いつものように昼休みを告げるチャイムがなる。
さほど親しい友達がいるわけでもない私は
唯一安心する場所である図書室へと足を向けていた。


今日は一段と風が強い。
窓はしまっているのに風の吹く音が大きく聞こえる。

図書室は残念ながら別の棟にあるため
渡り廊下を通らなければならない。
要するに外にでなければならないということでもある。

「さむっ・・・」

予想通りの寒さで、いつもは走らないけど
今日だけは渡り廊下を走った(学級委員でごめんね)
でも更に私はついていないらしい。

「・・・あれ?」

前を見ていなかったのが悪かったのか
それとも私がここに来たのが悪かったのか
いつもは開いている鍵が閉まっている。
これでは向こうの棟へ入れないじゃないかこの野郎
なんて思っているとその棟の階段から
人がのぼってくるのが見えた

寒さのあまりにドンドンとドアを
窓が割れない程度に叩くと
その男子生徒は気付いてくれたようですぐに
鍵を開けてくれた。

「大丈夫ですか?」
「ありがとう」
「いえ、風が強い日は面倒かもしれませんが
 下の渡り廊下を通ってきた方が良いですよ」
「知らなかった・・・」
「これは柳くんから聞いた話です」

“柳くん”その名前をきいてどくんと
心臓が動いたのは気のせいではない。
私は密かに彼の事を想っている。
でも彼が私の気持ちに気付いているはずもない
なんでかって言うまでもなく接点が
まったくといって無いに等しいからだ。

唯一言えるのであれば柳くんと話が
少しでもしたいと夢をみてしまう私は
競争率のはげしい学級委員長というある一種の戦いに
勝ったので今学期からはいつもより
少しは彼に近くなったかなと思う。

本当に少しだけど。