#02 馬鹿は首を吊れ 1/5



 静かにエグラド国土の上空を泳ぐ一艘の飛行船。ごうんごうんと音を立てて泳ぐその舟を見上げる者はいない。不可視の装甲に覆われた《Merkabah》は、今日もただ下界を見守っていた。
 差しこむ陽光に、飛行船の室内が照らされる。真っ白なシーツの色も日焼けたクリーム色に変わり、埃はちりちりと斜光を受けて綺麗に輝いていた。少女が寝返りをうつたびに空気が揺れ、それは鱗粉のように舞う。
 ふとんに埋もれる彼女の片足は、くすぐってくださいと言わんばかりにベッドから投げだされている。漆色の長髪すら散らされていた。
 そのありさまを見たイヴは、寝汚いというほどではないが、もう少し年頃らしくできないのか、と思う。ノックをしても返事がなかったので、ドアを開けてみればこれだったのだ。イヴはため息をついたのち部屋に入り、彼女の肩をふとんごと揺すって、強引に目覚めを促した。
「起きろ、朝だぞ」
「ふん、えぇえ」オズワルドは呻いて、イヴを見上げる。「……おはよう?」
「おはよう」
「ついさっきまで夜だったのに……いつの間に時間が巻き戻ったの?」
「巻き戻ってない、進んだだけだ。いま何時だと思ってるんだ?」
「え、何時?」
「十二時」
「まだ真夜中じゃない」
「俺が間違ってた。起きろ、もう昼だぞ」
 オズワルドがもぞもぞと上体を起こすのを確認してから、イヴは離れていった。ふわりとあくびをするオズワルド。ペパーミントグリーンのさらなパジャマは《Merkabah》の備品だ。ベッドを抜けでたその足で、部屋に備えつけてある洗面台へ、顔を洗いに向かう。
 二人は集団失楽園完遂ののち、騒ぎになった下界から逃げるように、舟の上でこの二週間をすごした。無人の飛行戦艦とはいえ、万が一の備えとして、シャワールームやトイレ、非常食に衣類などの生活必需品は一通り揃っていた。おまけにシングルベットの置かれた客室がいくつも並んであるのだ。そのうちの二つを、イヴとオズワルドはそれぞれの個室とした。おかげで、窮屈な思いをすることも、追手に見つかることもない安全圏で、悠々自適に生活することができた。
 オズワルドは広々とした操縦室に接続した広い船室キャビンへと出た。ダイナー風のテーブルに、深緑の座席が向かい合うように並んである。テーブルは別の部屋にあったのを運んできたものだ。イヴは操縦室に近い席に座り、珈琲コーヒーを飲んでいた。テーブルには別の社の新聞が三部ほど置かれてある。
「オズワルド、見ろ」
「なにを?」
「新聞」
「見たよ」
「読んだか?」
「読んでない」
「じゃあ読め。面白いぞ」
 珍しい笑いかたをするイヴを一瞥して、オズワルドは言われたとおり、一部の新聞を手に取り、黙読していく。発行は“クイーンズ”で、所謂いわゆる、政府からの機関紙だった。オズワルドはその見出しを口に出した。
「早朝に降り注いだ妄言、国民の混乱を煽る愉快犯」
「予想できていたことだが、やはりエグラドは、あれをまともに取り合う気はないらしい。頭のいかれた人間の犯行だと決めつけて、鎮火させようという腹だろう」
「愉快犯? イヴがピエロってこと?」
「まあ、そういうこと」
「えー、なにも面白くないし愉快じゃない。あたしたちせっかくがんばったのに、誰も信じてくれてないってことでしょう?」
「骨折り損のくたびれ儲けというわけでもないさ。まあ、女王政府の圧力を受けやすい高級紙クオリティー・ペーパーは、機関紙と似たような扱いか、そもそも取り扱ってすらいなかったが……一部の大衆タブロイド紙、特に赤新聞と呼ばれる類のものは食いついてくれたぞ」
 イヴはもう一つの新聞をオズワルドへと渡す。
