舌切り男爵
耳切り娘
──舌切り伯爵は嘘が嫌い。
──嘘吐き悪い子のもとに現れて、嘘を吐く悪い舌をちょん切るぞ。
…………
……………………
ある日伯爵が舌を求めて街をさ迷っていると、一人の娘に出会った。
伯爵は口をパクパクと動かすが、彼には舌がないから話せない。
しかし娘は彼の言葉が分かった。
彼女は耳が聞こえない。
だから彼の唇を読んで返答したのだ。
彼女は耳が聞こえない。
だから聞こえる人が羨ましい。
だから聞こえるのに聞かない人が恨めしい。
彼女の言葉に嘘はない。
「舌切り伯爵、私を一緒に連れてって。使わない耳をチョン切りたいの」
彼女の言葉に嘘はない。
「もしも私が嘘を吐いたなら、私の舌をあげましょう」
…………
……………………
舌切り伯爵に娘が出来たと。
伯爵が舌を切るなら、娘は耳を切るそうな。
だから親の話はちゃんと聞かなきゃ行けないよ。
友達、先生、近所のおばさん。
あなたに話しかけてくれる人の言葉を蔑ろにすると、耳切り娘がやって来て、あなたのお耳をチョン切るよ。
end
[ 103/111 ][*prev] [next#]
戻る⇒top