FF夢


 3-04






とっても心優しいおばさんにつれてこられた一軒の家。
そこにはおばさんの旦那さんがいて、この人も私を快く受け入れてくれた。

二階建てになっていて、上の階を使うと良いと言われたので梯子を上り、ロフト状になっている部屋に上がる。


綺麗に掃除されたその部屋は、長い間使われていないような雰囲気だった。
ベッドに飛び込み、仰向けに寝転がって深呼吸すると、どこか懐かしいような匂いで胸が満たされる。
何故かほっとしてしまい、思わずじんわりと涙が浮かぶ。

なんだかよくわからないが、安心することは確かなのでそのまま目を閉じる。
が、下の階から私を呼ぶ声がしたので、飛び起きて顔を出す。


「奈々ちゃん、おなかすいたでしょう?一緒にご飯たべましょう」
「はいっ!」


おばさんの作ってくれたご飯はとってもあたたかくて、少し独特な味で
家庭料理って感じだなぁ、としみじみ思えるような味だった。

久々に談笑交じりの晩御飯を堪能した後は、例のほっとする匂いのベッドで眠りこけた。




***




 [ν]εγλ‐0007年 03月23日 天気・晴れ

 ゴンガガ出発の日!
 昨日はユフィに会ったり宿屋が閉まっていたりで、なんだか疲れる日でした。
 でもおばさんとおじさんが優しかったのと、ご飯が美味しかったのが幸せ・・・
 久しぶりにいい夢見た気がします。





日が昇り、朝ご飯まで頂いてしまった後、私は夫妻の家の入り口前に立っていた。
目の前には例の夫婦がにこやかに立っている。


「本当に助かりました。ありがとうございます」
「いいのよ。奈々ちゃんはこれからどこへ行くの?」
「んー・・・とりあえずぐるっと大陸一周ですかね!」

まぁ、嘘は言っていない。
そう言うと、おばさんとおじさんは顔を見合わせて申し訳なさそうな顔をした。


「奈々ちゃん、ミッドガルには行くかい?」
「えっと、多分そう遠くない時期に行くとは思います」
「あのね・・・ミッドガルに着いて、もし覚えていたらでいいんだけれど・・・私たちの息子に手紙を届けてほしいの」

おばさんは懐から薄緑色の封筒を取り出した。
少しシワの寄った封筒に、宛名の部分には"息子へ"と書いてある。
一宿一飯の恩があるんだし、手紙の配達くらいなら・・・と思いそれを受け取る。


「わかりました。できる限り探してみます」

にっこり笑ってから、封筒がグシャグシャにならないよう日記帳に挟み込む。
おじさんとおばさんは心底嬉しそうに笑顔を浮かべた。

「ありがとう・・・多分、神羅カンパニーで働いていると思うんだけれど・・・」
「黒い髪の毛で、ツンツンしたヘアスタイルにしてたな」
「そうそう。・・・ごめんなさいね、もう何年も会っていないから、あの子が今どんな格好なのかも良くわからないの」


この会話で、私のテンションは一気に急上昇した。

そっか、彼のあたたかくてお人よしな所はご両親にそっくりなんだ。
昨日、僅かに香ったベッドの匂いがやけに優しく感じたのも納得がいく。ずっと隣にあった空気だから、だ。



「息子さん・・・もしかして、名前は、ザックス?」

つぶやくように言った私の言葉を、二人はしっかりキャッチしていたようだった。
目を開いて驚くおじさんとおばさん。否、フェア夫妻。

「知っているのかい?」
「はい、なんていうか・・・友達です」

形容し難い、私とザックス。
まさかこのほんわか夫婦の前で「運命共同体です、キリッ」なんて言う気にもなれず。
当たり障りない返答だったが、この二人を喜ばせるには十分だったようだ。

「あの子は、今元気かい?」
「元気ですよ。無事にソルジャーになって、身長と同じくらいの大きい剣をブン回してます。ついこの間会ったばかりですから、無事にやってますよ」

物語の流れから無理やり引きずり出した彼が、これからどんな運命を辿るのかはわからないが、私は彼を精一杯守るだけだ。
いつの間にか、ザックスは私の生きがいのようなものになっていた。


両の頬を上気させて笑うフェア夫妻は、私の手を掴んでぎゅっと握った。

「縁って不思議。面倒をかけてしまうけれど、おねがいね」
「必ず届けますよ。まかせてください!」

今度は曖昧な返事じゃなくて、ハッキリ必ず届けると言える。さて、一刻も早く出発しなくちゃ。


「今度会って手紙渡したら、少しは連絡してあげなさいって尻でも引っ叩いときますね」
「ふふふ、よろしくね、奈々ちゃん」
「脳天どついてもかまわんよ!」

朗らかな夫婦の笑顔を背中に受けながら、私は村の入り口まで歩き出した。




***




村の外れまで歩き、そろそろささみを呼ぶかな、と息を吸った瞬間、背後でジャリッという砂を踏みしめる音が鳴る。

ユフィかな?と振り返ってみると、そこには意外な人物がしたり顔で立っていた。


「よお、そこの道行くおねーさん。あんたどっかで見た事あるぞ、と」

太陽に透ける赤毛、油断無く光る薄青の瞳、目の下のフェイスペイント、着崩されたタークススーツ。
できる限り会いたくなかった彼が、そこに居た。

「あらら勘違いじゃありません?それじゃあ私はこれで・・・」
「おいおい、それで済むと思うか?」

そそくさ逃げようとすると、がっしり掴まれる腕。
まぁ、そう簡単には行きませんよね。はい。

「・・・思いません」
「元気そうじゃねえか、奈々。」

口角を吊り上げてニヤリと笑うその顔は、相変わらず憎いほどに整っていた。







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