今夜は朝まで(1/2)
空条承太郎は生物担当の教師である。主に海洋学に長けており、ヒトデの論文で博士号を取るほどである。そんな彼は今、愛しい恋人とともに正月休みを利用した温泉旅行に来ていた。
『先生!早く早く!凄く綺麗よ!』
「…ああ。」
その相手は、自分の教え子である有村結。所謂、教師と生徒の禁断の仲というものだ。まるで運命的な出逢いだと、承太郎は思っている。二人が出会ったのは夏休み中に出かけた海。
『やめてくださいッ!放してッ!!』
友人とともに海水浴に来ていた結。トイレに行っている間にはぐれ、きょろきょろと辺りを探していた。そこに目をつけて声を掛けた男たち。結の腕を掴んで無理やり連れて行こうとしていた。
「いいじゃん、いいじゃん〜、」
「おれたちと楽しいことしようよ〜…、」
周りの者達が見て見ぬふりをきめこむ中、一人の男が近付く。
「おい、」
そこで救いの声を掛けたのが、
「アァ?」
「遅くなって悪かったな、行くぞ。」
『え…?』
承太郎だった。
「誰だテメェ!」
「…てめーらこそ誰だ。人の女に手を出すなと、教わらなかったか?」
「アァ!?」
「ッんだこいつ!」
「行くぞ、」
『ぁ、は…い、』
「まちやがブハッ!」
「カッチャン!?どうしゲブッ!」
男たちは見えない何かで吹き飛ばされてのびた。承太郎はそこから少し離れたところで結の手を放して振り返る。
「大丈夫か…?」
『は…、はい!あの、ありがとうございました!』
「いや、いい。ああいうやつらが気に食わなくてやったことだ。今度からは一人でうろつかないように気をつけろ。」
『はい…!あ、あの、お礼をさせてください!』
「…礼はいらねー…。楽しんで帰れよ。」
『あ…、』
そのまま去っていった承太郎。これが二人の出会いだった。そして、夏休みが明けて学校が始まった時、二人は再会する。結の通う学園に、承太郎が赴任して来たのだ。今まで生物を教えていた女性教師が産休に入り、その代わりに赴任したのが承太郎だった。結はどうしてもお礼がしたいと承太郎に詰め寄った。承太郎は礼はいいの一点張りだったが、ある日、
「…じゃあ、授業の準備を手伝ってくれ。」
『はい!』
それから二人の距離は急接近した。いつの間にか承太郎は結のことを名前で呼ぶようになり、結も承太郎先生、と呼ぶようになった。そして二人は禁断の仲にまで発展してしまう。それを知る者は…いない。
『ほら!海が見える!』
結が宿の窓から外を見つめる。承太郎はそんな結を後ろから優しく抱きしめた。
「ああ、綺麗だな。…結が。」
『!も…、もう、いきなりそういうこと言わないでよ…ッ!』
赤くなる結に承太郎がくつくつと笑った。
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