「愉快犯と侮るなかれ、国のありかたに警鐘鳴らす」オズワルドはその見出しを読みあげた。「んま!」
「単に世間を騒ぎたてたいだけだろうが、しくも遠からずだな。元より政府の陰謀説を唱えていた新聞社だ。他の紙もいくつか見てみたが、その新聞社の記事が一番面白かったよ」
「先の懲役罪人“イヴ”に啓発されての犯行か、ですって」オズワルドは首を傾げる。「大丈夫なの? イヴがやったってばれちゃったら、また捕まっちゃうんじゃない?」
「その新聞社も、国家転覆罪を犯したらしい俺の名前を借りたいだけで、大した意味があるわけじゃない。国もそういう新聞社の言うことは真に受けない」
「でも、私たち、一度追いかけられてるわ」
「《Speak of the Evil》に引っかかったとはいえ、あの日、俺たちを追ってきたアンプロワイエは完全に撒けた。闇夜で顔も見られてないはずだ。そして、それ以降、俺たちはずっと空の上。標的が見つからない以上、いまごろやつらも、無銭飲食の客に囚人の名前がたまたま使われた、ぐらいにしか思ってないさ」
 ノドロン城塞監獄のダストシュートを通り、脱獄したイヴとオズワルド。本来、監獄のダストシュートは、囚人のための自殺手段なのだ。それを使用した二人は死者として扱われている。そんな二人の名が世間に上がったところで、それを正確な情報として認識することはありえなかった。
「つまり、俺たちはノーリスクであれだけのことをしでかしてやれたんだよ。真実を受け入れる人間がいなくとも……火のないところに煙は立たないと、訝しむ人間くらいはいるはずだ。読んで字のごとく、火つけ役にはなれたんじゃないか?」
「イヴが?」
「俺たちが」
 オズワルドはにっと白い歯を見せた。
「でも、そういえば、どうして新聞なんてあるの?」
「今朝ちょっと地上に降りた」
「えっ、ずるい。あたしも降りたかった」
「お前は寝てた」
「もう乾いたごはんはたくさん。梨が食べたい」
「我慢しろ」
「我慢したらおいしいものが食べられるの?」
「我慢したらいい子になれる」
「誰にとって?」
「俺にとって」
「お腹すいた」
「悪い子にはなにも恵まない」
 オズワルドはテーブルに突っ伏し、駄々をこねるように体を揺すった。その振動で、テーブルに乗せていた珈琲コーヒーのカップが水面を震わせたので、イヴは「おとなしくしろ」とオズワルドをなだめる。
「もう三日なんにも食べてないよー」
「嘘をつくな。昨日の晩は野菜スープだった。即席インスタントだけど」
「すっごくまずかった。それに、ブロッコリーの茎と玉ねぎの芯しかないほぼ水みたいな代物を、あたしは野菜スープだなんて呼ばないわ」
「歯ごたえのあるものがあっただけマシと思え。そろそろ備蓄の非常食だって底をつく。今日は水しかないかもしれないんだ」
「梨が食べたいな」オズワルドは切なげに言う。「骨みたいなのじゃなくって、ヴィーナスみたいなの」
 イヴとて自分の体の真ん中にある満足できない胃袋を思うと、切ない声の一つも出したくなった。実際、ここ二週間のあいだ、食生活に関してはぎりぎりの状態だった。
 なんなら、この飛行戦艦は年代物なのだ。イヴはなにも言わずにオズワルドと共有しているが、非常食は、とうに賞味期限の切れているものが大半だった。元より味にこだわりのない品だったこともあるだろうが、オズワルドの舌が受けつけないのはそれが原因だろうと、イヴは思っている。思っているが絶対に話さないと決めていた。先の反応を見るに、話せばもっと面倒なことになるだろうと察したからだ。
「イヴはよく平気ね。あんなごはんで」
「裕福じゃなかったから、ああいった食事には慣れている」
「すっごくまずいよ、腐ってるみたい」
 事実腐っている。イヴはその言葉を飲みこんだ。
