※盗賊王 ゾーク復活の後の話。 
     幸せ色濃そうな感じ





真っ白な世界。
何もなく、目の前にはひたすらに白が広がっていた。
いつかの夢の中でこんな景色を
見た気がしたけどあまり覚えていなかった。
いや、もしかしたら覚えていたくなかったのかもしれない。
すると何かにズルリと後ろへ引かれた。
さっきまで無かったのに、そこには一面の黒。
自分はそれが何なのか知っている。
闇から伸びた手がソコへ
無理矢理引きずり込もうと腕に足に腹に絡み付いてくる。
抵抗はしない。
それで助かったところで、自分の居場所なんてもう無いのだ。
だったら、闇にのまれたってさほど変わりないことだろう。
ズブズブと暗闇に埋まっていきながらそう思い目を閉じた。

その時、顔のすぐ横を風が切った。

矢が放たれたのだ。
矢は闇へ命中し、絡みついた手もろとも吹き飛ばした。
閉じた目をゆっくり開けると目の前には弓を構えた幼い自分の姿。
状況がなかなか飲み込めずにいると小さい自分が口を開いた。

『ああ、君はやっとここへ戻ってきたんだ』

「戻ってきた......?そりゃどういうことだ」

『知っているはずだよ。何度も何度も見てきたじゃあないか』

頭の中でフラッシュバックした。
幼い自分が眩しくて目を覆ってしまうあの夢が。

『もう君は僕から目を背けないんだね。じゃあ』

後ろを、見てごらん。彼が指を指した。
そう言われてゆっくりと振り向いた瞬間、
ガラスのような花びらが空中いっぱいに舞い上がった。

「あ......」

そこにいたのは、殺されてしまったクルエルナの人々。
父も母も弟妹も友達も自分によくしてくれた隣の兄さんも。
みんなみんな理不尽に殺されてしまったのに。
それでも、穏やかに笑っていた。

『帰る場所がないなんて、悲しいことは言わないでよ』

小さな手に引かれて踏み出す。前へ前へ。速度を上げる。
フワリ、といつのまにか彼の手が消えていた。
高く広がった青空は今まで見てきたどんな財宝よりも美しくて、
その青い色彩が目に沁みるぐらいだ。

「ただいま」



おかえりなさい。





遠い夢の先へ辿り着いた盗賊の話。



きっと、すくい上げられた

2013/08/05

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