エープリルフール
「やっほー☆遊びに来ましたぁ」
にこやかに手土産片手に教会に来たのは鳴衣と馨流。
時間からして授業終わり…と言うより生徒会の仕事終わりなのだろう。
「珍しいですね。こんな時間に」
普段なら仕事の無い比較的早く来れる日を選んでいた筈だ。
「はいこれ俺っちからでっす☆」
手に持っていた菓子折りを手渡す鳴衣。
「それはそれは、」
「嘘だ。叔父からの手土産です」
すんなり受け取ろうとしていた神父サマに馨流が訂正を入れる。
「あ、そうでしたか」
お礼を言っておいてください。と神父サマも返す。
「今日はエープリルフールなのです☆」
「あぁ。そう言えばそうでした」
「だからこいつこんな時間ながら来るって聞かなくて、」
「馨流ちゃん、嘘はダメだお」
「…て言うのが嘘だが」
「てへ☆」
生き生きする鳴衣に比べ覇気の無い馨流。
どうやら今日一日ずっと鳴衣の嘘に付き合わされていたようだ。
「最近は嘘も高等ですねぇ。二段落ちとは」
妙なところに感心する神父サマ。
「あ、そうそう。実は私は神父じゃなくて人殺しなんですよ?」
「またまたぁ」
「…バチが当たりそうな嘘だな」
「えぇ嘘です。なんて」
「いや、分かってますよ」
和やかに三人話していると台所からその声を聞き付けマチクンもやって来た。
「お、マチきゅんメリクリ☆」
「え?メ、メリクリ…?」
「イヤ乗るなよ。流されるな今日はエープリルフールだ」
「あ。嘘を吐く日」
「義務じゃないがな」
危うく12月にタイムスリップしかけたマチクンの軌道修正する馨流。
「あー、じゃあ。実はオレの好物は人肉なんです…とか」
「おぉホラー」
「嘘だけど」
「そりゃそうだ」
「て言うのが嘘です」
「お?」
「なんて嘘で…」
「およ、マチきゅん?」
「嘘で…どっちだ…?」
「慣れないことはするものじゃないですね」
「…そうですね」
「二人して嘘の吐き方が似てるな。その手の映画でも見ていたのか?」
「相性バッチシ結ばれてんだよぉ」
「……良かったな」
「うん!」
一段落して四人は理事長、怜からの手土産を開いていた。
「何でも一つ激辛が混じったロシアン饅頭だそうだお」
「え、マジで?」
「そうは見えませんね」
「叔父さんも行事好きだからな。エープリルフールに乗ったんだろう」
「馨流ちゃん、思っても言わない。折角ロシアン饅頭のドキドキを楽しみたかったのにぃ」
「あ。悪い」
「まぁお饅頭摘まみながら会話の方を楽しみましょう」
「ですね」
饅頭を取り分け席についた四人は同時に饅頭を口に運ぶ、と。
「「「っ!?」」」
全て激辛だった。
「大丈夫ですか!?」
「辛い…」
「………う゛」
「なんで神父さん平気なのぉ」
「え?」
一人無事な神父サマ。
地獄だらけの逆ロシアン。
「うぅ、ズルい…口直し………」
鳴衣が神父サマがとった饅頭に手を伸ばす。
「あっ、それは」
パクっ
「っ!?」
バタっ。
「鳴衣!」
「なん、で…」
「それも辛いですよって…言いそびれました」
やっぱり全部激辛。
こうして一人帰らぬ人と化したのだった。
「生きてるからねっ!?」
end
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