「ゲッツ、ゲッツ!」


自分でもよくわからない言葉を連呼する俺は生まれたての小鹿以上に千鳥足だった。小鹿が鳥なわけがないから先ほどの表現は実に的を射ている。なるほど俺はアーチェリーまで得意だったのか。
あーっ、チェリーッ!
しかもユーモアセンスも抜群ときてる。実にすんばらすぃー!
この街道に誰もいなかったことが実に悔やまれる。さっきの渾身のジョークを披露してやりたかったのに。ついでにサウザンドバードレッグな俺を助けるため肩を借りてやってもよかったのに。神様は実に薄情だった。もう神社でお賽銭は絶対に入れないぞ。今まで粛々と投げ入れていた五円チョコを返せ。


「ゲッツゲッツ! フライングゲッツ!」


直訳すると、反則してでも捕まえる!
わあ! 外道の極み!
最近のアイドルは怖い怖い!

俺の脳みそはあぼんしていてもう何が何やらわからない状態だった。
こうなったのは俺の憎らしい親友のおせいなのだ。おかげじゃないぞ、おせい。リピートアフターミ!
 その憎らしい親友はどこでどうやって入手したのか、未成年の喉を駆け巡ってはいけないであろうアルコール度数が超絶アダルトなジュースを持ち出してきた。この界隈ではお酒とも言う。秘密にしておいてほしい。酒の肴と相成ったスプラッタなホラー映画に数瞬数度チビりかけたという真実も内密に。
 勿論、アマチュア警察官、次世代アンパンマンを、心のどこかで多分自称している俺としては、「良いではないか良いではないか、むしろ酔いではないか」なんていう醜い酌の誘いを断る義務があった。それこそ「ばっきゃろう! 何やってんだ!」なんて熱血教師お涙頂戴な胸熱ワードを叫び、おともだちパンチの百や二百喰らわせてやれれば、過剰暴力という点以外ではほぼ理想の友人像に違いない。ガンジーだって土下座したら許してくれる。
しかし。
そんな行為を俺は享受し甘受した。憎らしい親友の罠にまんまと嵌まってやった。
やっさしー俺、惚れてまうやろー!
ちなみに断固として否定させて貰うが、法律上禁止されている未成年の飲酒を犯すというタブーに興奮しただとかリスクマネジメントがどうのだとかではない。ちなみにリスクマネジメントの意味を教えてくれ。俺の中の辞書には“フカヒレ”の文字しかないのだ。
俺がアルコールに魅せられたなんてそんな間抜けな人間じゃないことくらい、利口な人間にならわかる筈だ。賢い方じゃなく、口が利ける方。つまりは失語症以外の全人類が対象だ。オーケイ?


「ゲッツゲッツ! ゲーッツ!」


そしてその結果がこのザマである。実におめでたい。冠婚葬祭だってここまでおめでたくはないだろう。ちなみに冠婚葬祭の使い方は正しいのだろうか。正しくなかったらとりあえず悔しがっておこう。チクショウ!


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