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「私の素敵すぎる若様」

「わーい若様!海だ海だ!」


私はその場所へ着くなり嬉しくてたーっと波打ち際まで走って行った。・・・って、若様かなり冷めた目をしてるね。アハハ。やっぱり?

長い夏休みに突入しているとある日曜日。私は若様にねだってちょっと遠方の海へと連れてきてもらっていた。お願いした当初はかなりかなり渋られたけど、諦めずにしつこくしつこく言い続ければ最終的に『うるせェエエー!!』・・・と絶叫しながらもカレンダーに丸をつけてくれたのだから、やっぱり若様って素敵☆そう思った。

そんな若様は一面に広がる海を睨みつけるようにし、そして陽気な私にハァ・・・と盛大なため息を吐きながら怒ったように言った。

「おいナナシ・・・。俺は能力者なんだからな。もう一度言うが、俺は能力者なんだからな・・・。こんな場所に連れてこられても迷惑でしかねぇってことわかれよ?」
「えー。だって先生が夏休み中遠出するときは大人についてきてもらえって言うからァー」
「お前もう13だろうがァアア!!一人で電車もバスも乗れるし、ついて行かなきゃなんねぇ年齢じゃねえだろうが!!!俺を巻き込むんじゃねェエエエ!!ってか、こういう時にだけガキぶるんじゃねえよ!!それに我が家(inドレスローザ)にプールがあるだろうが!何でそれで満足しねぇんだよ!!循環ろ過浄化システム採用で人工波発生装置もバーカウンターもあって装備完璧だろうが!!」
「えー。でも本物には勝てないしィー」
「ダアアア!こんな暑ィ中移動からして面倒なんだよこの野郎ォオオーー!」
「まあまあ若。いいじゃないか。世間はサマーバケイション。子供たちも喜んでいることだし」
「わーい!海だすやん!きれいだすやんねー」
「わー!大きいね広いね!砂浜がきれーい!」
「・・・あつい・・・・・・」
「バブー♪」

私より遅れてやって来たバッファローやベビーちゃん、デリンジャーが嬉しそうにそう言って海を見つめた。
ローは一人だけ面倒そうに舌打ちなんかしているけど、その側に立つヴェルゴやセニョールやグラディウス、ピーカ、ディアマンテ、ロシナンテもまた目を細めて楽しそうにこのビーチを眺めているから若様は更に怒ったように声を荒げた。
「ってか、なんでファミリーがほぼ総出でここに来てんだよ!お前らほとんど能力者だろうがァアアア!下手したら溺れて死ぬんだぞ!?」
「だってナナシちゃんだけずるいじゃーん」
「若様が遊びに連れて行ってくれるなんて中々ないだすやん!だから行ける時には行きたいだすやんね!」
「楽しそうじゃないか真夏の海なんて。何なら俺らもいることだし、若は今から家に帰って留守番してくれてもいいんだぞ?」
「そ、それは・・・」
「まーいいじゃない!せっかくだからみんなで楽しもうよ!!ねー若様!!ビーチバレーしないー?」
「・・・チ・・・。一度だけだぞ・・・」
「やったー!ねー!夕日見るまでいようね!!」
「待ておい待て。夕日ってあと6時間は先だろーが!そこまでいてやれるかァアア!!」

セニョールの言葉に少しだけ焦った若様は、すかさず言った私のバレーの誘いに渋々頷いて、けれど夕方までいようね宣言には盛大にブリブリ怒りながらも近くにある海の家にビーチボールを借りに行ってくれた。何だかんだ言いつつもバレーやってくれる若様って相変わらず素敵!今日ばかりはいつものフォーマルスーツではなく、涼しげな半袖のシャツとアンクルパンツ姿な若様は眩しい日差しの中で輝くくらい、・・・というか実際輝いていて、もうそれがものすごくかっこよくて、ボールを弾きながら私は始終とろけそうだった。うーん!幸せ♪

でもまあ何だかんだ言ってファミリーのほとんどが悪魔の実の能力者ゆえにビーチバレーが済んだあと海の中で遊んでいるのは私だけで、残りのメンバーはほとんど全員波打ち際から10メートルくらい離れた場所でパラソルの下かき氷やイカ焼きを暑そうにしながら食べてたり、砂遊びしているのが現実だった。ローに至ってはもう死にそうな顔してるし・・・。何で来たんだろう。『夏休みの自由研究のために・・・』とかなんとか言ってたけど、あれじゃ何もできなさそう。ロシナンテが苦笑しながらうちわで彼を扇いであげていた。あ、ロシナンテってば能力者じゃないくせになんでそっちサイドにいるんだろ!
「ちょっとロシナンテー!こっち来て一緒に泳がないー??」
私がそう言って手招きしてみるが、ロシナンテはスケッチブックに大きく『やだ』って書いて掲げてきた。えー。もう!つまんない!!