「もうあんなの食べられない」
「なら、今日からお前の食事はない」
「そんなの死んじゃうわ」
「だったら我慢しろ。そもそも食い扶持がないんだ」
「イヴ、銀貨はいらないんじゃなかった?」
「お前だって、ヴィーナスみたいなのじゃなくて、骨みたいなのでいいんじゃなかったか? それも梨じゃなくて林檎で」
「お腹すいた」
「そうだな」
 イヴとしても、食べ物を買うだけの銭がないのは剣呑だった。生きていれば必ず衣食住の問題がつきまとう。《Merkabah》にいるかぎり、ある程度の衣住は賄えても、食には限界が見えはじめていた。
「……飛行船なかのものを売るか」イヴはぽつんと呟いた。「シーツや毛布などの類はあんなにいらない。いくつかの家具も売っていい」
「いいね」
「となると、問題は荷降ろしだな。ばら撒いた新聞のように、たばにしてごっそり運べるものならともかく、家具を降ろすのは手間がかかる……容易く地上に降ろせるまでこの舟を低空飛行させるのは、さすがに都合が悪い」
「悪いね」
 ううん、と二人は唸った。地上にあるもので、手っ取り早く、なにか売っ払えたり稼げたりするものはないか、と考えを巡らせ、二人はあるものを思い出した。顎に手を添えていたイヴがオズワルドへ目を遣ったのと、テーブルに突っ伏したままだったオズワルドがイヴを見上げたのは、同時のことだった。
「「亜終点」」
 二人の声が重なる。コーラスのようにぴたりと一致した。
 ダストシュートを通り、辿りついたその先。自ら命を絶った囚人の墓場たるあの場所には、白骨の山だけでなく、あらゆるごみ、、が犇めいていた。ごみといっても実用性は損なわれてはいないものばかりだ。現在オズワルドの着ている服も、亜終点で揃えたものである。
「亜終点の小奇麗さを見るに、女王政府やアンプロワイエがあそこを確認することはない。いくらか拝借しても気づかれはしないだろう」
 それからしばらく考えてみても、反対意見は出なかった。イヴが「降りるぞ」と告げると、オズワルドはうさぎのように飛び跳ねながら、服を着替えに行った。空腹に耐えるだけだった今日の予定が決まった瞬間だった。
「……それに、オズワルド、もしかしたら次の仲間が見つかるかもしれない」
「ナマコー?」
 元気のいい声が響いた。それから少しして、とたとたという足音。イヴがそちらへ視線を遣ると、客室廊下へと繋がる船室キャビンのドアから上半身だけ覗くように、オズワルドが現れる。もう緑色のセーターに着替え終えていた。
「ナマコ?」イヴはオズワルドを見る。「食べたいのか」
「人間は食べられないよ?」
「人間を食べる民族も存在する。それにナマコはどう間違っても人間には見えない……」そこまで言って、イヴは理解した。「仲間だな」
 オズワルドの、耳と脳の繋がっていないような、あるいは虫に食い散らかされたかのような発言を瞬時に理解することに、イヴはまだ慣れていなかった。この二週間でかなり耐性がついたとは自負しているが、完全に読み取るにはタイムラグが生じる。
「ナマコも見つけたいわね」イヴが正したにもかかわらず、オズワルドは訂正することなく返した。「イヴも言ったでしょう。あたしたちみたいなひとがナマコなら、きっとうまくやれると思うもの」
 ここまでくると、いっそ清々するものだった。イヴは表情も変えずに「そうだな」と返した。
 イヴがもたれていた壁から背を離して「行くか」とオズワルドに歩み寄ろうとすると、「待って」と片手を突き出された。イヴは一度静止する。オズワルドは「まだスカートを穿いてないのよ」と告げた。これにはイヴも苦笑を浮かべるしかなかった。オズワルドは足音を鳴らして引っこむ。イヴは肩を竦めたあと、また壁に寄りかかった。
