運と命の展開図 | ナノ

14


しばらく待っていると、ドドドドと地響きのような音が聞こえてきた。
なぎさは自分を運んでくれたカルガモに安全な場所にいるよう促し、ビビの隣に立った。(カルーは頑なにビビから離れようとしなかった。)
遠くから反乱軍たちがラクダに乗って、まるで荒れた海の高い波のように押し寄せてくるのが見えた。

「止まりなさい!!反乱軍!!!」

ビビが両手を広げ反乱軍にそう叫ぶものの、ラクダの足音と彼らの雄叫びでかき消される。何度も反乱軍に語り掛けるビビの努力も虚しく反乱軍は徐々に近づいてくる。

「ソノ―ラス!〈響け!〉」

ビビの喉に杖を向けなぎさが呪文を唱えると、ビビの声が先ほどよりも砂漠に大きく響いた。

「止まってみんな!!」

なぎさも自身の喉に呪文をかけて叫ぶも、怒りに狂った反乱軍たちの耳には届かない。

「なんで…!?こんなに大きな声、聞こえないはずがないのに!」

「怒りで周りが見えてないんだわ…!」

なぎさたちの目の前で突然何かが爆発した。砲弾でも撃ち込まれたのだろうか。
砂ぼこりに視界は遮られ反乱軍は見えなくなる。

なぎさたちはそのまま反乱軍の隊列に飲みこまれた。




足音がどんどん遠ざかっていく。目を開けると、互いを守るために抱き合ったビビとなぎさの上に、何かが覆いかぶさっていた。

「「カルー…!!」」

「私たちをかばってくれたんだ…!」

何度もカルーに謝るビビ。反乱を止められなかったことへの謝罪なのか、自分をかばってくれたことに対するものなのか。

「だけど、止めるわ…何度跳ね返されたって…。船でちゃんと学んだのよ!諦めの悪さなら…!!」

「…ビビ…!」


遠くからまた動物の足音が聞こえてきた。馬に乗ってこちらへやって来たのは、先にアルバーナへ向かったはずのウソップだった。

「まだ間に合う!早く乗れ!」

「ええ…でも…カルー…」

「その鳥はもうだめだ!早く乗れ!」

「「!?」」

ウソップの発した「その鳥」という単語に二人は顔を見合わせる。
なぎさ達の知るウソップはカルーのこと「鳥」などと言うだろうか?

「…ウソップさん、証明して。」

「おい、おれを疑うのか?ほら!」

そう言って左腕の包帯を見せるウソップ。しかし約束ではその包帯の下のバツ印を見せることになっているはずだ。

「スぺシアリスレベリオ!〈化けの皮剥がれよ!〉」

ウソップに向けなぎさが呪文を唱えると、ポン、という音と共に彼の顔がMr.2へと変わった。


「あーあ、なーんでバレたのかしらねぇ?完璧だと思ったのに…」

なぎさが、魔法が悪魔の実の能力にも効果があることに驚いていると、背後からまた別の足音が聞こえてきた。

「クエーッ!」

気絶したカルーとは別の鳴き声に振り向くと、なぎさが乗ってきたカルガモがこちらへ突進してきた。仲間の声を聞きつけたカルーも目を覚まし、ビビとなぎさは2匹に乗ってアルバーナへ向かった。
その後ろをMr.2が追いかけてくる。
カルガモたちの健闘でアルバーナへと降り立ったものの、そこではすでに内戦が始まっていた。

反乱を止めるため戦火の中を進む二人。
なんとか抜けられたかと思えば、流れ弾を食らったらしいカルーがバランスを崩し、ビビも地面に叩きつけられた。

「ビビ!カルー!」

動けなくなったカルーに近付けば、ビビに「行け」とでも言うようにカルーは鳴き続けた。

「…ビビ、行って!」

なぎさはカルガモから降りながらビビに言う。

「でも、なぎささんは…!!」

「私じゃ反乱は止められない!カルーは私がなんとかするから!早く行って!」

なぎさは自分が乗っていたカルガモにビビを乗せ、ものすごい勢いで迫るMr.2に杖を向けた。

「ステューピファイ!〈麻痺せよ!〉」

杖から赤い光線が飛び出しMr.2に直撃する。
数十メートル後ろに吹き飛ばされたMr.2は再びフラフラと立ち上がる。

「バカにしてんじゃないわ、よぉおう!!」

彼の蹴りはなぎさの腹に直撃し今度はなぎさが吹き飛ばされる。
もちろん蹴られたことなどないなぎさはあまりの衝撃と痛みで立ち上がることができず口から言葉にもならないうめき声が漏れた。

「なぎささん!!」

自分の名前を呼ぶビビの声が遠くに聞こえ、焦点の定まらない視界にMr.2の影が映る。
また蹴られる。
腹にぐっと力を入れ目を閉じる。
どん、という音がしたものの、なぎさが痛みを感じることはなかった。
目を開けると、目の前に2匹のカルガモが立っている。なぎさや乗ってきたカルガモやカルーとはまた別のカルガモだ。彼らがすんでのところでMr.2を吹き飛ばしたようだった。

「反乱はまだ止まるんだろ?ビビちゃん。」

「サンジさん!」

「サンジ…!」

「もう大丈夫だなぎさちゃん、君は勇敢だ。」

なぎさは差し伸べられたサンジの手を借りなんとか立ち上がった。

「よくやったなカルー隊長、男だぜ。…そのオカマ、おれが引き受けた。」

「ありがとうサンジ…ビビ…行って…カルーは大丈夫だから…!」


ビビは大きくうなずくと踵を返し走り出した。なぎさはカルーが立ち上がるのを手伝い、2匹のカルガモたちと共にサンジとMr.2から離れた場所へと移動した。




×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -