とある生徒会のハロウィン

とある生徒会室。
始まりはこの叫び声だった。

「なんじゃこりゃぁぁぁあ!?」
「煩いですよ!」

生徒会室に泊まり込んだらしい会長が驚き 丁度来た副会長がそれを一刀両断した。

驚いた理由は簡単。
会長が起きてみると とんがり帽子にマントを羽織った魔女の恰好になっていたのだった。
しかも男子校なのに制服がスカートだ。

「ってお前っ…犬…?」
「違います」

かく言う副会長も犬…否狼の耳と尻尾が生えていた。
詰まる所狼男だ。

「犬歯も有りますよ」
「…お前落ち着いてんな」
「自室で存分に驚きましたからね」

と そんな会話をしていると役員がもう一人。

「おっはー☆わっ。やっぱりカイチョー達も化けてるぅ!」
「…会計…貴方もですか」

いつもどうりバカ高いテンションを引き連れて来た会計は裏地の赤い長いマントを靡かせていた。

「吸血鬼だよ☆」

ほらほら牙ぁー。と二人に見せてくる歯は確かに副会長の犬歯より鋭く長い。

「あははは!カイチョー魔女っ娘だぁ。副カイチョーはワンコだしぃ」

会計は愉快そうに笑う。

「おや?ワンコと言えば書記はどうしたんです」
「副カイチョーまでワンコ認定してるんだぁ…」

「い、る…」

「「「!?」」」

突然の声に驚く三人。
しかしどんなに見回しても書記の姿は見えない。

「ここ…」
「うわっ!?」

会長が突然前につんのめる。
後ろには制服だけがくっ付いていた。

「オレ…透、明」

会長に引っ付く書記は透明人間になっていた。
他の役員は"ハロウィンの仮装"で済ませられるが 制服だけ動いているのは他の生徒が見たら大事件ものだっただろう。

「普段より影が濃いのか薄いのか解りませんね」
「触れるのが不思議だねぇ」
「離れろ」
「…ヤ」

そんな意外と普段通りの会話をしていると

「「ヤッホー!」」
「ハロウィンは」
「楽しんでるー?」

双子の庶務が来た。
相変わらずの喋り方だ。

二人は山羊の様な角に蝙蝠みたいな小振りな羽 そして矢印の様に先の尖った尻尾を揃いで生やしていた。

「「僕らは小悪魔だよー」」

正にソレだった。

「薬の提供は魔術部部長でーす」
「ランダム仕様となってまーす」

イタズラ好きとは名高いがまさかあの謎の部の中でもトップを誇る部から薬を貰うとは。

「薬は昨日出来たばかりの出来立てホヤホヤでーす」
「誰が何になるか判らなかったから衣装はマント等のフリーサイズのみしか用意できませんでした!」
「「ゴメンね」」

どうやら部長から話を聞いて急遽仕組んだことらしい。

「ほう…では私の部屋に首輪を置いていったのはあなた方でしたか」

「朝皆の部屋に回って置いたんだよー」
「副会長は付けてくれなかったのー?」
「「ザンネーン」」

「今後躾が必要な方々に着けて差し上げますか…」
「誰だろうねー」
「ねー」

「つうかちょっと待て」

会長が双子に制止を掛ける。

「なんで俺だけスカートまで有るんだ」
「そぉ言えば確かにぃ」

会長の疑問に会計も賛同する。

「それはー そうだったら面白いなーって」
「まさかホントに会長が当たるなんてねー」
「ねー」
「因みに体も女の子ー」
「華奢になってスカートピッタリー」

「はぁ!?」

予想外の言葉に驚く会長。

「にしては胸が…」
「ツル、ペタ…」

呟く副会長と書記。

「折角だからカイチョーニャンコで一発ヤっとくぅ?」
「殴って良いのか?」
「え?ネコパンチ?」

ふざける会計と苛立つ会長。

「着替えさせても起きないんだもーん」
「ちょっとビックリー」
「はぁ!?」
「…会長…。貴方って人は」

一同呆れた同情の眼差ししか会長に送れなかった。

「今すぐ戻せっ」
「か、いちょ…カワイ」
「嬉しくねぇよ」

「「無理だよー」」
「は…?」
「効力はー」
「今日一日なのー」

とまぁ宣告されたものだから会長と書記は去年通りながら生徒会に籠ることになった。
副会長は会長を弄りながら過ごす事にして会計は早速チワワ達を食べに出ていった。

「じゃあ僕らもー」
「遊んでくるねー」
「「バイバーイ………あっ!」」

出ていこうとした二人が立ち止まる。

「なんだ」

一応聞く会長に向かって二人は手を差し出し いつもの様に息ピッタリでその文句を紡いだ。


「「トリック オア トリート!」」


「出てけっ!」


end



その後生徒会室に籠っていた会長と書記は 副会長から貰ったお菓子を食べながら過ごしたとか。

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