「おいナナシ!あんまり遠くへ行くんじゃねぇぞ!!」
「はい若様ー!」

遠くからそう注意してきた若様の声に私は返事をして手を振り、ばしゃばしゃと沖へと向けて背泳ぎしてみる。あーほんっといい天気!そしてとっても暑い!海水は冷たくて気持ちいいのに、能力者である事ってホント夏には残念だね!私はそして背泳ぎからくるりと身体を回転させて視線を地平線へと向けた。
すると!
何と遠くからかなりのビッグウェーブ!こりゃーサーファーが喜びそうな波だわ・・・ってそう思うのもつかの間、よく見てみればそれがこの近海では珍しい『うさぎ波』だという事に気が付いた。わー!これってシーラパーンっていう海獣が集団行動して引き起こす波なんじゃ!?シーラパーンてかなり凶暴なんじゃなかったっけ?!え!これってヤバいってやつ!?どうしてこんな浅瀬にまでやってくるのよ!え?!意味わかんない!いやいやもうそれよりも!波はすぐそこまで来てんじゃん!!私は焦った。


「お、おい!うさぎ波じゃねぇか!!」
「なんで北の海でしか見れねぇ波が・・・」
「いやそれよりもナナシヤベェんじゃねえのか?」
「わーーーー!!!!」


私は必死で砂浜目掛けて泳いでみるものの、差し迫る波の気配は背後にビリビリと感じられた。そう思った矢先サッと自分の周りが急に陰って、慌てて見上げた頭上には大きな波とシーラパーンがいて、それが覆いかぶさるようにして私を包み込もうとしているのがわかった。ッッ!飲み込まれるッ!!私は慌てて砂浜を見つめて叫んだ!


「キャーーー!!ロシナンテーーーッッ!!たすけてっっ!!!!」


そう叫び、ロシナンテと刹那目が合うものの、そのすぐ後に彼は見えなくなった。途端に感じる海水の重圧。獣の気配と、抗おうにも抗えない強い波の動きに合わせて身体が海中で意志とは違う場所へと流された。苦しい!!!思わず目をぎゅっと閉じて手足を無我夢中で動かした。ゴボッ!!直前に叫んだ所為で開いたままだった口から海水が思い切り胃へと流れ込んだ。海底にある岩にでもぶつけたのか足に鋭い痛みも走る。だめだ!死んじゃう!ロシナンテの馬鹿!非能力者ならこういう時ちゃんと助けに来なさいよ!!ドジ!まだ若様と結婚もしてないのにっ!私は目をギュッと閉じて真っ暗闇の中ひたすらに彼を呪った。ああ・・・、意識が・・・・・・薄れていきそう・・・。こんな最後・・嫌・・・・・。・・・そう思った時・・・だった。


ぐいっ!


それは私の腕を掴む大きな誰かの手。
海水の中、苦しくてどうにかなりそうな中でも思わず驚いて目をあける。揺れる水面のせいでその先にいる相手はぼやけてよく見えない。けれど・・・私にはその人物が誰なのかはっきりとわかった。
この人は・・・。・・・・・・わかさま・・・。


「・・・」


強い力で海から身体を引っ張り出されれば、目の前にいる海水でずぶ濡れの若様は私を見下ろしながら力の限りこちらを睨みつけてきた。でも、やっぱり能力者。いつもに比べたらその目力も威力が半分以下だね。私はゲホゲホ咳き込みながらもへへっと笑った。「水もしたたるいい男だね」・・・なんて言ってみると、若様はチ・・・と舌打ちしながら「馬鹿野郎」と小さく言って私を抱え上げてくれた。あ・・・。シーラパーンは多数海の上で白目むいて浮いてる。さっすが若様の覇王色の覇気。私はそう感心しつつも、けれど抗えないまますぅ・・・っと意識を無くしてしまった。ただ、若様と触れ合った部分の温かさだけはしっかりと無意識の中でも感じられた。うーん。し、あ、わ・・・せ・・・・・・。・・・。





目が覚めると、潮の香りと潮風に揺れて鳴る木の葉のすれ合う音がした。あと波の音も。
あれ?
慌てて身体を起こせば目の前には海。幻覚?「・・・起きたか」。そして隣から聞こえるのはため息を吐きつつの若様の小さな声。「え?」。幻聴?・・・そう思ったが、見上げてみればそこにいたのはやっぱり若様で、私はどうやら海の家の和室に寝かされていたようだった。あたりはもう人もまばらで、ここに到着した時のあの歓声がいっぱいで尚且つ活気で満ち溢れていたこの場所は今や別世界のようになっていた。えーと。何で・・・かな??

