もしもの世界 | ナノ

美容師と航海士




2年の修業期間を経たナミの髪は腰あたりまで伸びオレンジ色が太陽に反射してさらなる輝きを放っていた。
ロングヘアになると散髪の頻度はどうしても落ちる。そのためナミに久しぶりに髪を切ってほしいと頼まれたときなぎさはとても喜んだ。


シャンプーをしている時からすでに世間話が弾む。
潮風にさらされ少し痛んでいた髪に特別なトリートメントもしてあげた。

綺麗な髪を持つこの船の女性二人の髪はアレンジしていてとても楽しいものだった。ナミとロビンがロングヘアになってからは、何もなくても二人の髪を好きにアレンジするのがなぎさの趣味の一つになっていた。最近はカットやシャンプーよりもヘアアレンジに多くの時間を費やすことが多くなっている。


「で、今日はどんな髪型にしてくれるの?」

そんななぎさを分かってか、カットが終わってから待ってましたとばかりにナミが目を輝かせてそう尋ねる。ヘアカタログを見せて「これがいい!」とナミ自ら指定してくることも少なくはないが今回は完全に「お任せ」らしい。

鮮やかなオレンジ色の髪をしばらく眺めていると、ある髪型が思い浮かんだ。

量を梳いたとはいえ片手ではまとめきれないその髪をなぎさは三つに分け規則正しく編み始める。大人しくその様子を鏡越しに見つめるナミと世間話をしていると時間が過ぎるのはあっという間だ。編み込んだ髪の束に様々な色の花の飾りを差していく。全ての工程を終え、合わせ鏡で後ろ姿を見せてあげるとナミはさらに目を輝かせ

「うわぁ〜!すっごく綺麗!さすがなぎさ!ほんとうにありがとう!」

ナミはそう言って椅子から立ち上がったと思えばガバっと私に抱きついた。
大きな鏡の前でしばらく自分の髪を眺めた後、

「ロビンにも見せてこようっと!
 そうだ!お昼ご飯食べたら、街に買い物に行きましょう!」

と言い、なぎさの手を引いてダイニングへ向かった。
普段航海士としてテキパキとクルーに指示を出すナミだが、時々こうやって子どものようにはしゃぐのもまた彼女の魅力だ。

ダイニングへ行くと昼ご飯の前だからかロビンを含めみんなが集まっていた。
ロビンやサンジはナミが部屋に入るなりナミの髪型に気が付いた。

「あら、素敵な髪ね!」

「うおぉぉ〜!なんて美しいんだナミさんっっ
 天使だ…女神だ…!!」

「へえー!すっげぇなぁ!」

ロビン、サンジくん、ナミとわいわい騒いでいる間にナミの背後にやってくる影。気づいた時には、ルフィがナミの髪の毛を触り、セットし終わった状態と比べるとかなり崩れてしまっていた。なぎさだけでなく、素人目に見ても分かるほどに。

静まり返る船内。ナミの顔に血が上り、徐々に赤くなっていく。

「こんのバカ!!!!!!」

ゴチーーーンという音と共に仰向けに倒れるルフィ。その頭には彼の顔ほどの大きさのたんこぶ。

「せっかくなぎさが綺麗にしてくれてとっても気に入ってくれたのに!どうしてすぐそういうことするのルフィ!これからショッピングに行こうと思ってたのに!」

ナミのあまりの剣幕にルフィは反論できない。

「ナミ、いいのよ。またやってあげるから…」

「でも今日のはいつもよりすごく時間かかってたじゃない!」

興奮し肩で息をするナミは目に涙を浮かべ、一人ずかずかと部屋を出て行ってしまった。

「…今のはルフィが悪いぞ。」

「相当気に入ってたみたいね。」


しんと静まり返ったダイニングに、ウソップとロビンの声が虚しく響いた。



「…ナミ。」

女部屋に入ると、一人ドレッサーの鏡の前で髪を触るナミの姿が目に入った。

「ごめんねなぎさ、せっかく綺麗にしてくれたのに…」

「いいのよ。どーせ解くものなんだから。」

「…私ね、見ての通り癖毛で、髪を伸ばし始めてからはなんだか収集がつかなくなって、潮風でボロボロだし、いつしか髪の毛を気にすることもなくなったの。だけどなぎさに出会って、やっと自分の髪が好きになった。髪型を変えて気分も変わるなんて私、知らなかったわ。」

ぼそぼそと話すナミの表情は、とても悲しそうだった。

「今回の髪型、とても気に入ってたの。なのに…」

「そんな顔しないで。ナミの言う通り、髪型が変われば気分も変わるんだから。」

なぎさは一度結んだナミの髪を解き手際よくもう一度結んでいく。三つに編んだ髪はウェーブがかかっていて、そのままハーフアップをしてくるりんぱ。なぎさの世界で流行っていた髪型をもう少し変えて豪華に。そして再び花を所々に飾る。
「はい」と言って鏡で見せると、先ほどまで曇っていたナミの表情がぱぁっと明るくなった。

「あの髪型は確かにちょっと時間がかかるからまたいつかやってあげる。ショッピング、行くんでしょ?」

「…ありがとう、なぎさ大好き!」



-fin-

(だって女の子だもん)

(あんたは荷物持ちよ、ルフィ)






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