同類ですか?

いつもと変わらぬ ある日の朝。
だけど今日は少し違った。

「――」
「――」
いつもより早く起きていた神父サマが誰かと話している。
だけどそれは聞いたことの無い声だった。

神父サマより低い男の人の声。

「神父サマ おはようございます」
神父サマに声を掛けてから 男の人にも軽く会釈をする。

「おはようございます マチクン」

神父サマがそう言った瞬間 男の人は驚いたようにこっちを振り返った。

「……ま…ち?」
目を見開いて呟いたかと思えば

抱きつかれた。

「真知っ!真知なのか!?
〜〜〜〜っ会いたかった…」
「っ!?」

泣かれた。


クン。

抱き付いて来たその人はよく見るサラリーマンと同じ格好だけど そのコートからは違った匂いがした。
ほんの微かだが 確かにこれは

血の匂い。


「………同類?」

「…は?」

抱き付かれたまま沈黙していると
「その人は違いますよ。寧ろ反対です」
神父サマが口を開いた。
「新倉サン。そろそろ離してあげて下さい 詳しくは中で話しましょう」
所変わって礼拝堂。
何故か男の人…新倉さんは直ぐ隣で肩を抱いてくる。
「マチクン この人は新倉 朝御サン。刑事さんなんですよ?」
「は?刑事?」
「そうです。殺人…今は私の事件を追ってるんです」
血の匂いは現場で染み付いたんでしょう。と付け足される。
「そうなんですか…って
神父サマの事件?」

「"連続快楽殺人事件"の犯人 つまりコイツを逮捕する為の班の班長をしているんだ」
新倉さんが教えてくれる

なんか色々おかしくないか?

「神父サマが犯人って判ってるんですよね?」
「あぁ」
「逮捕しないんですか?」
「今のところその予定は無いな」

なんで?

聞くと真面目な顔になった新倉さんが教えてくれた。
二人は協力関係にあるらしい。
神父サマを見逃す代わりに 自分の知り得る他の犯罪者の情報を提供してもらってるそうだ。
最近は(侵入者は置いといて)表向きの犯行は落ち着いているから構わないそうだ。

あくまで独断らしいが。

「因みにマチクンのお父様ですよ」

………
「…はい?

そうなんですか?新倉さん」
「そうなんだよー 怜から聞いた時は驚いたぞ。教会…しかも冴梛の元に居るなんて」
グリグリと頭を撫でながらまた顔が緩んでいる。
「レイ?サエナギ?」
「怜さんとは隣の学校の理事長です。冴梛は…私の名字なんですが…」
教えてくれた神父サマは珍しく少し悲しげだ。

申し訳ないことをしたと思う。

「真知ー "新倉さん"なんて他人行儀じゃなくて"お父さん"と呼んでくれー」
なんかまた泣きそうだ。
パパでも良いぞー。と言うのは聞かなかった筈だ。

「ぉ…父さん」

慣れない単語に少し恥ずかしかったが また抱き付かれてもっと恥ずかしかった。
今度は神父サマは助けてくれなかった。




「じゃあ真知 また来るからな。…冴梛 真知に変なことは教えんじゃないぞ」
「安心して下さい。マチクンには人殺しはさせませんよ」

「…」
…それって"変なこと"なんだ。

父さんも「それなら良い」ってなんですか。
駄目でしょ。


そして名残惜しそうに父さんは帰っていった。

それからかなり頻繁に"神父サマの監視"と称して会いに来てくれるのはまた別の話。


end

[ 20/40 ]

[*prev] [next#]
戻る


top


×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -