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「朽崎ちゃんは何色が好き?」
「そうですね……茶色とかオレンジとか赤とか……秋っぽい色が好きですね」
「へぇ。女の子なら大抵の子はピンクが好きだと思ってたんだけどなー」
「勿論ピンクも好きですよ。でも私ピンクの服とかは似合わないんですよね」
「いや、絶対似合うと思う。きっと可愛いって!」
「ありがとうございます秋さん。……えっと…………並木さん、は、似合うと思いますか?」
「ん? あー、似合うんじゃないか?」
「本当ですかっ?」


百合の花を嬉々で着飾ったような声で、朽崎は頬を染めた。マスクに阻まれてはいるが、それでもわかるくらいだった。
それにしても朽崎は、なんでそんな顔をするんだろう。まるで俺の言葉だけで、世界一幸せになれたような、そんな顔。まあ、この神にも嫉まれし紅顔並木深夜から賛美の言葉を託宣されたなら、誰でも頬に朱を散らせざるを得ないのも頷けるが。

朽崎が摩訶不思議夜間学校に転校してきて三日ほど経った。昼夜反転するこの奇妙なシステムに体内時計が馴染みはじめたころであろう。初めは朝方になると顔色を悪くしていた朽崎も、かなり生活リズムが整ってきた。いや、一般常識で言うと乱れてる部類に入るのだろうか。しかしそんなことはないぞ。俺達が乱れてるんじゃない、世界が正しすぎるんだ! 歪んでる!


「今夜の宿題ってなんだっけ?」
「えっと、確か私の記憶では、ゴマ塩のゴマと塩の比率を調査してレポートにしてくる、だったかと」
「どうせ5:5だろ。文字数的にも“ごま:しお”でキリがいい」
「見た感じは6:4くらいじゃないですかね」
「メーカーによっても違うだろうしな。まさか全メーカーやれってことか……?」
「小豆先生も嫌な宿題出して来るね。小波先生を見習って欲しいよ」
「……みんなさ……そんなこと言ってる暇あるんなら手伝ってくれないかな……?」


遊馬が心底腹立たしそうな冷たい表情を浮かべる。顔色はいつもよりなお青白く、ミルクに青い色水を落としたようだった。こうすると幽霊の類だ。疲れきったような眼差しでその疑惑が増長される。おいおい冗談はきついな、俺は幽霊は苦手なんだ。まあ得意な人間なんて世界に三人しかいないだろうがな。ゴーストバスター!


「どうした。遊馬。しんどそうだな。まるで凍えたラクダのようだ」
「誰が凍えたラクダだよ。それよりもみんな、そんなこと言ってる暇あるならこっち見ようじゃないか。わかる? 僕だけだ。ちゃんと宿題に取り組んでるの」


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