あたしはかんなぁーッり怨まれている。世界中とはいかないまでも大体の人に怨まれている。
喧嘩誘発屋なんてやってたら怨まれちゃうのも無理ないよねー。
だけどあたしが今日まで生きていけた理由は、“その恨むべき《喧嘩誘発屋》だから”であった。
あたしは怨まれている。
かんなぁーッり、怨まれている。
でも。
あたしは便利だ。
うわあ、なんか字面がエグい。都合のいい女みたいだ。なんかヤだなあ……。……いや、そうじゃないそうじゃない。
とにかく。
あたしは便利だ。
世界中に怨まれているけれど、世界一怨まれているだろうけれど、あたしは喧嘩誘発屋。こんな仕事が成り立っているということは、こんなに怨まれているということは、イコールで“依頼人及びリピーターがいる”ということを意味するのだ。
あたしを殺せば、もう喧嘩を誘発出来なくなる。
世界には、理性を先行させてくれるブレーンさんばかりなので、あたしはまだ殺されずに世に蔓延っている。

憎まれっ子、世に憚る。

なーんてね。

で。そんなあたしを。
喧嘩誘発屋のあたしを。


「殺すんだねーぇ、ふーん」
「何暢気なこと言ってんすか騒禍さん…………」


夜。
ラヴィには、自室で晩餐をしたいと言い、ご飯を部屋に持って来させた。
隠れて三月を部屋にあげてるとはいえ、流石に無食を強いるほどあたしは鬼じゃない。三月に食わせるためにあたしの分を分けることにした。
あたし一人では余裕ぶっこいて食べ切らんないだろう量のディナーが、銀食器と共にやってきた。
それを三月と一緒につついているのだが、正直なところあたしは既に満腹だった。スタンダードにか弱い設定なあたしをナメちゃいけないってわけだよ、全く。


「ふゎ………、もしかして騒禍さんって、死んで快感得るタイプっすか……? 只今興奮により絶頂ってヤツっすか……?」
「あはははははっ、アンタってだんだん生意気になってきたよね。あたしがそんなの感じてたら変態でしょうが」
「騒禍さん変態っすか?」
「うわ、浜辺に打ち上げられちゃえばいいのに」
「俺……、もう“クラゲ”じゃないっすよ?」


ふぁわ、と。また三月は眠そうに欠伸をした。一日中眠そうにしている男である。


「一応あたしだって、こんな仕事しときながら大往生で死ねるなんて思ってないからね。……あっ、三月、ナスあげる」
「……嫌いだからって押し付けないで下さいっすよ」
「あたしは多分、先生に宣告されたあの笑えるくらい幸先悪い寿命の前に、誰かに殺されて死ぬんだろうなあ…………一番確率があるとしたら、殺すのは魚くん……、……かな?」


あたしは肩を揺らしながら苦笑した。彼はあたしで最後にするらしいし。彼ならあたしを簡単に殺せそうだ。


×/

「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -