FF夢


 2-12





朝、銀世界が陽の光によって煌めく中。
私とザックスとクラウド、クジャ、ささみはアイシクルエリアに入った。


到着自体は昨日の夜だったのだが、おじさんがこちらに一泊して帰るそうで、一晩だけ船で眠らせてもらったのだ。
お陰でいつもよりスッキリ目覚める事が出来た。


私たちは、おじさんに手を振ってアイシクルエリアを進む。
まずはボーンビレッジに向かって補給と休憩をしなければ。

久々の朝日を浴びながら深呼吸をすると、冷たい空気が肺を満たす。
同時に、あの鼻がツンとする感覚も一緒に来る。
懐かしいその感覚に、すこし嬉しさを感じてしまう。
日本には四季があったから、寒い環境も当たり前のうちだったが、こちらではエリア移動しなければ、大した季節の変動はない。
思いがけずそれを思い知らされた。



「それにしても・・・」
「ん?」

「さっむい!ものすごく寒い!!」

昨日の晩におじさんが言っていた通り、ボーンビレッジよりも南側にも関わらず
ここには20cmほどの雪が積もっていた。

積もった雪は、大したこと無さそうに見えて私の足をブーツ越しに冷やす。防水性なのに。
インナー、ロングTシャツ、トレーナー、カーディガン、ダウンジャケットにマフラー、手袋代わりのグローブ、といった冬の装備品をもってしてもこの地域の寒さは凌げないらしい。
もしくは私が寒がりになっただけかもしれない。
そういえば、こっちに来て初めての冬だもんなぁ・・・と約一年ぶりの冬を噛みしめる。

カイロと耳当てが恋しい・・・という私の呟きをよそに、ザックスはいつもの格好で平然と辺りを見回していた。

「辺り一面雪景色か・・・こういう景色も久しぶりだな。」
「何余裕な顔してんの!?ノースリーブだよザックス!」

グローブ越しに手を擦り合わせるが、一向に暖かくなる様子はない。
ザックスはやはり平気なようで、鼻が少し赤くなっている程度だった。

「俺とクラウド、前にこういう場所に来た事あるんだよ。モデオヘイムって知ってるか?」
「アイシクルロッジ付近の渓谷にある場所でしょ?確か廃村があるっていう」
「流石に良く知ってんな」

そういえば、クライシスコアでモデオヘイムに来る任務もあった。
ザックスはいつも通りのノースリーブだし、ツォンさんも普段と変わらずスーツ姿。
クラウド含む一般兵だって、明らかに素材がペラペラな半袖軍服だった。

言ってしまえば、本編でのティファやユフィ、バレットがアイシクルエリアに来た時も普段の姿だったが・・・
ゲーム上の、容量節約のためのポリゴン使い回し、というワケではないのかもしれない。
ティファ達とここへ来る時は、無理矢理にでも事前に上着を着せよう。と胸に誓った。


「モデオヘイムね・・・反神羅組織が溜まり場にするって有名だよ」
「誰も寄り付かないしな・・・あそこに身を隠せたらいいんだけどな」
「廃村だからねー。食料も住居もないし、無理じゃない?」
「俺もそう思う。非常時の逃げ場って事にしとこうぜ」
「了解、覚えとく」

ワールドマップが無いクライシスコアでの出来事なので、詳しい場所は知らないが
アイシクルロッジで地図でも買えばわかるでしょ、と適当に流す。

とりあえず凍死しないうちにボーンビレッジに到着したいので
私たちは足を速めることに集中した。


ちなみに、クラウドはクジャの背中で揺られながら毛布に包まっています。




***




船が停泊した場所は、かなりボーンビレッジ寄りだったようで、急ぎ足で進んでいると1時間もしないうちに村が見えて来た。

村の中も雪の被害を受けたようで、巨大な骨のテントの上が真っ白になっていた。
化石の発掘員が、今日はスコップで雪かきをしている。
いつもなら土を掘っている頃なのに・・・というぼやきが、私の耳に入ってきた。


「へぇ・・・化石の発掘場か!」

心なしかわくわくしたような表情で、ザックスがあたりを見回している。

「なんかザックス、楽しそうだね」
「そりゃ、化石発掘とかロボットとかロケットとか、ちっせえ頃からのロマンじゃねーか」
「そう言われても・・・男の子の気持ちを味わった事、ないからなぁ」

確かに、言われてみれば小学校くらいの時にクラスの男の子が、四角い塊の中から小さい化石を発掘するキットを自慢げに持っていたような気もする。
理科の授業だったかな・・・と記憶を辿るが、あまり興味のない事は覚えていない。
多分みんな好きなんだろうな、と勝手に結論付けて思考を元に戻した。

「とりあえず、多分ここにも宿泊施設があるはずだから・・・」
「十中八九あのでっけえ化石のテントだろーな」
「行ってみよ!」
「おう」








案の上、大きなテントの中は簡易宿泊施設になっていて、私達を快く受け入れてくれた。勿論ギルはかかるが。

クジャとささみは雪国の感触が楽しいのか、村の外を走り回っているようだ。
3つ並んだベッドの一つを占領して、早々に布団へ潜り込む。
入った瞬間こそヒヤリとしたが、だんだん温まってくる体温にほっとする。


「なんだよ、もう寝てんのか?」
「ん?温まってるだけだよ。でもこのまま寝ちゃいたい」
「確かにな」

立ったまま話をしていたザックスがこちらに歩み寄り、私のベッドに腰かける。

「この先にさ、眠りの森ってのがあるらしいんだけどよ」
「うん?」

突然な話題でビックリしたが、これから通る道筋の話らしい。
眠りの森、ルナハープが無いと通れない場所だ。

「何とかっていうアイテムで森を目覚めさせないと、そこ通れないらしいんだよな」
「あー・・・ルナハープ?」
「そう、それだ。やっぱ知ってたか」

流石だな、と笑うザックスはそのまま話を続けた。

「さっきここの人に聞いたらさ、今日の朝早くに通った人がいたみたいで、今日の夜中までなら普通に通れるって言ってたぜ」
「ほんと?」
「ああ。だから夕方くらいまで寝ておいて、それから出発するか」


身体が温まってきた頃に、ザックスの魅力的な提案。
これはもう二度寝するほかに選択肢はないねー、と脳内で呟き彼の言葉に全面的に賛成した。

おそらく夜のアイシクルエリアはとても寒いけど、万一の時は忘らるる都の民家で休憩すればいい。
多分何かあろうが無かろうが、あの場所で休憩はするだろうな、と計画を立てる。

ザックスも隣のベッドにもぐり込み、大きな欠伸をしていた。
街や村に滞在するとき以外は野宿続きの生活だ。ベッドの上での睡眠はいくらあっても足りない。

自然に重たくなる瞼に逆らう事無く、まどろみの中に意識を落とした。








previndexnext