吸って己の証を刻みつける。寧々の発する吐息がたまに声になって届く。甘い色を含んだその声にどきりとした。両腕を身体に回して『あまりマトモじゃないらしい』ブラのホックに手を掛ける。ちょ、ちょっと待て、これはどうやって外すんですか?引っかかってる部分があるはずですけどちょっとォオオオ!寧々の身体をまさぐる手ががさつになってしまっているかも知れなかった。がくり、寧々さまの前に頭を垂れた。
「む、……ムズイっすよ」
「エロ本のように上手くいくと思うな、坊や。あとブラ外すのは絶対手伝いません」
 勝ち誇った笑みを浮かべられた日にはなんだか男としてやりきれない。寧々の言うとおりだった。今までの予習の成果がまるっきり出ていないようだった。しかもフロントホックでしたなんて単純なミスが発覚。それも神々しい寧々の形良きおっぱいを拝めたのだから悔しさは即・水に流した。
 それこそ祈る気持ちで乳房に触れ、そのやわらかさの中に顔を埋めて、揉みながら吸い付く。それでもガキの頃の気持ちとはまったく違う。していることは同じであると分かっているがこれは止められない。少し弄くるだけで固くなる乳頭にキスをした。寧々の鼻から洩れる音のような声が、神崎の性感を擽るようでゾクゾクして堪らない。その間じゅう寧々は神崎の短い髪を撫で続けていた。この無垢な男がいとおしくてならない。そんな気分になるのはどうしてだか分からなかった。いつもは暴力沙汰も当たり前で、確か窓から仲間を落としたりしていたはずだ。それが当然だとも言っていたし、凄む時は使いもしない金属バットを振り回して挑発と破壊を繰返す。最初は鬼のような男だったはずだ。それを可愛いとか思えるようになったのも時間と邂逅なのだろうと思う。神崎の顔は臍の近くを行ったり来たりしている。唇と舌が寧々の身体の線をナゾっている。パンティに手が掛かって、躊躇うようにゆっくり神崎が茂みに触れる。もう一度、短い髪がワサワサと胸に触れてきた。ぎし、と軋むベッドの上で神崎が困ったような顔をして顔を上げた。
「大丈夫、…じゃねえだろ。身体、硬くなってんぞ」
「ん、ごめん。やっぱすぐにはムリだね」
「いいって、気にすんな」
「色んなこと思い出しちゃうのよねぇ」
 寧々が力なく笑った。たぶん寧々は感じていなかったのだろうと神崎は思う。結果として濡れていなかったし、途中から身体も硬くなっていたのだからもう少し早く察するべきだったのかもしれない。だが神崎としてもそこまでの余裕はまるっきりなかったので、気付くのが遅れてしまった。まぁ挿れてから気付くよりは全然いいかと思って、相手のやさしさに甘えることにした。
「んなツラすんな」
 弱々しい笑みを向ける寧々らしくない表情。泣きボクロにキスした。相手の気持ちのすべてが分かるわけではない。だがこうしているだけで少しは伝うような気がして、相手の頭を抱き締める。寧々は小さく頷いて、神崎の胸にキスをした。何度も。だから間違いなく神崎の平常じゃない心音を聞いていたろう。それでも何も文句は言わなかった。ドキドキもするけれど、こんな時がまたくればいい。それは間違いなく互いが互いを大切に思って、なんてうつくしくて、やさしい時なのだろうかと感動を覚え共感し合っているからだ。

つづきを読む 2011/09/24 20:26:05