*七瀬time
[優]
バイトを終えて家に帰るとリビングの部屋の電気がついていた。
リビングに近づくにつれていい匂いがしてくる。
「こんな時間にご飯?珍しいね。」
『ゲームしてたら食べるの忘れてた。』
「またゲーム?昨日も夜中までやって寝不足って言ってなかった?」
『今週末はゲームをするって決めてんねん。』
「ふーん。体壊さない程度にね?」
『もう寝るん?』
「なんで?」
話し相手になってよと言われてなぁちゃんの正面に座る。
美味しそうにご飯を食べるなぁちゃんを写真におさめる。
すると勝手に撮らんといてと怒られた。
『優もゲームする?』
「しない。」
『明日休みやろ?』
「寝る。」
『すぐ寝るやん。』
「最近寝不足なんだもん。」
『遊びすぎや。知ってんで?朝帰りばっかしてんの。』
「朝帰りしたの昨日だけじゃん。」
『やらしいわあ。』
そう言って笑っているなぁちゃん。
そんな笑顔をみてだいぶ打ち解けたなあと嬉しかったりもする。
『大学慣れた?』
「んー、そこそこ。」
『授業寝てないやろなあ?』
「たまにしか寝てない。」
『ふふっ 寝てるやん。』
「単位落とさなきゃいんだよ。」
『ご飯どうしてるん?』
「だいたい食堂で食べてる。」
そう返事した後、そういえば3人はちゃんと自炊してるなあと思い出す。
まあ料理ができない私にはやる気にすらならないわけで。
たまにおにぎりを持っていくくらいだ。
『何回か食堂で見かけたけど、いっつもカレー食べてるよな?』
「食堂のカレー食べた事ある?美味しくない?」
『普通やな。』
「あと、唐揚げ定食が美味しい。」
『唐揚げよく買ってきてるよな?好きなん?』
「好き。」
『ふーん。』
自分から聞いたくせに、興味のない返事をされる。
唐揚げなんてだいたいみんな好きでしょ。
ご飯を食べ終えたなぁちゃんはアイスを持ってきてくれて食べ始めた。
そんななぁちゃんを見て私も自分のアイスを開ける。
『チョコも食べたい。』
「ん。」
『ありがと。』
「それ何?抹茶?」
『うん。食べる?』
「いらない。抹茶嫌い。」
『好き嫌いすんなやー。これ、ほんま美味しいねんて。一口食べて。』
一口もらったけど、やっぱり抹茶は苦手でチョコ味ですぐにかき消す。
するとその様子を見ていたなぁちゃんは楽しそうに笑っていて、意外と意地悪なところもあるんだと新たな一面を見せてくれた。
「じゃ、部屋戻るねー。」
『なんで?』
「なぁちゃんご飯食べ終わったじゃん。」
『ななとおるの嫌なん?』
「嫌じゃないけど…」
ポンポンと隣を叩いて座れとジェスチャーするなぁちゃん。
するとテレビをつけて昨日やっていた怖い番組を見始めた。
『一緒に見よー。』
「待って、これ見るなら先にお風呂入ってくる。」
『しゃーないなぁ。早く出てきてな?』
急いでお風呂に入り、リビングに戻るとソファで寝ていたなぁちゃん。
寝不足って言ってたもんなあ。
風邪引かないように部屋から持ってきたタオルケットをかけてあげて、リビングの電気とテレビを消して自分の部屋へ。
しばらくすると、コンコンとノックする音がしたから扉を開けるとリビングで寝ていたはずのなぁちゃんがいた。
「起きたんだ。」
『起こしてくれればよかったのに。』
「寝不足なんだから寝た方がいいよ。」
『入っていい?』
「いいけど…もう寝るよ?」
『一緒に寝るー。』
「ベッド狭いから自分の部屋で寝なよー。」
『じゃあななの部屋行こ。』
そう言って勝手に部屋の電気を消されてなぁちゃんの部屋に引っ張られる。
部屋の電気をつけてもらえず手を引かれるがままにベッドへたどり着く。
なぁちゃんはきっと壁側にいるだろうけど、一応手探りで確認して手前に寝転ぶ。
この家に来て1人で寝ることが減った。
一緒に寝ようと言われて断る理由もないし、朝起きて目の前に可愛い子がいるのも悪くない。
そんな事を考えていると背中にピタッとくっついてきたなぁちゃん。
「落ちるー。」
『1ミリも動いてへんやん。』
「なぁちゃんがそこにいると寝返り打てない。つぶれちゃう。」
『くっつきたい気分なんやもん。』
「あのさ、他の2人とも一緒に寝たりするの?」
『んー。たまに?』
「ふーん。」
『なんでそんな事聞くん?』
「なんとなく。」
『1番多いのは優やで。なんか落ち着くねん。』
そう言って服をギュッと握るなぁちゃん。
可愛い子がこんな仕草をしてこんな事を言うなんてずるい。
男だったらイチコロだろう。
『今、照れたやろ。』
「照れてない。」
『絶対照れた。』
「…おやすみ。」
『やっぱ照れてるやん。可愛い!』
「早く寝て。」
『ふふっ おやすみー。』
「おやすみ。」
なぁちゃんのせいで少し上がった体温。
きっとこれからもこんな事は何度もあるだろう。
動揺せずに寝れるようになるまでしばらくかかりそうだ。
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