オタクですがなにか?
オタクですがなにか?

先執筆は"プロトタイプ"
「ちょとそこの兄ちゃん 金持ってんだろ」
僕は今 ベタなカツアゲに運命的な出逢いを果たしたところだ。放課後のこの道は確かに人通りは少ないが わざわざ僕を選ぶとは全く迷惑この上ない。
「何でしょう?」
愛想笑いと共に鈍感としか言い様のない能天気な応えを返す。
――後30分。
「有り金全部置いてけって言ってんの」
察しは付いてましたさ。口には出さず呆れる様に呟いた。しかし生憎予定外の数量限定かぐタンフィギュア付き特別装丁の新刊を3冊(他通常版3冊)を買ったら多めに持ってた金は総て消え去った。
「すいませんが今一文無しなんですよ」
出費は見事に所持金ぴったりだった。
――後25分。
読む用の通常版を片手に早く先を読みたいのと30分から始まるこの本のアニメが見たいのとで結構苛々している。
「今持ってるだけで良んだって」
カツアゲの皆さんは僕の言葉を信じちゃいない様だ。
「はぁー。」
わざとらしく溜め息を1つ漏らす。
折角の戦闘シーンだったのに。しかもかぐタンが主体の話だったのに。
今日買った本とフィギュアしか入っていない応募者全員サービスJFTの斜め掛けカバン(かぐタンver)に今読んでいた本もしまい動いても中身に影響が出ないことを確認すると軽く手を叩く。
――後20分。
「5分で片付けないと…」
ノルマを呟き自身に念押すと一気に踏み込んだ。
「なっ!?」
驚く方々を後目に通行人がいない事を良しとして出し惜しみせずに突っ込む。
みぞおちに一発膝を入れる。次は拳。殴りかかって来たのを避けそのまま地面に着いた手を軸に回し蹴り。体勢を立て直しラリアット的なものもお見舞しておく。

「もういないか…?」
気付けば呼ばれていた数人の加勢分時間を食った。
――後8分。
「ケンカなんて初めてした割りに結構出来るもんだね」
僕 無傷だし。
鞄の中身も無傷だし。
「はぁ!?初めてだと。なに言ってんだっ」
「つぅかテメェ何者だ!今までどこに身を潜めてた!」
起き上がれもしない不良がわめく。
五月蝿いな。
僕に喋んならかぐタン声に成ってこい。
あ。それも嫌だわ。
地面を一蹴りで塀の上へ猫の様に身軽に登る。
「僕は…」
くるりと首だけ軽く回す。

「オタクですがなにか?」

「はぁ?」
おっと時間が…。不良を無視し家路に急ぐ。
五建目の屋根を掛け時間を見る限り冒頭には間に合わないだろう。既に不良の姿は見えなくなり思いの丈を目の前の夕陽に叫んだ。
「現実(リアル)なんて嫌いだーっ!」


end


・†・
あの後…
なんとかオープニングには間に合った。(まぁ時間録画はしてるんだけど)

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