「大丈夫なのか?」
「あれー皆は?」
「・・・おい、質問に答えやがれ!具合はいいのか?」
「あ、うん。大丈夫そう。あーでも海水いっぱい飲んじゃった。塩分の過剰摂取で脱水症状且つ腎炎になっちゃうかも・・・」
「だぁぁ・・・。ロー譲りかその医学知識みてぇなのは!!・・・・・・大丈夫だ。全部吐かせた」
「そっかよかった!・・・で、皆は?」
「帰った」
「えー!わたし置いて帰っちゃったの!?何それひどい!!え?!すっごくひどくない!?てか、若様なんでわたしも一緒に連れて帰ってくれなかったの!?」
まさかの置き去り行為に私は思わずそう叫んだ。すると、若様は「アァ!?」と顔を歪めて私を盛大に睨みつけた。そして言った。

「テメェが夕日見るまでいようねって言ったんじゃねぇか!!」
「ッ!」

そう言われて、私は思わず若様をときめきゲージマックスな状態で見つめてしまう!
ほんの一言、本当にぽろっと一度だけしか言ってなかったその言葉をまさか覚えていてくれるなんて!!「わわわ若様ーー!!!」。私はもう嬉しくて顔がくしゃくしゃに緩みそうになりながら隣の若様にぎゅーって抱きつこうとした。・・・が、さっと避けられた。「えー」。悲しくなりかけ、けれどその動きと共にうっすらと若様から潮の香りがしたのでその事に私はさらに嬉しさで顔がぐにゃんぐにゃんに緩みまくる。若様・・・。私を海に入ってまで助けてくれた。これ以上嬉しいことなんて・・・ないよ!「えへへ!」。だから私は若様のシャツの裾をぎゅっと握った。


「ハァ・・・ナナシ。夕日が見えるぞよかったな」


そして暫く時間が経ったのち、どうでもよさそうに言いながらも若様は海の家の和室の一番地平線がよく見える場所に移動しつつそこへと手招きしてくれる。わーい。私は身を起こして動こうとした。けれどズキリと痛んだ足に顔を顰めた。

「足痛い」
「・・・そういや怪我してたな」

すると若様は「チ・・・仕方ねェ・・・」とブツブツ言いながら私の側へと寄ると、ひょいっと私を担いでくれる。顔がまた緩みそうになった。「どうせならもっと近くで見たいなぁ」って、ダメ元で言ってみると、再び小さな舌打ちは聞こえたものの「仕様がねぇな・・・」・・・と、若様はそのまま靴を履いてサクサク砂浜を歩いて海へと近づいてくれた。

そして目の前に広がる、オレンジ色に染まった地平線!
沈みゆく大きな太陽!
昼間よりは威力を失くした、けれどもまだまだ熱い真夏の風が私と若様の側を通り過ぎた。
若様の匂いと潮の香りが混ざった空気を思い切り吸い込んでみる。
あー!どんなフレグランスよりもいい香り!
何て素敵な夏休みの思い出!
そして何て素晴らしくかっこいい私の夫!
夏休みの宿題の絵画は今日のこのシーンを描こう!・・・そう思った。


私を抱えながら、こんな状況であるのに珍しく悪態もつかずに黙ったまま同じようにして海を見つめる若様。
「若様、助けてくれてありがとうね」
静かな夕暮れの海岸で、ふとそう呟くと若様はチ・・・とまた小さく舌を打った。


ザザーン!
「・・・ロシィに助け求めやがって・・・」


静かな中、けれど一際大きな波の音が響いた。
「え?若様何か言った??」
それにかき消されてしまった若様の言葉は私には聞き取れなくて、けれど何度聞き返しても若様はそれには答えてくれなかった。
まあいっか!
私今最高に幸せなシチュエーションにいるからね!



「ハー・・・。てか、何で夕日見てぇなんて面倒くせぇ事言ったんだ」
「え?聞きたい?聞きたい??!あのね!この海で夕日を沈むところを一緒に見たカップルは将来必ず幸・・・」
くるり。スタスタ。
「さ、帰るぞ」
「えーー!」





レモン様へ、あとがき♪

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