休憩と猫
「雛畠さんね」
「はい」
「宮地清志、よろしくな」
案外宮地さんはいい人だった。
猫を膝に乗せてゴロゴロあやしながら私は宮地さんとのんびり会話をしている。この人部活はいいのだろうか。
「頼むから部活の奴に言うんじゃねーぞ」
「言いませんよ。この猫、ずっとここに?」
「たまにな」
「じゃまた来ます」
にしてもこの猫マジもふもふ。癒されるわー。
「お前そういやどっかで見たことあると思ったらあれか、緑間のライバルか」
「どこからその情報」
「高尾が言ってた」
「高尾ふざけんなあいつ後で殴る」
「おーおーいいねー俺も参加するわそれ」
どうやらそういう先輩らしい。…そう言ってしまうのは失礼な気がするが。気のせいということにしよう。
宮地さんは背がめっちゃ高いだけで基本はイケメンだという印象を受ける。ちょっと口は悪いがこの人とは仲良くなれそうである。
「今日は何でここに?」
「あー、友達の付添いです」
「へー大変だな。まぁレギュラーはもう出ないと思うし諦めろって伝えとけ」
「あ、そうなんですか?」
「当たり前だろ。俺らじゃレベルの差がなー…」
そう言うと宮地さんは顔を上げてふうと息をついた。
「……なんか、ずるいですねそういうの」
「…そうか?」
「ていうか、まぁ、レギュラーを温存するのは悪いとは思わないですけど、理由が嫌ですね」
そう言うと、宮地さんはふぅんとこちらを見てきた。
私も負けじと見つめ返す。
「…安心しろ、さっきのは嘘だ」
「…はい?」
「最後ちゃんと出るぜ。今は向こうも準レギュラー出したから休憩になっただけ」
「…何で嘘を?」
「ちょっとだけ試した」
にやりと笑う宮地さん。
思わず目をぱちくりさせるとハハッと彼は笑った。
「そう言ったら大体の奴は帰るんだよ。最近特に多いからなー俺らをアイドルみたいに騒ぎ立てる奴」
「……あぁ、そういうことでしたか」
「静かに見てくれるならいいんだけどな。煩いとこっちの集中力も切れるんだよ、やっぱり」
……大変そうだな、この人たち。
「ま、でも雛畠さんは違うってのが分かった」
「……」
「打倒緑間、応援してるぜ」
そう言うと宮地さんは階段から立ち上がってさっさとどこかへ行ってしまった。
膝元の猫はいつの間にか、寝ていた。