「名前、今日凄いやる気だね」
『終わったら雲雀さんの家に咬み殺されに行くの!』
「自分から!?え、大丈夫なの!?」
『うん!初めて雲雀さんからお誘い貰ったから嬉しい!精一杯お祝いしてくる!』
「あ、そっか今日ヒバリさんの誕生日…。気を付けて楽しんできてね」
『ありがとう』
バイトを終えてツナ達と別れると、自分の家に帰り早速準備を始める。
あまり早くにお邪魔しても迷惑かと思い、せめてお昼になるまで待とうとしていたら、何やらバイクが近付いては家の前に止まる音がした。
誰か来た…?と窓から覗けば、ちょうどヘルメットを外してこちらを見上げていたのは雲雀。
『…!?雲雀さん!?』
「なかなか来ないから迎えに来たんだよ。早く準備して」
『す、すぐ出ます!』
いつも近付くのは彼女からだったはずなのに、いつしか雲雀から近付くことが多くなっていた。周りから見れば分かりやす過ぎる特別扱いだが、当の本人達だけ気付いていないのが厄介だ。
雲雀から来てくれて嬉しそうに荷物を持って玄関を出る。
すると、ひょい、とその荷物を奪われ座席の下へしまうと、彼女の頭にヘルメットを被せた。
「…乗りなよ」
『雲雀さんの愛車…私が乗ってもいいんですか?』
「ん…早く乗らないと置いてくよ」
『乗ります!つ、掴まっていいですか…?』
「…好きにしなよ」
雲雀の後ろに乗り遠慮がちに腰に手を回すと、彼女の手を掴んで引き寄せ、背中にぴったりとくっつかせる。
驚いて固まる彼女を余所にバイクを走らせ、あっという間に家に連れ帰った。
「入りなよ」
『お、お邪魔します…』
何度見ても慣れない豪邸に尻込みしながら、導かれるまま和室へ。
彼女の荷物が気になって仕方ないのか、雲雀は早くも問い掛けた。
「その荷物は何?」
雲雀相手にいつまでも隠し通すのは無理だと悟り、早々に白状することに。
『今日、雲雀さんのお誕生日ですよね。なのでそのプレゼントです!お誕生日おめでとうございます!』
本当に忘れていたのか目をぱちぱちとさせながら素直に受け取る雲雀。
ありがとう、と小さく呟いては、彼女の様子を伺いながらプレゼントの封を開ける。
黒のシンプルなマグカップかと思えば、取っ手にヒバードのような鳥とロールのようなハリネズミの飾りがバランスよく付いた、男性が使うには少々可愛過ぎるデザイン。
まさか雲雀が特に可愛がっている小動物がどちらもモチーフになっているものがちょうどあるとは思わず、即座に買ったもの。
完全に自己満足だが恐る恐る雲雀の反応を見れば、マグカップを見つめながら嬉しそうに微笑んでいた。今まで見たことがない程に優しい笑みに、彼女の心臓がまたバクバクと騒ぎ出す。
「へぇ…良いセンスしてるね」
『っ…気に入って貰えて、よかったです…』
「…?」
ぽーっと見惚れている様子の彼女に首を傾げながら、余程気に入ったのか再びマグカップを眺めていた。
へぇ…良いセンスしてるね