 二人が舟から地上へと降りたったのは、十分後のことだった。
 運よく周回していたのは首都・ノドロンの上空で、亜終点に繋がっていたマンホールの位置からも近い場所だった。街を歩くと、スチームの抜ける音やエンジンの脈動が、腸に響くようになる。二気筒のリズミカルな重低音が滑らかに地を這い、金光りする車の轍の上では淡いヴェールが尾を引く。豪華な革張りの椅子がある珈琲コーヒーショップでは、ハットを被った紳士がランチを楽しんでいた。露店では安物の傘の売れ行きがよい。郊外にあるグライダー工場の煙が溶けだしたかのような曇り空に、数刻もすれば雨が降ることが予測された。
 周りに人の気配がないのを確認してから、二人は亜終点へと繋がるマンホールの中へと潜っていく。
 下水道を通り抜け、亜終点の鉄筋階段まで辿りついたとき、二人の目には信じられない光景が広がっていた。
「……ここはどこ?」
「“わたしはだれ”?」
「貴方はイヴ」
「ここは亜終点だな」
「別人みたいね」
「別の場所みたいってことか?」
 亜終点とは、囚人の墓場であり、物の墓場のようでもあった。まるで国中のいらないものだけを寄せ集めたような無機質な空間。ありとあらゆる無用の長物が、まるで城のような棟をいくつも作りあげていた。暗闇の中で築かれたあの雑多なありさまを、イヴはいまでも覚えている。
 しかし、二週間ぶりに訪れた亜終点は、別世界へと様変わりしていた。
 まず驚くのは、電気が通っていることだ。ドーム型の天井に大仰な照明が取りつけられていて、全方位が明るみになっている。
 次に驚くことは、区画整理されていることだ。ただ鉄屑を集めただけのはずの山は、今やオブジェのような立派な雰囲気を醸し出し、照明によるプラチナの光を受け、欲深そうにきらめいている。どころか、金属板やガラス板で組み立てられた壁の一群は、どう見ても露店や小屋の素朴なそれだ。黄ばんだ大きな布をテント代わりにし、即席の屋根を作っている。獣道だったはずの足の踏み場さえ、規則正しい道となり、まるで小規模な集落のようだ。
 さらに驚くべきことに、その集落を往来している人間がいるのだ。イヴが見渡したかぎりでも、少なくとも五十人ほど。おまけに、その誰もが、ここで生活しているような風体でいた。道に突き出した、今にも潰れそうな台の上には、色のおかしな果物や古びた書物、その他にも簡素な洋服やネジや歯車などが、値札をつけて並べられている。露店のようだと思ったものは、事実、露店だったのだ。これでは本当に小さな町である。
 イヴは驚愕していた。スヴァジルファリは実在したのかと、歓喜の声さえ上げたくなった。どれだけ目をこすってもなにもかわらない。目の前で起きていることは間違いなく現実だ。
「数学者の気持ちがわかった気がする」オズワルドは明るい声音で言う。「まさしくアドベンチャーズ・イン・ワンダーランドって感じ」
「マンホールを落ちて辿り着いた先は、って?」
「そうよ」
 オズワルドは感嘆する。階段を降り、に出てからも慎重な足取りで進んでいくが、ずっと奥まで見たとおりの光景が続いているらしかった。オズワルドはこの現象に浮かれていたけれど、イヴは警戒していた。
 二週間前までごみ溜めだった場所が、人も住み着けるような環境にまで発展していたのだ。この異常性には懸念が募る。また、いまも亜終点を往来する人間の全員が脱獄囚であるとは、イヴも思っていなかった。あくまで推測だが、ノドロン城塞監獄から脱した以外の人間も混ざっている。まさか女王政府やアンプロワイエがこんなことをするはずはないが、陰で糸を引く者へ意識を遣らずにはいられなかった。
 あの無残な墓場をここまでの空間に押しあげた統率者がいるはずだ、それもかなりやり手の――― そこまでイヴが思考を馳せていたときのことだった。
