救いの祈り
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もうきみしかみえない
スイートポテトが焼き上がったのでオーブンから取り出す。
叔父夫婦が最新の設備を整えてくれた為、うちの喫茶店は厨房の設備が整っている。
その分店内は広くはないが、一人で回すことを考えればちょうどいい。
ちりん、
『いらっしゃいませ。お好きな席へどうぞ、煉獄様。』
華族として鍛え上げられた優雅で気品ある微笑みで煉獄様を出迎える。
「ほぅ、ここが君の店か!落ち着いた雰囲気で実に良い!」
私の顔を見て一つ瞬くと、煉獄様はカウンターの席についた。
『煉獄様、お越しいただいてうれしいですわ。お腹が空いていらっしゃるのでしょう?オムレツライスやビフテキ、カツレツのご用意もできますわ。』
つい、とメニュー表を渡す。
「これは色とりどりで見やすいな!」
煉獄様が感心したようにメニュー表に目を滑らせる。
メニュー表には写真があった方が分かりやすいが、この時代の写真は白黒だ。
しかも流石にメニュー表に使うには経費がかかるので手描きのイラストを添えたのだ。
少し悩むそぶりを見せた煉獄様は、店主のススメと書かれた欄に目を向けた。
「このどりあ、というのは…」
『ドリアですね!(この時代にはまだなかったのかしら?)こちらはご飯の上にホワイトソースとチーズをかけて焼いたものです。』
「ほわいとそおす、いうのは…?」
『牛乳に味付けをしてとろみをつけたたれのようなものですね、馴染みのあるものでいえば牛乳粥が近いでしょうか…?』
「ふむ…それではこのどりあとオムレツライスを大盛りで頼もう!」
『はい、ではお待ちくださいませ』
まずはドリア。あらかじめ仕込みをしていた具材をさっと炒めホワイトソースと合わせる。
ご飯をよそった器の上にそれをかけると、刻んであるチーズをたっぷり乗せる。
既に火がついているオーブンに入れて後は焼き上がるまで待つだけだ。
つぎにオムレツライス…オムライスを作る。
自家製のケチャップを火にかけ、軽く酸味を飛ばす。
具材と調味料を入れてねっとりするまで炒めたらご飯を投入、しっかりと味がつくまで炒める。
型取りのための器に入れ先にライスをトッピングするとすぐに卵をわり砂糖と牛乳を入れ良く混ぜる。
フライパンに多めのバターを溶かし火力を上げると卵を一気に流し入れる。
クルクルとかき混ぜて端に寄せると、フライパンを傾けて持ち手をトントンと叩きながらオムレツを作る。
ちょうど良い固さになったら先程のケチャップライスの上に乗せる。
卵を割った時の感動を味わって欲しいのでケチャップはあと乗せできるように別の器にもる。
『失礼します、オムレツライスです。たまごをナイフで割ってからソースをかけてお召し上がりください。』
「ほぉ、これは美味そうだな!いただきます!!
これは!…うまい!うまい!うまい!!」
ナイフを入れると途端にケチャップライスに広がるとろけた卵。
「君はすごい!うまい!!」
一心不乱に食べ進める煉獄様にくすりと笑みをこぼす。
そんな私を見て煉獄様は大きな瞳をパチリとさせた。
そしてそのままオムレツライスを食べ終えると、ちょうど良くドリアの焼き上がったので木の台に乗せてお出しする。
『器も大変お熱いのでお気をつけくださいませ。』