「……見ない顔だな」
 急に声をかけられ、イヴは足を止める。そのおかげで、イヴの少し後ろを歩いてあたりを見回していたオズワルドが、イヴに追いついた。オズワルドは、自分たちの前に立つ人物を見つけ、瞬きをする。
 背の高い男だった。痩せた骨太という表現がしっくりくる体格だ。前髪と襟足は長く、手入れのされていない野生獣のようにも見えるのに、汚らしい印象は抱かない。目の下に深い隈のあるその男は、およそ二十代後半から三十代前半といった歳のころ。エンジニアじみた立て襟の重厚なジャケットは、彼の貫禄ある佇まいと相俟あいまって、いっそフォーマルな装いにすら見える。
 イヴは緊張の唾を嚥下したのち、口角を吊り上げて問いかけた。
「見る顔と見ない顔を把握しているのか?」
「ここにいるやつらは俺が集めたからな。俺以外に監獄から落ちてきたやつが一人と、他は地上の浮浪者だ」
「なるほど。やはりお前が統率者か」
 イヴの言葉に、男はにやりと笑う。
「察しがいいな。どおりで、ただの迷子ではない」男はオズワルドを一瞥したが、興味もなさそうに、視線をイヴへと戻す。「お前が先駆者か?」
 その質問で、イヴは察した。しかし、なにも知りませんという顔で「先駆者って?」と問いかける。
「俺が落ちてくる前にここにいた人間だ。ダストシュートの中にある、囚人を殺処分するための装置は、まるまま電源を落とされているようだった。おまけに、骨の山から地上へと伸びる足跡。その足跡の大きさにふさわしい背格好のお前。どうだ? 間違いはないか?」
 やはりイヴの察したとおり、目の前の彼もおよその推察をして話しかけている。疑問符をつけているものの確信的な彼の言いきりには、たぐいまれな慧眼が宿っていた。イヴは内心で高揚し、「ご名答」と答えた。
「にしても、ダストシュートの先にこんな空間があったとはな。装置の電源を落としたことといい、ここに辿りつくのを計算していたことといい……まさかお前はここの設計に携わっていたのか?」
「それはさすがにまさか、、、だよ。俺はただ監獄の内部構造を盗み見て、少しばかりいじくらせてもらったただけ」
「こんな機密そうな内情を盗み見るとは、お前の罪状は想像に難くない」
「知りたがりってよく言われる」
「最近、地上でおかしな事件もあった。しばらく刊行していなかった新聞社から、海の向こうには世界があり、それを女王政府が隠していると嘯く記事が出回ったそうだ。なんでも空からばら撒かれたらしいな。心当たりは?」
「それもご名答」
 ほう、と男は頷いた。硬そうな髪が少しだけ揺れる
 イヴも目の前の男に感嘆の息を漏らしたくなった。ひらめきに富んでいるタイプなのだろうと思った。亜終点をここまで作り変えたこと、己の動向や正体を勘ぐる思考には、刃物がごとき鋭さを感じた。
 イヴはオズワルドを見遣る。会話についてこられなかったせいか言葉数が極端に少なくなったが、イヴが目を合わせてやれば、オズワルドは口角を吊り上げてくる。疑問と好奇心と期待だろう。これまでの会話の流れから、この男も監獄から脱獄した人間だと、理解している。オズワルドはイヴの心中を悟ったのだ。自分たちと同じ境遇の人間――― 探していた人間を見つけた、と。
「……なんと呼べばいい? 俺はイヴ、こっちはオズワルド」
 イヴが男に言うのと同時に、オズワルドはぺこりとお辞儀をした。
「“荊荘哀王”。お前に会いたいと思っていた、イヴ」
 イヴは彼の差しだした手を握り、「よろしく、哀王」と返した。



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